双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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先を歩くリュークについていきながらミシャルはやっぱりこの屋敷の部屋数が屋敷の大きさと合わないと結論付けた。
どう見ても扉の数が多すぎて迷子になってしまわないように自室までいくつ扉を通るのか数を数えていた副産物で気が付いた事だった。

「先にクロディクス様をご案内していますが、お食事はミシャル様とおふたりで召し上がって頂くことになっています」

リュークの言葉にミシャルは頷いて同意した。
クロディクスを待つことになるよりはずっと良かったと胸をなでおろした。

この広い屋敷の一室でクロディクスを一人待つのは、従者と共にシャルル達を待つ間地獄の時間を思いこされて、今までの経験からいい思い出がないミシャルにとって嫌な選択肢だった。
リュークが気遣ってくれたのかはミシャルにはわからなかったが、とりあえずはクロディクスを待つ気まずい思いをしなくていいだけミシャルの心は軽くなった。

大広間から3つ目の扉の前に立ってリュークはミシャルを振り返った。

「こちらがお食事を取って頂くお部屋です。決してクロディクス様に失礼のないようにお願いします」

簡単な説明と、ミシャルに釘を刺すことを忘れないリュークにミシャルはおずおずと頷いた。
失礼をするつもりはないが、ミシャルにはクロディクスに失礼がないようにふるまうための教育が足りていると言い難い環境にいたせいで無意識にクロディクスに失礼な言動をしてしまう事を恐れていた。

部屋のとびらが開かれるとミシャルはリュークと離れてメイドに席を案内された。

引かれた椅子をどうしていいかわからずに戸惑っていると、メイドはミシャルに囁いた。

「椅子の前にお立ち下さいますか?」

今までエスコートをされるという自分以外とのマナーを実践したことがないミシャルはメイドの言葉にひとつ頷いてから椅子の前に身体を移動させた。

…これからどうするんだろう?

椅子を使った暴力や嫌がらせならきっと椅子を作った職人よりも思いつくミシャルは正当な使い方である椅子を使ったエスコートがどういうものか全く想像できなかった。
立ちすくむミシャルにメイドはまた優しく、今度はミシャルの後ろから椅子に手をかけた状態で声をかけた。

「そのまままっすぐ立ったまま腰を下ろして下さい、私がミシャル様のタイミングに合わせて椅子を差し入れます。」

その言葉はミシャルへ嫌がらせをするとは思えない優しさを携えていた。
勇気を振り絞って恐々と、腰を下ろせばお尻に椅子があたり、ミシャルは無意識に詰めていた息を吐いた。

座る直前に椅子を引かれて倒れるミシャルを笑うつもりだろうかとメイドを疑ったことを胸中で詫びて、そこで初めてミシャルは自分がずっとクロディクスにみられていた事に気が付いた。

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