双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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「おはようございます、ミシャル様」
「お……おはようございますルーク様」

屋敷を出てすぐ、青い薔薇が咲き誇る玄関口に立つルークに挨拶をされたミシャル。
にっこりと、音が出るような作り物の笑顔を浮かべる彼に何か失礼な事をしてしまっただろうかとドキドキしながらも返事を返すとミシャルの前に立っていたヴァイスが振り向いた。

「可哀そうに震えてるじゃないか」
「それは貴方のせいじゃないですか?」

ミシャルがルークに怯えていると勘違いしたヴァイスの言葉をルークは瞬く間に切り落とすと、大きなため息とともに指を鳴らした。
その音と共にミシャルの肩にふわりと、柔らかいローブが降りてくるとミシャルは驚いてルークを見上げた。

「今日は雪が降るかもしれませんから」
「あ、ありがとうございます」
「ヴァイスが急かしたのでしょう?まったく、いつまでたっても人の気持ちがわからない人なんですから……」

ミシャルに問うように小言を言うルークにミシャルは困ったような表情をするしかなかった。
肯定をするのも憚られ、かといって否定も出来ないでいるミシャルにルークは二言三言ひとり言を呟いていたかと思うとミシャルをみて思いだしたような声を上げた。

「ああ、私としたことが。馬車までご案内いたします」

ヴァイスとは違い、手を差し伸べたりはせずにルークはミシャルの一歩前を進むようにして中庭を進むとミシャルにも見覚えのある門の前で立ち止まった。
後ろから黙ってついてきていたヴァイスがミシャルを追い越して門を通りぬけると、ミシャルもルークに小さくお礼を告げてから門を通った。

「わぁ……」

門を抜けてすぐ、ミシャルを待っていたのは黒い2頭の馬に繋がれた馬車だった。
全て黒塗りされた重厚感のある馬車は、銀色でシンプルに装飾されている。

「こっちだ、ミシャル嬢。足元に気をつけろ」

馬車を見て固まっていたミシャルはヴァイスに呼ばれて小走りでヴァイスの傍まで近づいた。
ゼリヌが用意してくれた靴はヒールが少しあるものの歩きやすく馬車の入口に立つヴァイスの手を借りて中に乗る込んだミシャルは俯いていた顔を上げて今日一番驚いた声を上げた。
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