双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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「ミシャル!」

突然ミシャルが走り出して、クロディクスは彼女の背中に大声で呼びかけ後を追おうとするとシャルルは自分の手をクロディクスに絡ませて不敵に微笑んだ。

「お姉様より私の方が貴方に相応しいわ、行きましょう?」
「……そうですね、あなたは確かに……印象的な方のようですね」
「あら、お姉様ったらかわいそう♡だって……」

クロディクスは、ミシャルの方を向いたまま、シャルルの言葉に肯定してみせた。
その言葉にシャルルは気をよくしてさらにクロディクスに声をかけてクロディクスを見上げてやっと口を閉じた。
ぶわり、と広がった冷たい空気に息を飲む。

「ミシャルの事だから騒ぎになるのは嫌だろうと穏便に済ませようと大人しくしていただけだ、気安く触れるな」

身体の芯まで凍り付くような声に、シャルルは喉から絞り出すような声をだしてへたり込んだ。
いつもならシャルルの様子がおかしいと感じてすぐに現れる両親が現れずシャルルが振り返ると、彼らは時間が止まったように固まったままだった。

「なっ……」
「二度のその汚い口でミシャルを侮辱するな」

シャルルが異変を感知して声を上げるとすぐ、クロディクスはシャルルに掴まれていたコートを脱ぎ捨てて消しクズにしてしまう。
そこでようやく、ミシャルは相手がただの人ではない事に気が付き恐怖で身を固めたがクロディクスはそのまま続けた。

「ミシャルを傷つける権利はない。それだけは覚えていろ、去ね」
「……っ、」

クロディクスは一度だけ冷ややかに彼女を見つめた後、指を弾いた。
わっと、音が響き街に活気が戻る。

「シャルル!どうした!」
「まぁ、せっかくのお洋服が汚れてしまってるわっ!」
「一体誰にこんなひどい事をされたんだ!」

クロディクスは、慌ててシャルルに走り寄って来る両親が誰にこんなことをされたのかと怒り喚く横を素通りすると二度とシャルルを振り返る事がなかった。


♢♢

「お食事の前にお洋服を新しくしましょう」
「……やる」
「何か言ったか?シャルル」
「いいえ、少し転んでしまっただけよ、お父様」

シャルルは誰にもクロディクスの背中を睨みながら誰にも聞こえないような声でつぶやいた後、父の言葉に首を振ってから明るい声で答えた。
憎しみが籠った視線をシャルルが向けていたのを知るのは、電柱から全てを見守っていたカラス一匹だけだった。
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