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空が開ける頃、黒い毛並みの愛馬を最速で走らせて目的の場所にソレイユはたどり着いた。
よく知った道を抜けて兵士に馬を預けたソレイユはジェニエルに会いに来ていた。

「朝からどうした?珍しいなお前からここに来るなんて」
「少し確認したい事が出来ました」

そう言って朝食を食べているジェニエルに返事をしたソレイユはメイドが自分の前に食事を並べようとするのを断ってからジェニエルと二人きりになりたいと視線で告げる。
優秀なメイドはソレイユの視線に気が付くとすぐさま他の使用人達を連れ出して部屋を出て行った。
2人きりになると、ソレイユは能天気そうに食事を続けるジェニエルに遠慮もなく口を開いた。

「エルシャール嬢についてか?」
「話しが早くて助かります。彼女は一体何者でしょうか?」
「それを調べるのがお前の仕事……違うか?」

言われてソレイユは言葉に詰まった。
エルシャールが倒れてから焦ってここまで馬を飛ばしてきたが、ソレイユは今更になって自分が冷静さを失っていた事に気が付いた。

「お前らしくないな……何があった?」
「そもそも貴方の狙いは何です?」

ソレイユが自分の失態に気が付いたと同時に、ジェニエルは訝し気にソレイユに尋ねた。
その呑気な問いにソレイユは答えず逆に言葉を被せると、ジェニエルの言い訳がはじまった。

「狙い?……そんなの前にも言っただろう?セージュと」
「セージュと婚約するため。だったら私にわざわざ家族から暴力を振るわれる令嬢を宛がう必要はありますか?」

ソレイユのその顔はいつもどおり表情の読めない微笑みを携え、穏やかな口調だったが、怒りを携えている事は明らかだった。

「何だもう気が付いたのか……お前は何だと思う?」
「わからないから直接聞いております」
「それを調べるのがお前の仕事だ」
「そうではなく……なぜ今頃、私にエルシャールを宛がったのか聞いているのです」

ソレイユが言葉を重ねると、ジェニエルは丁度朝食を食べ終えたようで、口元を手元のナプキンで拭った。

「場所を変えよう、お前の父上にも頼みがある」
「はい」

そう言ってジェニエルが立ち上がると、ソレイユは先を歩くジェニエルの背中を追いかけた。
執務室にたどり着くまでの短い時間、ソレイユは呼びつけられた日の事を思い出していた。

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