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変わらない関係
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すぐさまガランの後を追い、ベッドの上で夜景を見下ろしているガランの元に行き、優しい声色で声をかける。
「ガラン」
「……わりぃ、大丈夫だ」
こちらを振り向いたガランの顔は月明かりに照らされていた。その表情はどこか物憂げで、寂しそうに見える。
顔色的には体調不良では無さそうだ。それだけはよかった。
レンは何も知らぬ顔で言葉を続ける。
「体調が悪いなら、水を持ってきます。あとはーー、僕が気に触ることを言ったとしたら、申し訳ありません」
「……別に、お前のせいじゃない」
頭を下げるレンに対し、ガランは優しく笑う。そして、首を横に振った。
そんな無理やりな笑顔を15であるはずのガランにさせたくはなかった。レンはガランの隣に座り、固い握り拳を作るガランの手を上から包み込む。
「言ってください。僕の、なんの言葉があなたをそうさせたのか」
「……」
「僕は、あなたを知りたいんです。確かにあなたが自分のことを語りたくないのは分かります。けどーー、もし貴方今苦しくて、それを話してくれれば、少しは楽になるかもしれない。その手伝いを僕はしたいんです」
「……別に、そんな大したことじゃねぇよ。昔のーー、じいちゃんのことを思い出しただけだ」
じいちゃん。
その言葉にレンの心臓はどくりと鳴った。
じいちゃんとはーー、あの隠し棚にあった本に映っていた人物のことだろうか。まさかここであの人物に話を聞けるかもしれない状況になるとは思わず、レンは固唾を飲んでガランの言葉を待つ。
「俺の、今の家族でーー、お前と同じ、喫茶店をやってた。お前の店とは違って、こじんまりとした店だったけど」
今の、という言葉が引っかかったが、ガランが初めて話す家族の話をレンは一語一句聞き逃さぬように耳を澄ます。
「よく、俺はじいちゃんの店にいて、じいちゃんと話をしていた。お前んとこみたいに客がくるような場所でもなかったから、じいちゃんは俺の話を沢山聞いてくれた」
「話すだけ、ですか?」
「ん?」
「あっ、いえ……。話すだけだと話題に尽きてしまいそうですから。他に何かしたのかと」
本を書いたのかと聞きたかったが、少し早急過ぎた。
初めてガランが自分の過去を話してくれたのでつい急いでしまった。
施設を思い出せ。
こういった過去の話は本人が話したくなった時に話したいことだけ聞くのが大人の適切な対応だ。
そうしないと子供は責められていると勘違いをして言葉をつぐんでしまうことがある。
だが、幸いにもガランはそうではなかった。
「……そう、だな。俺の話が長すぎてーー、ずっと話してた。向こうの世界は、ここと比べて単純だったけどいろいろあったから」
「そう、ですか」
向こうの世界。
それが何なのかは分からない。酒に酔っているせいか、ガランの瞳はどこか遠くを見ていた。しかし、その目は15の少年がしていい顔ではない。
一体ガランはレンよりも7年短い15という年月をどうやって生きてきたのだろう。
そんなガランの語らない苦労を感じ、レンはガランに囁くように言う。
「……ガラン。あなたは僕の店を変えて欲しくないんですか?」
「……お前の話聞いて、じいちゃんの店思い出した。それだけだ」
「……そうですか」
どうやら、じいちゃん――、ガランの祖父はガランの世話をしていた人物で、ガランにとって大切な人間だった。その祖父の経営していた店と、レンの父マークとマークの経営していた店がガランの中で思わず混ざり合い、店を変えて欲しくない、そう感じたのかもしれない。
自他の境界があやうい子供がやるようなわがままではあるが、ガランが初めて見せた脆い部分を垣間見れて、レンは安心から息を吐く。
「……」
しかし、ガランの口から家族の話を聞くのは初めてだ。
おそらくだが、ガランの祖父はその後、幼いガランと本を書いた。
それを今でもガランは大切に持っている、という訳なのだろう。
レンは穏やかな口調でガランを刺激させないように聞いた。
「ガラン」
「……わりぃ、大丈夫だ」
こちらを振り向いたガランの顔は月明かりに照らされていた。その表情はどこか物憂げで、寂しそうに見える。
顔色的には体調不良では無さそうだ。それだけはよかった。
レンは何も知らぬ顔で言葉を続ける。
「体調が悪いなら、水を持ってきます。あとはーー、僕が気に触ることを言ったとしたら、申し訳ありません」
「……別に、お前のせいじゃない」
頭を下げるレンに対し、ガランは優しく笑う。そして、首を横に振った。
そんな無理やりな笑顔を15であるはずのガランにさせたくはなかった。レンはガランの隣に座り、固い握り拳を作るガランの手を上から包み込む。
「言ってください。僕の、なんの言葉があなたをそうさせたのか」
「……」
「僕は、あなたを知りたいんです。確かにあなたが自分のことを語りたくないのは分かります。けどーー、もし貴方今苦しくて、それを話してくれれば、少しは楽になるかもしれない。その手伝いを僕はしたいんです」
「……別に、そんな大したことじゃねぇよ。昔のーー、じいちゃんのことを思い出しただけだ」
じいちゃん。
その言葉にレンの心臓はどくりと鳴った。
じいちゃんとはーー、あの隠し棚にあった本に映っていた人物のことだろうか。まさかここであの人物に話を聞けるかもしれない状況になるとは思わず、レンは固唾を飲んでガランの言葉を待つ。
「俺の、今の家族でーー、お前と同じ、喫茶店をやってた。お前の店とは違って、こじんまりとした店だったけど」
今の、という言葉が引っかかったが、ガランが初めて話す家族の話をレンは一語一句聞き逃さぬように耳を澄ます。
「よく、俺はじいちゃんの店にいて、じいちゃんと話をしていた。お前んとこみたいに客がくるような場所でもなかったから、じいちゃんは俺の話を沢山聞いてくれた」
「話すだけ、ですか?」
「ん?」
「あっ、いえ……。話すだけだと話題に尽きてしまいそうですから。他に何かしたのかと」
本を書いたのかと聞きたかったが、少し早急過ぎた。
初めてガランが自分の過去を話してくれたのでつい急いでしまった。
施設を思い出せ。
こういった過去の話は本人が話したくなった時に話したいことだけ聞くのが大人の適切な対応だ。
そうしないと子供は責められていると勘違いをして言葉をつぐんでしまうことがある。
だが、幸いにもガランはそうではなかった。
「……そう、だな。俺の話が長すぎてーー、ずっと話してた。向こうの世界は、ここと比べて単純だったけどいろいろあったから」
「そう、ですか」
向こうの世界。
それが何なのかは分からない。酒に酔っているせいか、ガランの瞳はどこか遠くを見ていた。しかし、その目は15の少年がしていい顔ではない。
一体ガランはレンよりも7年短い15という年月をどうやって生きてきたのだろう。
そんなガランの語らない苦労を感じ、レンはガランに囁くように言う。
「……ガラン。あなたは僕の店を変えて欲しくないんですか?」
「……お前の話聞いて、じいちゃんの店思い出した。それだけだ」
「……そうですか」
どうやら、じいちゃん――、ガランの祖父はガランの世話をしていた人物で、ガランにとって大切な人間だった。その祖父の経営していた店と、レンの父マークとマークの経営していた店がガランの中で思わず混ざり合い、店を変えて欲しくない、そう感じたのかもしれない。
自他の境界があやうい子供がやるようなわがままではあるが、ガランが初めて見せた脆い部分を垣間見れて、レンは安心から息を吐く。
「……」
しかし、ガランの口から家族の話を聞くのは初めてだ。
おそらくだが、ガランの祖父はその後、幼いガランと本を書いた。
それを今でもガランは大切に持っている、という訳なのだろう。
レンは穏やかな口調でガランを刺激させないように聞いた。
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