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「端的にいえば何もわからないことがわかった」
その言葉にクロディクスは眉間にしわを寄せた。
この男の突拍子もない事には慣れているが、意図することが全くわからない。
普段のふざけた調子で言っているのかと思えば、ヴァイスの表情は未だに無表情で。
続く言葉を待っても、ヴァイスはそれ以上何かを言おうとすることもなかった。
「意味が分からん」
力が抜けた状態のままクロディクスが首をかしげる。
シャラリと、音を立てて耳飾りが動きに合わせて音を立てた。
「それがなぁ、君に頼まれた事は1日ぽっちじゃわからん謎に包まれているらしくてな」
首元に手を当てて気まずそうな顔をするヴァイスをクロディクスは随分人間ぽくなったものだとずれた事を思った。
血の契約で結ばれた悪魔であるヴァイスはクロディクスの使い魔の一人だった。
お互いに約束という呪いをかけあって結ばれる主従関係をクロディクスの魔力欲しさに望む悪魔は多かった。
それらを悉く断っていたクロディクスにヴァイスは面白そうだからという理由だけで話を持ち掛けてきた変な悪魔だった。
長年生きて面白いことを求めるためだけに生きているというヴァイスの話にクロディクスは乗った。
「不死の男が死ぬ瞬間を見せる」という不可能な約束を交わしてから随分と時間が経った。
未だに何が面白いのか、ヴァイスは従者の真似事をしてクロディクスのそばにいた。
「わかったことを話せ」
ヴァイスは身体を起こしてメモを取る体制になったクロディクスに自分が行った調査の概要を説明した。
ミシャルがなぜクロディクスの屋敷に入れたのか調査をするためにヴァイスはまず彼女の住処であった屋敷の部屋に入り込みミシャル過ごしていた部屋の中に彼女が特別である痕跡がないか探した。
ガラクタと、1枚の薄い毛布以外殆ど物がない屋根裏部屋にあったのは虐待の痕だけでヴァイスは胸糞悪い気分を抱いただけだった。
次にメイドに扮してミシャルが生まれてからの記録を粗方見たが妹のシャルルについては事細かに書かれているものの、ミシャルについては一切何も書かれていなかった。
埒が明かなくてそのままミシャルについて家の者に話を聞いてみたが、不思議な力を持つと言うこともなければ何か特別な事が出来る訳でもないと言う。
結局ミシャルが黒い瞳をもって生まれたというわかり切った事だけしかわからず、記憶をのぞいてみれば、双子が生まれる事を予言した呪い師の事を知り、すぐさま呪い師を探してみたが、こちらの足取りはミシャルが生まれてから忽然と消えていてその人物をはっきりと覚えている物もいなかった。
「呪い師を探す必要があるな」
「そいつが居たという確証はないが…恐らく呪い師が何かを知っている可能性は高いだろうよ」
クロディクスの言葉に返事を返したヴァイスはじっと次の言葉を待っていた。
指示がなければ動けない制約を煩わしく思ったのは久しぶりだった。
「双子に予言を残した呪い師について調べられるか」
「仰せのままに」
羽が広がった音が聞こえると同時に、ヴァイスは人からカラスに姿を変えた。
クロディクスの指先が宙に描いた文字を喰ってからすっかり日が昇った太陽の照りつける窓からヴァイスは飛び立った。
その言葉にクロディクスは眉間にしわを寄せた。
この男の突拍子もない事には慣れているが、意図することが全くわからない。
普段のふざけた調子で言っているのかと思えば、ヴァイスの表情は未だに無表情で。
続く言葉を待っても、ヴァイスはそれ以上何かを言おうとすることもなかった。
「意味が分からん」
力が抜けた状態のままクロディクスが首をかしげる。
シャラリと、音を立てて耳飾りが動きに合わせて音を立てた。
「それがなぁ、君に頼まれた事は1日ぽっちじゃわからん謎に包まれているらしくてな」
首元に手を当てて気まずそうな顔をするヴァイスをクロディクスは随分人間ぽくなったものだとずれた事を思った。
血の契約で結ばれた悪魔であるヴァイスはクロディクスの使い魔の一人だった。
お互いに約束という呪いをかけあって結ばれる主従関係をクロディクスの魔力欲しさに望む悪魔は多かった。
それらを悉く断っていたクロディクスにヴァイスは面白そうだからという理由だけで話を持ち掛けてきた変な悪魔だった。
長年生きて面白いことを求めるためだけに生きているというヴァイスの話にクロディクスは乗った。
「不死の男が死ぬ瞬間を見せる」という不可能な約束を交わしてから随分と時間が経った。
未だに何が面白いのか、ヴァイスは従者の真似事をしてクロディクスのそばにいた。
「わかったことを話せ」
ヴァイスは身体を起こしてメモを取る体制になったクロディクスに自分が行った調査の概要を説明した。
ミシャルがなぜクロディクスの屋敷に入れたのか調査をするためにヴァイスはまず彼女の住処であった屋敷の部屋に入り込みミシャル過ごしていた部屋の中に彼女が特別である痕跡がないか探した。
ガラクタと、1枚の薄い毛布以外殆ど物がない屋根裏部屋にあったのは虐待の痕だけでヴァイスは胸糞悪い気分を抱いただけだった。
次にメイドに扮してミシャルが生まれてからの記録を粗方見たが妹のシャルルについては事細かに書かれているものの、ミシャルについては一切何も書かれていなかった。
埒が明かなくてそのままミシャルについて家の者に話を聞いてみたが、不思議な力を持つと言うこともなければ何か特別な事が出来る訳でもないと言う。
結局ミシャルが黒い瞳をもって生まれたというわかり切った事だけしかわからず、記憶をのぞいてみれば、双子が生まれる事を予言した呪い師の事を知り、すぐさま呪い師を探してみたが、こちらの足取りはミシャルが生まれてから忽然と消えていてその人物をはっきりと覚えている物もいなかった。
「呪い師を探す必要があるな」
「そいつが居たという確証はないが…恐らく呪い師が何かを知っている可能性は高いだろうよ」
クロディクスの言葉に返事を返したヴァイスはじっと次の言葉を待っていた。
指示がなければ動けない制約を煩わしく思ったのは久しぶりだった。
「双子に予言を残した呪い師について調べられるか」
「仰せのままに」
羽が広がった音が聞こえると同時に、ヴァイスは人からカラスに姿を変えた。
クロディクスの指先が宙に描いた文字を喰ってからすっかり日が昇った太陽の照りつける窓からヴァイスは飛び立った。
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