28 / 80
27
しおりを挟む
エルシャールについて書かれた本の最後のページは真っ黒だった。
「これは一体、どういう事?」
一ページ前に戻れば、白い背景に黒い文字が書かれている。
しかし、何度見ても透かしてみても、最後のページは黒一色で染まり何もわからない。
エルシャールは困惑しながらも、本を閉じてずっと知りたかったエルシャールの事を考え始めた。
「エルシャールはずっとラビリンス家のストレスのはけ口だった」
腕に抱く本に力を入れたエルシャールは中に書かれていた事柄に心を痛めた。
妹が生まれて、初めは喜んでいたエルシャール。
だけどサンドラが彼女の全てを奪っていった。
サンドラは幼い頃からどんな人とも恐れずに直ぐに話すような子供だった。
対して、エルシャールは人見知り。
そんな小さな違いから始まった周囲からの印象は両親にも影響を与え始める。
「サンドラ様はとても優秀でございます」
「サンドラ様はとても美しい」
「サンドラ様は私どもにも優しくお声がけ下さる……それに比べてエルシャール様は」
周りの評価は両親への評価にも繋がる。
それゆえに、エルシャールは叱咤され、サンドラからも馬鹿にされるようになり……
――エルシャールの人生は、生まれてからずっと誰かに消費される人生だった。
エルシャールがそう口にした時。
「え?」
突然辺りが明るくなり、黒い床が崩れエルシャールは足元を失った。
体制を崩した事で腕の中にあった本をエルシャールは手放してしまう。
「まって、まだ私は――!!」
落ちていく本に必死に手を伸ばして指先が本に触れる瞬間。
エルシャールは手を前に突き出した状態で目を覚ました。
「これは一体、どういう事?」
一ページ前に戻れば、白い背景に黒い文字が書かれている。
しかし、何度見ても透かしてみても、最後のページは黒一色で染まり何もわからない。
エルシャールは困惑しながらも、本を閉じてずっと知りたかったエルシャールの事を考え始めた。
「エルシャールはずっとラビリンス家のストレスのはけ口だった」
腕に抱く本に力を入れたエルシャールは中に書かれていた事柄に心を痛めた。
妹が生まれて、初めは喜んでいたエルシャール。
だけどサンドラが彼女の全てを奪っていった。
サンドラは幼い頃からどんな人とも恐れずに直ぐに話すような子供だった。
対して、エルシャールは人見知り。
そんな小さな違いから始まった周囲からの印象は両親にも影響を与え始める。
「サンドラ様はとても優秀でございます」
「サンドラ様はとても美しい」
「サンドラ様は私どもにも優しくお声がけ下さる……それに比べてエルシャール様は」
周りの評価は両親への評価にも繋がる。
それゆえに、エルシャールは叱咤され、サンドラからも馬鹿にされるようになり……
――エルシャールの人生は、生まれてからずっと誰かに消費される人生だった。
エルシャールがそう口にした時。
「え?」
突然辺りが明るくなり、黒い床が崩れエルシャールは足元を失った。
体制を崩した事で腕の中にあった本をエルシャールは手放してしまう。
「まって、まだ私は――!!」
落ちていく本に必死に手を伸ばして指先が本に触れる瞬間。
エルシャールは手を前に突き出した状態で目を覚ました。
226
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる