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「……今何と?」
「お前の婚約者を見つけてきた!」

それはソレイユがエルシャールの家を訪ねるひと月ほど前。
いつも通り、ソレイユを呼びつけて剣の稽古をした後、ジェニエルは顔を拭いながら天気の話を始めたかのような陽気さで爆弾を落とした。

♢♢♢

「……お前に婚約者が居ないのに私だけが婚約するのは良くないって」
「……セージュが言ったんですね。それで私に適当な女を宛がってセージュと婚約してしまおうと」

ジェニエルの言葉の先を読んでソレイユが返すと、ジェニエルはソレイユの言葉を最後まで聞かずに続きを話した。

「そうそう!ついでにセージュを狙うライバルも蹴落とせる。一石二鳥ってやつだな!」
こちらが呆れる程楽観的な物言いに、ソレイユは呆れて言葉も出なかった。
自分にやたらとライバル視をしている癖に、素直に自分の狙いを話してしまうジェニエルをソレイユは嫌いになれないなと思いながらも冷ややかな目線をジェニエルに送る。

「そんな話に私が乗ると思って言っておられます?」
「いや?」

首をかしげながら答えるジェニエルは曇りのない笑顔で即答する。
ソレイユとは上下関係があるとはいえ、兄弟に近い存在として共に過ごしてきた仲だからだろう。
気安いやり取りにソレイユがため息をつくと、ジェニエルは屈託なく笑った。
ソレイユがジャニエルを知るのと同等にジャニエルもまたソレイユの事をよく知っていた。

「だったら…」
無理ですね。
そう続けようとした言葉は、ジェニエルによって封殺された。

「……ラビリンス家だと言ってもか?」

断ろうとしたソレイユはジャニエルの言葉に片方の眉毛を一瞬だけ動かして反応を示した。
ラビリンス家――それはソレイユがジェニエルに言われて探りを入れている家の一つだった。

ジャニエルは基本的には自堕落的で城をよく抜け出してはいるものの、国の為には冷静で真摯に物事に向き合うような性格だった。
その彼が、何かを掴み、その正体をソレイユに暴けというのであればソレイユが拒否する手段はなかった。

「詳しく聞かせてください」
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