双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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「ヴァイスが誰かを招き入れたか……」

クロディクスがミシャル達と別れて一人考えに耽っていた時だった。
突然結界を通りぬける人ならざる存在に気が付いた時、傍にばヴァイスの気配もあった。
自分が知らないところで何かが起こっている。
そう感じたクロディクスの元にリュークが部屋の扉をノックして現れた。

「ミャルル様の事でお客様がお見えです」
「誰だ?」
「それが……呪い師と語る方でヴァイスが今話をされています」
「わかった私も行こう」

クロディクスはリュークとの会話を終わらせると、席を立った。
ヴァイスが呼び寄せたかと思ったがそうではないらしいと知ってクロディクスは思考する。

(ミシャルの呪いを追っていたらタイミングよく呪い師がやってくる……彼女に一体何があると言うんだ?)

ミシャルに触れた時も、彼女の傷を治した時もクロディクスはミシャルを普通の令嬢であるとハッキリ断言していた。
この国には誰もいないただ黒い瞳を持つだけの令嬢が、伝説とすら言われるような呪い師を連れてくるとは思っても居なかったクロディクスは胸に刺さる矢がうずいたような気がした。


「まさかご当主まで相まみえる事になるとはねえ」

ヴァイスと呪い師が話をしている所に現れたクロディクスが、挨拶をして開口一番に告げられたのは嫌味ともとれる呪い師の挨拶だった。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。偉大な呪い師と謡われる方とお会い出来て光栄です」

クロディクスはそんな挑発に乗ることなく模範解答の返事を返すと、相手はフードを被っていて表情が見えないというのにわかりやすく機嫌を損ねた雰囲気を醸し出した。

「ご用はミシャルの事だと伺いましたが……本当にそれだけのご用ですか?」
「さてね。どう思う?」

なぞかけのような問答が続いて、クロディクスは内心ため息をついた。
中々本心を探らせて貰えないだけでなく、こちらを翻弄して楽しんでいる相手にどんな言葉を返したらいいかと考えた末に口を開いた。

「双子にまつわる予言について教えてもらえないでしょうか?」
「ミシャルの呪いについては聞かないのかい?」
「そっちまで要求をすれば対価が必要になるでしょうから必要ありません」

きっぱりとクロディクスは呪い師の言葉を拒否すると、わかりやすく呪い師はため息をついた。

「やっぱりくるんじゃなかったね」

そう言って呪い師はクロディクスとヴァイスにミシャル達に落とした予言を告げて文字通り姿を消した。
霞のように消える姿にヴァイスが魔法を使おうとするのを制してクロディクスは空に浮かんだ予言を読み上げた。

「黒は死を司る。決して殺めてはならない」
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