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今日、私はプロポーズされる

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 今日、私はプロポーズされる。
 されるはずだ。

 まずデートの予定を決める段階で彼氏が「少しいいとこ行こう」って言っていたし、場所もデートにピッタリな銀座。
 そこで恋愛映画見たあとショッピングを楽しんだ。
 彼は元々無口なタイプだけど、今日は朝から一段と無口だ。
 私がなにを話してもワンテンポ遅い返答をし、挙動もそわそわしている。
 これがプロポーズじゃなかったらなんだって言うのだろう。

「ねえ、さっきの映画どうだった?」
「えっ、面白かったよ」
「そう? あなた好みじゃなさそうだけど」

 お決まりのベタな恋愛映画は彼氏は好きじゃない。
 彼が好きなのはド派手なアクション映画だ。
 逆に私はアクション映画のあの騒がしさがどうも好きになれない。
 映画好きで知り合った私たちだけど、映画の趣味は全く合わず、付き合って2年にもなると同じ映画館にいっても見る映画は別々というのが当たり前になっていた。
 けど今日は彼も私の好きな恋愛映画を一緒に見てくれた。
 今日の映画は女の子のほうが少し強引で男の子を引っ張っていく映画。
 本音を言えば私は男の子が引っ張る映画の方が好きだけど、ストーリーは面白かったから問題ない。
 彼はメインの肉料理を食べながら、私の話を聞いてくれた。
 ちょっと控えめだけど強引さもある彼。
 彼と結婚できると思うと私の顔をほころんでしまう。
 
 あっという間にデザートまで運ばれ、それを食べきった後、彼がポツポツと語り始めた。

「さ、早苗」
「……なに?」

 きた。きた。

「早苗とは出会って2年で、控えめな俺と違って早苗は色んな所に連れてってくれるし、引っ張ってくれる」

 うん、うん。

「映画の趣味は合わないけど、2人でそれぞれ見た映画の感想を言うのも楽しい。だからー」

 だから何??? 早く言って!!

「これからも、よろしく」

…………。

「うん。これからも、一生よろしくね!」

 いまいちプロポーズになっていなかったが、まあ彼らしいプロポーズだ。
 彼は私の返答に今までの緊張が解けたのかホッと息をはいた。
 
「よかった。じゃあ、行こうか?」
「うん!」

 彼はスマートに会計をすませ、そのまま電車に乗り、家に帰り、そのままお風呂に入り、日をまたいだ後、ベッドに入りーー、

「いや、指輪は!?」
「えっ?」
「指輪! プロポーズの基本でしょ! なんでそのまま寝ようとしてるの!?」 
「プロポーズ!?」
「したでしょ!! 私に!!」
「えっ!?!?」


 あれから5年経つ。
 プロポーズの記念日を私たち夫婦は2日にかけて行うことが我が家の家訓となっている。
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