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シュラウドが7歳になる時、さらなる悲劇が訪れました。
セレナータが命を断ったのです。
息子の立場を憂いていたセレナータがどれだけ願い出てもシュラウドへの仕打ちは変わりませんでした。
自分ではなく、幼い我が子を狙う卑劣な力にセレナータは心を壊してしまったのでした。
セレナータは最後に、自分の命と引き換えに息子の継承権を抹消してほしいとの言葉を残して息絶えていました。
「母上……」
シュラウドが知らせを聞き、セレナータの部屋に訪れると、血塗れのセレナータは生前の美しい姿からは想像もできないほど醜い姿になっていました。
天井からつるされた母の姿にシュラウドは泣き叫びました。
そんなシュラウドに寄り添う人は誰も居ませんでした。
「セレナータの願い通り、シュラウドを王太子から外し、ドナルドを王太子とする」
「殿下がご聡明でセレナータも喜んでいますわ」
セレナータが自死だと診断が下ると、リッシュは重鎮達を集めて宣言しました。
その言葉にアントワネットは喜びを示しましたが、シュラウドは眉毛一つも動かしませんでした。
ただじっと、アントワネットを見つめて何かを考えている様子のシュラウドを彼は見ていました。
セレナータが亡くなってリッシュは3日は嘆き悲しんでいましたが、それもすぐに新しい妃を迎え入れた事で忘れ去ったようでした。
シュラウドと少数の使用人だけの簡素な埋葬が終わった頃にはすっかりリッシュの関心はあたらしい妃に向いていて、姿を現す事もありませんでした。
セレナータを失ってから、シュラウドの生活は一変しました。
リッシュはセレナータだけを愛していて、その息子の事などどうでも良かったのです。
母の関心を自分に向け、言う事を聞かせるための道具としてシュラウドを扱っていたのです。
アントワネットがシュラウドに何をしても、もう誰も彼女を止めようとはしません。
「今日から貴方は南の屋敷に住みなさい」
「……はい、皇后陛下」
セレナータの葬儀が終わった翌日、呼び出されたシュラウドは王宮の中でも一番端の小さな屋敷に住まいを移す事になりました。
後ろ盾もないシュラウドはセレナータの言うがまま従う他ありません。
離宮のそのまた端にある、お世辞にも人が住めるかどうかというような屋敷に、シュラウドはメイドを二人だけ与えられて、護衛もなく追い立てるように移動させられました。
シュラウドが王族とは思えないほど貧しい生活を始めた時も、彼はずっと見守っていました。
王宮から屋敷に移って、シュラウドの食事は見るからに質素になりました。
昼間に矢が降ってくることも、シュラウドの命を狙う刺客が現れる事も一日としてありませんでした。
セレナータが命を断ったのです。
息子の立場を憂いていたセレナータがどれだけ願い出てもシュラウドへの仕打ちは変わりませんでした。
自分ではなく、幼い我が子を狙う卑劣な力にセレナータは心を壊してしまったのでした。
セレナータは最後に、自分の命と引き換えに息子の継承権を抹消してほしいとの言葉を残して息絶えていました。
「母上……」
シュラウドが知らせを聞き、セレナータの部屋に訪れると、血塗れのセレナータは生前の美しい姿からは想像もできないほど醜い姿になっていました。
天井からつるされた母の姿にシュラウドは泣き叫びました。
そんなシュラウドに寄り添う人は誰も居ませんでした。
「セレナータの願い通り、シュラウドを王太子から外し、ドナルドを王太子とする」
「殿下がご聡明でセレナータも喜んでいますわ」
セレナータが自死だと診断が下ると、リッシュは重鎮達を集めて宣言しました。
その言葉にアントワネットは喜びを示しましたが、シュラウドは眉毛一つも動かしませんでした。
ただじっと、アントワネットを見つめて何かを考えている様子のシュラウドを彼は見ていました。
セレナータが亡くなってリッシュは3日は嘆き悲しんでいましたが、それもすぐに新しい妃を迎え入れた事で忘れ去ったようでした。
シュラウドと少数の使用人だけの簡素な埋葬が終わった頃にはすっかりリッシュの関心はあたらしい妃に向いていて、姿を現す事もありませんでした。
セレナータを失ってから、シュラウドの生活は一変しました。
リッシュはセレナータだけを愛していて、その息子の事などどうでも良かったのです。
母の関心を自分に向け、言う事を聞かせるための道具としてシュラウドを扱っていたのです。
アントワネットがシュラウドに何をしても、もう誰も彼女を止めようとはしません。
「今日から貴方は南の屋敷に住みなさい」
「……はい、皇后陛下」
セレナータの葬儀が終わった翌日、呼び出されたシュラウドは王宮の中でも一番端の小さな屋敷に住まいを移す事になりました。
後ろ盾もないシュラウドはセレナータの言うがまま従う他ありません。
離宮のそのまた端にある、お世辞にも人が住めるかどうかというような屋敷に、シュラウドはメイドを二人だけ与えられて、護衛もなく追い立てるように移動させられました。
シュラウドが王族とは思えないほど貧しい生活を始めた時も、彼はずっと見守っていました。
王宮から屋敷に移って、シュラウドの食事は見るからに質素になりました。
昼間に矢が降ってくることも、シュラウドの命を狙う刺客が現れる事も一日としてありませんでした。
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