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最悪の目覚め
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激しい情事のあとの目覚めは最悪だった。目を開けた途端、レンは今まで感じことの無い吐き気に襲われた。
「うっーー!!」
迫り上がってくる吐き気に思わず体を起こす。
それと同時に腰が悲鳴を上げた。
「ーー!」
言葉にならない悲鳴があがる。
腰に走る鈍痛にレンはうずくまり、その痛みが無くなるのを待つが体の所々が痛みを訴え始める。
「い、たい……ッ」
全身が痛い。頭も、身体中の関節も少し動くだけでギシギシと軋むような痛さだ。
だが、吐き気は止まってくれない。
今にも胃の中のものが口から出てきそうになるのを堪えながらレンは必死にベッドからはいでる。
「う、く……」
口元を抑え、目の前の扉に向かう。
吐き気はさらに増してくる。
すぐさま出したいのをこらえ、レンは部屋の扉に手をかけ、開き戸になっている扉を押すがーー、開かない。
「ーーッ!」
何度押してもビクともしない扉にレンは焦りを覚える。
「あ、開かない……、なんで……?」
何度押せど引いても扉は開かない。そうしているうちに吐き気がどんどん増していく。
もう限界だ、とレンはその場に胃の中のものをぶちまけた。
「うッーー」
びしゃびしゃとした不快な水音が音を立てる。
カーペットが敷いていない場所に吐いたのは幸いだった。
大したものを食べていないおかげで胃液しかでなかった自分の吐瀉物を見て息を吐く。
「……」
多少楽になった視界でレンは今いる部屋を眺めた。
それなりに広さはある。置かれているのが寝かされていたベッドのみのせいでさらに広く感じる。
扉は鍵がかかっている。外界に通じる手段はベッドのすぐ横にある窓のみだが、それも落下防止かはたまた逃走防止か――、人間の手では開けられそうもない鉄格子が嵌められているのがわかる。
「……」
レンは力の無い手で部屋の脇にあった扉に手をかける。そこにはバスルームがあった。
もっと早くバスルームの存在に気がついていれば、こんな吐瀉物で部屋を汚すことは無かっただろうに。
ひとまず、この気持ち悪さから開放されたいとレンはバスルームの洗面台で口をすすぐ。
ふと、鏡に映った自分の姿にレンは息を呑む。
「なっ……」
着させられていたシャツから覗く体には幾つもの赤い跡が残っていた。
急いで全身を確認すると、足にも、腹にもついている。無事な部分は顔くらいだろうか。
もはや情事のそれではなく毒かなにか飲んだのではないか、と思えるほどのおびただしい数のそれにレンは身震いをした。
「なん、なんだ……ッ」
気持ち悪さを通り越し恐怖すら感じる。
目覚める前の出来事が鮮明に脳裏によぎる。
「ーーっ!!」
そうだ。自分はガランに抱かれた。衆人環視の中で、儀式だと言われて。
「う……っ」
嘔吐感が再度湧き上がり、レンは洗面台に激しく嘔吐した。口から出てきたのは僅かな胃液だけだったものの、未だ吐き気は消えない。
ひとしきり吐いたあと、レンはバスルームの壁に縋るように寄りかかったまま荒い息を吐く。
「はぁ……ッはぁ……」
身体中が痛い。吐き気もまだある。喉も焼けつくように痛い。
ここは恐らく、あの宗教の施設の中だろう。
マークの言っていた近所に現れる宗教というのはこれのことか、なんてものを近所の人間に布教しようとしていたのだ。
それに、ガランは重要人物の「祭司」だった。
未成年に一体何をさせているのだ。こんなの、どう考えてもまともではない。
「クソッ……!」
悪態を着きながらも、とにかくここから出なければ。ガランと共に。レンはそう決意する。
一体どうすれば、とにかく、ガランと話をーー。
「うっーー!!」
迫り上がってくる吐き気に思わず体を起こす。
それと同時に腰が悲鳴を上げた。
「ーー!」
言葉にならない悲鳴があがる。
腰に走る鈍痛にレンはうずくまり、その痛みが無くなるのを待つが体の所々が痛みを訴え始める。
「い、たい……ッ」
全身が痛い。頭も、身体中の関節も少し動くだけでギシギシと軋むような痛さだ。
だが、吐き気は止まってくれない。
今にも胃の中のものが口から出てきそうになるのを堪えながらレンは必死にベッドからはいでる。
「う、く……」
口元を抑え、目の前の扉に向かう。
吐き気はさらに増してくる。
すぐさま出したいのをこらえ、レンは部屋の扉に手をかけ、開き戸になっている扉を押すがーー、開かない。
「ーーッ!」
何度押してもビクともしない扉にレンは焦りを覚える。
「あ、開かない……、なんで……?」
何度押せど引いても扉は開かない。そうしているうちに吐き気がどんどん増していく。
もう限界だ、とレンはその場に胃の中のものをぶちまけた。
「うッーー」
びしゃびしゃとした不快な水音が音を立てる。
カーペットが敷いていない場所に吐いたのは幸いだった。
大したものを食べていないおかげで胃液しかでなかった自分の吐瀉物を見て息を吐く。
「……」
多少楽になった視界でレンは今いる部屋を眺めた。
それなりに広さはある。置かれているのが寝かされていたベッドのみのせいでさらに広く感じる。
扉は鍵がかかっている。外界に通じる手段はベッドのすぐ横にある窓のみだが、それも落下防止かはたまた逃走防止か――、人間の手では開けられそうもない鉄格子が嵌められているのがわかる。
「……」
レンは力の無い手で部屋の脇にあった扉に手をかける。そこにはバスルームがあった。
もっと早くバスルームの存在に気がついていれば、こんな吐瀉物で部屋を汚すことは無かっただろうに。
ひとまず、この気持ち悪さから開放されたいとレンはバスルームの洗面台で口をすすぐ。
ふと、鏡に映った自分の姿にレンは息を呑む。
「なっ……」
着させられていたシャツから覗く体には幾つもの赤い跡が残っていた。
急いで全身を確認すると、足にも、腹にもついている。無事な部分は顔くらいだろうか。
もはや情事のそれではなく毒かなにか飲んだのではないか、と思えるほどのおびただしい数のそれにレンは身震いをした。
「なん、なんだ……ッ」
気持ち悪さを通り越し恐怖すら感じる。
目覚める前の出来事が鮮明に脳裏によぎる。
「ーーっ!!」
そうだ。自分はガランに抱かれた。衆人環視の中で、儀式だと言われて。
「う……っ」
嘔吐感が再度湧き上がり、レンは洗面台に激しく嘔吐した。口から出てきたのは僅かな胃液だけだったものの、未だ吐き気は消えない。
ひとしきり吐いたあと、レンはバスルームの壁に縋るように寄りかかったまま荒い息を吐く。
「はぁ……ッはぁ……」
身体中が痛い。吐き気もまだある。喉も焼けつくように痛い。
ここは恐らく、あの宗教の施設の中だろう。
マークの言っていた近所に現れる宗教というのはこれのことか、なんてものを近所の人間に布教しようとしていたのだ。
それに、ガランは重要人物の「祭司」だった。
未成年に一体何をさせているのだ。こんなの、どう考えてもまともではない。
「クソッ……!」
悪態を着きながらも、とにかくここから出なければ。ガランと共に。レンはそう決意する。
一体どうすれば、とにかく、ガランと話をーー。
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