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ガランについて
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家のことを全て終わらせ、シャワーを浴びたレンは自室に置かれた携帯を手に取った。
携帯の着信欄は未だ0件のまま。
ガランからの連絡はない。
念の為、メールの受信欄も確認するが、やはりガランからの連絡はなかった。
「はぁ……」
レンは携帯をテーブルへと置き、いつ連絡が来てもいいように着信音も最大にした状態にし、机に座る。
時間はまだ寝るには早い。
カーラから貰った本を読もうとも思ったがそんな気は慣れず、レンは机に備え付けられた椅子に座り、ノートとペンを取り出した。
まっさらで何も書かれていない用紙にレンは文字を書いていく。
ガランが語った前世の内容をだ。
「国はオヴァン。ガランは祭司……」
そう言いながらレンはノートにガランの前世の話をまとめていく。
ありえない話を聞いて意識が朦朧としていた割には、それなりに覚えていたことが幸いだった。
ひとまず聞かされた内容をノートに書きつらねていく。
膨大な情報だったのですぐにページは埋まり、次のページにもどんどん書いていく。
「国にはこの世界の神がするとされる泉があって、神子はその泉の神と対話ができる。それを国の人々は神からの言葉として受け取っていた……」
ノートに書きながらレンはガランの説明を思い返す。
ガランの前世の世界は獣頭の人間たちしかいない世界で、レン達のような人間は数える程しかいない世界だという。
しかも、その人間は異世界から連れてこられる。ガランの前世ではその連れてこられる人間を「神子」と呼ぶ。
神子には神との対話ができる不思議な力があった。
ガランの前世の神はきちんと意志を持った存在らしく、神の望み通りの対価を支払えばこの世界に恵みを与えてくれるらしい。
神と対話し、神からの言葉を世界に伝える代弁者としての役割があり、儀式などでは神の次に次いで重要な役割を担う。
そんな役割に加え、王の子供を産む役割もしているらしい。
ガランの語る話をそのまま説明するならば、ガランの前世の国の王は子供が非常に生まれにくく、そんな王の子を産む役割をするのも神子の役割なのだと言う。
しかも、神子性別は関係ないという話だ。男も変わりなく、子を腹に宿すことが出来る――。
「じゃあ、王が女性で神子が男だったら、どうするんだ?」
その場合でも神子である男が子供を産むのだろうか。
なら、王の体が変わるのか。いや、そもそも獣人は雌雄同体なのか……、学校で最低限しか学んで居ない生物の知識で色々と考えたが、そもそもこの世界の常識を当てはめること自体ナンセンスかもしれない、ひとまずレンはそう結論づけた。
話を戻そう。
そんな形で神子は歴代の王の妃となり、新たな王を産む。
その王がまた新しい神子を呼び、その子が王となる。
ガランの話ではーー、レンがその「神子」という役割だったらしい。
とはいっても、レンは正式な神子ではなく、本当の神子は前世もレンの母であるハンナでレンはそのハンナが呼び出された時に既に腹に身ごもっていた子供だった。
「……」
レンは手を止め、机の上に飾られている家族写真をみた。
施設の建物が建った時に家族で撮った写真には父マーク、母ハンナがおり、その二人の間にまだ幼いレンが笑みを浮かべている。
まさかガランの口から母であるハンナの名前が出てくるとは思わなかった。しかも、前世でレンと共に登場するとは。
だが、ガランの語るハンナはレンの知るハンナとは大きくかけはなれていた。
ガランの前世の話ではーー、神子のハンナは腹にいたレンを産んだ後、決まり通りにその時にいた王の妃となり、1人の白狼の頭を持った子を産んだ。
ハンナはレンの後に産んだその白狼の子供を愛すことはなかったらしい。
むしろ、化け物と敵視をし、先に産んだ自分がいた世界の夫との子供であるレンを溺愛していたのだという。
ハンナはその10数年後、亡くなった。
本来、ハンナの魂はそのまま輪廻、と呼ばれる魂の循環によって召喚された世界に留まり、元の世界に帰れないはずだった。
それを恐れたハンナは死の間際、息子である前世のレンにせめて魂だけでも元の世界に戻して欲しいと伝え、前世のレンはその思いを受け継ぎ、魂だけで元の世界に戻れる方法は無いかと色々と探っていた。
結果、それは成功し、レンと母ハンナの魂は元の世界に戻れることになった。
既に恋仲だったガランを置いてだ。
そこで一旦、ペンを走らす手が止まった。
携帯の着信欄は未だ0件のまま。
ガランからの連絡はない。
念の為、メールの受信欄も確認するが、やはりガランからの連絡はなかった。
「はぁ……」
レンは携帯をテーブルへと置き、いつ連絡が来てもいいように着信音も最大にした状態にし、机に座る。
時間はまだ寝るには早い。
カーラから貰った本を読もうとも思ったがそんな気は慣れず、レンは机に備え付けられた椅子に座り、ノートとペンを取り出した。
まっさらで何も書かれていない用紙にレンは文字を書いていく。
ガランが語った前世の内容をだ。
「国はオヴァン。ガランは祭司……」
そう言いながらレンはノートにガランの前世の話をまとめていく。
ありえない話を聞いて意識が朦朧としていた割には、それなりに覚えていたことが幸いだった。
ひとまず聞かされた内容をノートに書きつらねていく。
膨大な情報だったのですぐにページは埋まり、次のページにもどんどん書いていく。
「国にはこの世界の神がするとされる泉があって、神子はその泉の神と対話ができる。それを国の人々は神からの言葉として受け取っていた……」
ノートに書きながらレンはガランの説明を思い返す。
ガランの前世の世界は獣頭の人間たちしかいない世界で、レン達のような人間は数える程しかいない世界だという。
しかも、その人間は異世界から連れてこられる。ガランの前世ではその連れてこられる人間を「神子」と呼ぶ。
神子には神との対話ができる不思議な力があった。
ガランの前世の神はきちんと意志を持った存在らしく、神の望み通りの対価を支払えばこの世界に恵みを与えてくれるらしい。
神と対話し、神からの言葉を世界に伝える代弁者としての役割があり、儀式などでは神の次に次いで重要な役割を担う。
そんな役割に加え、王の子供を産む役割もしているらしい。
ガランの語る話をそのまま説明するならば、ガランの前世の国の王は子供が非常に生まれにくく、そんな王の子を産む役割をするのも神子の役割なのだと言う。
しかも、神子性別は関係ないという話だ。男も変わりなく、子を腹に宿すことが出来る――。
「じゃあ、王が女性で神子が男だったら、どうするんだ?」
その場合でも神子である男が子供を産むのだろうか。
なら、王の体が変わるのか。いや、そもそも獣人は雌雄同体なのか……、学校で最低限しか学んで居ない生物の知識で色々と考えたが、そもそもこの世界の常識を当てはめること自体ナンセンスかもしれない、ひとまずレンはそう結論づけた。
話を戻そう。
そんな形で神子は歴代の王の妃となり、新たな王を産む。
その王がまた新しい神子を呼び、その子が王となる。
ガランの話ではーー、レンがその「神子」という役割だったらしい。
とはいっても、レンは正式な神子ではなく、本当の神子は前世もレンの母であるハンナでレンはそのハンナが呼び出された時に既に腹に身ごもっていた子供だった。
「……」
レンは手を止め、机の上に飾られている家族写真をみた。
施設の建物が建った時に家族で撮った写真には父マーク、母ハンナがおり、その二人の間にまだ幼いレンが笑みを浮かべている。
まさかガランの口から母であるハンナの名前が出てくるとは思わなかった。しかも、前世でレンと共に登場するとは。
だが、ガランの語るハンナはレンの知るハンナとは大きくかけはなれていた。
ガランの前世の話ではーー、神子のハンナは腹にいたレンを産んだ後、決まり通りにその時にいた王の妃となり、1人の白狼の頭を持った子を産んだ。
ハンナはレンの後に産んだその白狼の子供を愛すことはなかったらしい。
むしろ、化け物と敵視をし、先に産んだ自分がいた世界の夫との子供であるレンを溺愛していたのだという。
ハンナはその10数年後、亡くなった。
本来、ハンナの魂はそのまま輪廻、と呼ばれる魂の循環によって召喚された世界に留まり、元の世界に帰れないはずだった。
それを恐れたハンナは死の間際、息子である前世のレンにせめて魂だけでも元の世界に戻して欲しいと伝え、前世のレンはその思いを受け継ぎ、魂だけで元の世界に戻れる方法は無いかと色々と探っていた。
結果、それは成功し、レンと母ハンナの魂は元の世界に戻れることになった。
既に恋仲だったガランを置いてだ。
そこで一旦、ペンを走らす手が止まった。
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