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リュークがメイドのゼリヌと共に用意した皿は5枚あった。
白いお皿に乗せられた料理はどれも湯気と瑞々しかった。
見ただけでわかる美味しそうな料理にミシャルは小さく感嘆した。
冷めた物しか口にしてこなかったミシャルにとって湯気が出る食べものを用意してもらえるなんて夢のようなものだった。
家では余りものを持ってやってくるメイドと一緒にミシャルの食事をけなすシャルルの話を聞いていただけのミシャルにとって、本当に温かい料理が存在したのかと感動していた。
一番近くに置かれていた卵のオムレツはしっとりとシワもなくきれいな黄金色の三日月形で、かけられた赤いソースとのコントラストがミシャルの腹の音を何度も誘っていた。
赤いソースもよく見るとミシャルが知らないだろう野菜が細かく刻まれて一緒に煮詰められたようで、食べる前から美味しいことが一目でよくわかる出来栄えだった。
右手に置かれたサラダはいちごとブルーベリーといった図鑑で見た事のある果物が使われていて、果物を生れてから一度も口にしたことがないミシャルはその宝石のような輝きに目が釘づけになった。
宝石箱をひっくり返したような輝きを放っているサラダはつやつやと光り輝いていて食べることがもったいなく感じるほど綺麗だった。
他にも厚切りのステーキに、魚のあんかけ、彩の綺麗な野菜炒めらしきものと、ミシャルにはどれもどんな味がするのか想像がつかないものの全ておいしそうで目を輝かせて皿を凝視していた。
「お口に合うかわかりませんが、たくさん召し上がって下さい」
そういって最後に湯気の立つスープ皿をミシャルの前に支給したリュークはゼリヌと共に立ち去った。
カトラリーとナプキンをどうすればよいのかわからないで食事を前にしてじっとしていたミシャルは、まさか二人きりにされるとは思っていなかった為に縋る気持ちでミシャルはリュークの背中に声をかけた。
「リューク様もご一緒に食べられないのですか?」
クロディクスとリュークだけしかいないと聞いていた屋敷でわざわざ主人と時間をずらして夕食を食べるとは思っていなかったミシャルの問いかけにリュークは呆れた表情を浮かべて振り返った。
「私はゼリヌと食事を奥の部屋で頂くので、貴方はクロディクス様と召し上がってください」
返事は求めていないとメイド、ゼリヌを引き連れてリュークは部屋を後にしてしまい、頼りのリュークが居なくなるとミシャルは絶望した表情でその扉を見つめていた。
「私と二人は嫌か?」
茫然と二人を見送ったミシャルにクロディクスは苦笑いを浮かべながらミシャルに問いかけた。
強引に滞在させることを決めた負い目もあって、ミシャルに嫌われることはこれ以上したくないクロディクスはこの状態をミシャルがどう思っているのか聞いてから判断しようとしていた。
「違います!」
弾かれた様にテーブルに手を置いて立ち上がったミシャルはクロディクスの言葉を否定した。
それからはしたない行動をとった自分に恥じるように力なく椅子に戻ってクロディクスに訴えかけるように口を動かした。
「私は家で教育を受けていません、クロディクス様に粗相をしてしまうのが不安で…」
リュークが居ればミシャルが気が付かない失礼な言動を気が付き次第咎めてくれると頼っていたミシャルはクロディクスに直接指摘されるか嫌われるかもしれない状況に怯えていた。
自分を置いてくれると言っている屋敷の主であるクロディクスに粗相を見られてしまってはすぐに追い出されてしまうほどの事をしてしまうのではと危惧していた。
白いお皿に乗せられた料理はどれも湯気と瑞々しかった。
見ただけでわかる美味しそうな料理にミシャルは小さく感嘆した。
冷めた物しか口にしてこなかったミシャルにとって湯気が出る食べものを用意してもらえるなんて夢のようなものだった。
家では余りものを持ってやってくるメイドと一緒にミシャルの食事をけなすシャルルの話を聞いていただけのミシャルにとって、本当に温かい料理が存在したのかと感動していた。
一番近くに置かれていた卵のオムレツはしっとりとシワもなくきれいな黄金色の三日月形で、かけられた赤いソースとのコントラストがミシャルの腹の音を何度も誘っていた。
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他にも厚切りのステーキに、魚のあんかけ、彩の綺麗な野菜炒めらしきものと、ミシャルにはどれもどんな味がするのか想像がつかないものの全ておいしそうで目を輝かせて皿を凝視していた。
「お口に合うかわかりませんが、たくさん召し上がって下さい」
そういって最後に湯気の立つスープ皿をミシャルの前に支給したリュークはゼリヌと共に立ち去った。
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「リューク様もご一緒に食べられないのですか?」
クロディクスとリュークだけしかいないと聞いていた屋敷でわざわざ主人と時間をずらして夕食を食べるとは思っていなかったミシャルの問いかけにリュークは呆れた表情を浮かべて振り返った。
「私はゼリヌと食事を奥の部屋で頂くので、貴方はクロディクス様と召し上がってください」
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「違います!」
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それからはしたない行動をとった自分に恥じるように力なく椅子に戻ってクロディクスに訴えかけるように口を動かした。
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リュークが居ればミシャルが気が付かない失礼な言動を気が付き次第咎めてくれると頼っていたミシャルはクロディクスに直接指摘されるか嫌われるかもしれない状況に怯えていた。
自分を置いてくれると言っている屋敷の主であるクロディクスに粗相を見られてしまってはすぐに追い出されてしまうほどの事をしてしまうのではと危惧していた。
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