双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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…クロデュクス様のイメージを表すものが思いつかないわ。

ミシャルがクロディクスをいくら思い出そうとしてもなぜか顔が上手く思い浮かばなかった。
さっきまで顔を合わせていたはずなのに、なぜか靄がかかっていて詳細が思い出せない。

ブルーグレーの髪や耳飾りのアクセサリーの詳細は思い出せるのにミシャルは不思議な気持ちでクロディクスの事を思い出そうとしてみた。
年はいくつくらいだったのかと考えてみても10代にも見えたし30代にもみえたような曖昧な考えが浮かんだだけだった。

目の色は印象的だったはず、とミシャルは脳裏に思い描く。
その瞳の色は一般的な青だったのか、はたまたグリーンアイだったかそれとも黄金色だったような気もして結局色も思い出せずじまいだった。
あれだけ特徴的だったクロディクスの顔を覚えられなかった事に驚きを隠せないミシャルが何度思いだそうとしても結局わからずじまいだった。
それどころか、時間が経てばたつほど、思い出そうとすればするほどクロディクス印象が遠のいていく。

「やっぱり思い出せない」

結局ミシャルはクロディクスを思い出すことを諦めて、印象に残っている薔薇の花を刺そうかと思いいたった。
屋敷を覆う蔓は少し恐ろしい雰囲気であったものの、青い薔薇はとてもきれいな色だった。
薔薇は赤や白、まれに黄色があると図鑑で読んだだけのミシャルにとって初めて見た色はとても印象的だった。
手折ると鉱石に変化する薔薇の図案を考え始めてミシャルはふと思った。

薔薇の花を刺したハンカチを持ちたいと男性が思うのだろうかと一般的な考えに至ったのだ。
きっとクロディクスほど美しい人なら花のハンカチを持っても違和感がないだろうと思ったものの、結局やめることにした。

もっと男性らしいものをと、考えるが剣を振るう姿はクロディクスの優雅さからは想像もできなかった。

髪の色から想像できる物を浮かべてみてもどれも金属の物が思い浮かび、クロディクスらしいとは思えずに髪の色から想像することもやめた。

三つ編みをそのまま刺すこともできずにクロディクスを現すものもピンとこないままミシャルは一度考え方の方向性を変えようと立ち上がって窓の外を見た。

ミシャルに与えられた部屋は2階の角だったために見事に咲くブルーローズを一望できた。

…薔薇はここの特徴ではあるけどクロディクス様が身に着けているわけではないものね。

それにさっきも断念した花でもあってミシャルは纏まらない考えにため息をついた。
リュークならば眼鏡だったり、彼の持っていた剣だったりとモチーフはすぐに決まるのにと、どこか投げやりな気分になった。

…もう少しここで過ごせば何か思い浮かぶかしら?

幸いにしてこれからミシャルはクロディクスと食事を共にする予定もあった。
今思いつかないだけで顔を合わせたらすぐに思いつくかもしれないとミシャルは前向きに考えることにした。

「ミシャル様いらっしゃいますか?」

そうやって結論を出したタイミングでリュークが扉を軽くノックしてミシャルに声をかけてきた。

「はい!すぐに開けます」
居候とはいえ礼儀として婦人の部屋の扉を開けることは出来ないリュークに答えてミシャルは急いで部屋のとびらに向かった。

結局ミシャルはリュークが呼びに来るまでクロディクスの顔が思い出せないまま全く刺繍のモチーフを決められなかったもののミシャルの顔には笑みが自然とこぼれていた。

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