双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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跡形もなく姿を消した呪い師が残した予言を口にすると、それも空中で粒子がほどけるようにして消えていった。

「消えたのか?」

煙のように姿を消した呪い師が残した紙切れを拾い上げて、相手を逃しても動じないクロディクスにヴァイスは尋ねた。
その問いにクロディクスが頷くと手にした紙を燃やしてみせた。
青い火があがり、ひとつ奇声を発して紙が消し炭になる。

「なんだ替え玉か」
「巧妙に練られていて対面するまでは私もわからなかった」

対面してわかった事ではあるが、呪い師は実態を持たないままクロディクスの屋敷に現れていた。
クロディクスの結界内に入り込めたのもそれが原因だろう。

「一体何用で来たんだろうな、わざわざ出向いてまで教える様な事でもあるまいに」
「それを調べるのがお前だろう」
「やれやれ、うちの主は人使いが荒い」

呪い師の狙いはわからないままとは言えクロディクスは何となく察しがついていた。
ミシャルをだしにしてクロディクスから対価として何かを得ようとしていたのだと。
そうでなければ呪い師という事以外所在から何もかもを隠した相手がクロディクスの前に現れるとは考えられなかった。

「黒は死を司るとは一体何をさしてるのか……君はどう考える?」

何もなくなった空中であたらしい予言が出てこないかと、ヴァイスが空気をかき回しながらクロディクスに尋ねた。
その問いにクロディクスは答えられなかった。

「黒はミシャルを差すとして……死とはなんだ?」

長い脚を組んでヴァイスは独り言のように予言について深く考え込んでいる様子だった。
その彼の言葉にクロディクスも改めて予言について考えてみる事にした。

双子が生まれるとされる時に呪い師がなぜ予言を落としたのか。
そこから考えてみようにも肝心の相手からは何も聞きだせなかった。

(ミシャルを生かす為に呪い師が動いた……)

導き出した結論にクロディクスはまた新たな疑問がわいたのを無視して呪い師について知っている事をヴァイスとすり合わせる事にした。

「呪い師についてわかっている事を整理しよう」
「予言ではなく呪い師についてか?」
「ああ、そもそも呪い師が予言を落とした意味から考えなければ予言の内容を考えられないだろう」
「なるほどな、あいわかった」

ヴァイスはクロディクスの言葉に理解を示すと自分が掴んだ呪い師について語り始めた。
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