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顔色を変えたエルシャールの元に来たソレイユは背後の扉が閉まると重い口を開いた。

「いつからだ」
「え?」
「……アイツらがお前に暴力を振るい始めたのはいつからだと聞いている」

予想もしなかった問いかけにエルシャールはポカンと口をあけてソレイユを見上げた。
そんな彼女の様子にソレイユは大きくため息をついてからベッド脇に置かれた椅子に座る。
膝の上で腕を組み、表情が一切見えないポーズでソレイユはエルシャールに再度問いかけた。

(いつから……)

問われてエルシャールは思考を巡らせた。
転生してから1度もエルシャールは元のエルシャールの過去を知ることが出来ないでいた。

(原作で一度見た事がある人と合えばその自分の情報が自然と頭に浮かぶ……でも)
(一度もエルシャールの過去が頭に浮かんだことはない……!)

ソレイユに聞かれるまで、エルシャールはエルシャールの過去を知れない事に疑問を思った事もなかった。

(エルシャールの過去が私がここに来た理由と関係している…?)
(そもそも私はなんで死んでしまったんだっけ……?)

そうやって考え出すと次々と疑問は湧きだして止まらなくなった。
ソレイユがいる事も忘れて、エルシャールは考えに老けようとすると、頭がズキズキと痛み始めた。

(まって、今大事な何かが思い出せそうなのに……)

過去を振り返ろうとすればするほど、エルシャールの頭は痛み、背中には冷や汗が伝う。
そんなエルシャールの様子の変化をじっと俯いた角度の隙間からこっそりと観察していたソレイユは慌てて立ち上がると声を掛けた。

「おい、……おい! 大丈夫か?」
「まって、わからない、わからないの!」

ソレイユが両手を掴んで頭をかきむしろうとするエルシャールの動きを止めて問いかけると、エルシャールは錯乱した状態で大声を出した。

顔から血の気が引いて、握った腕はソレイユまで一緒に揺れる程ガタガタと震えている。
うわごとの様に何かを呟いてソレイユの声も聞こえていない様子にソレイユは自分が彼女を追いこんでしまったと焦る。

「っ……エルシャール!しっかりしろ……エルシャール・ラビリンス!!」

ベッドに上がり、ソレイユはエルシャールの身体に出来るだけ身体を寄せるとエルシャールの名前を耳元で叫んだ。

「わから……ない………は……」
「おい!!エルシャール?!」

くたりと、突然身体から力が抜けたエルシャール。
その様子にソレイユは慌て大声で叫んだ。

「ナーサ!!!エルシャールが……!!」

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