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変わらない関係
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「……カーテン」
「カーテン?」
「あ、その、なんでも――」
「カーテンだな。わかった」
しまった、と思った時にはもう遅かった。
レンは慌てて訂正しようとするも、ガランは早速持っている携帯でカーテンを調べ始めている。
「ま、待ってください! カーテンはいいですから。なにか別のものをーー」
「じゃあ、リフォームするか?」
「それもいいですから!」
「じゃあ、楽しみにしていてくれ」
ガランはすっかりカーテンを買う気になってしまっているようだ。
レンの店は窓が多く、大きなガラスを使っているため、日差しがよく入るようになっている。
その分カーテンも多く使われており、それを変えるとなるとそれなりの値段と手間が必要で、変えようと思ってもなかなか変えられない。
まあ、そろそろ変えようと思っていたし、何よりリフォームとか増築よりは何倍も値段も手間もかからない。
しかも、何よりガランがやる気だ。
仕方ない。
それをプレゼントとしよう。ガランも積極的だし、センスも任せられる。
レンは心を決め、ガランに頭を下げた。
「……よろしく、お願いします」
「希望はあるか? 柄とか色とか」
「明るくて、柄が入って、店の雰囲気が明るくなるようなものを子供が入りやすいようなものを」
「明るいの? なら、いっそのこと内装も変えたらどうだ? 別に俺はリフォームも込みでもーー」
「それは結構です!」
瞬時に拒否したレンにガランは少し残念そうな顔をした。
そんな顔をされても困る。そこまでレンの店をリフォームしたいのか。だが、いくら金を持っているとはいえ、リフォームされるのは遠慮したい。
「あの店は元は父がやっていた店で内装は僕も気に入っていますから、大きく変えたくないんです」
「お前の親が?」
「はい。といっても、店をやっていたのは10年くらい前ですが」
レンがまだ幼き頃の話だ。施設が出来たばかりで、母親はその運営に忙しくレンの子育てにほとんど参加出来なかった。
そのため、レンの世話はほとんど父親がしてくれた。
学校が終わるとレンは家ではなく店に行き、そこで父が入れたカフェオレを飲みながら勉強やその日あった出来事を父や店の客に話す。
店が終わったら、一緒に店の掃除をして家に戻り、施設の方へ働いている母親のために食事を作り、食事を食べるがてら施設で他の子供と一緒に食事をする生活。
穏やかで楽しい記憶だが、施設の規模が大きくなるにつれ、受け入れる子供も多くなり、父も施設を手伝うようになり店より施設にいることが多くなった。
それが週に何度もになり、父も母の施設を本格的に手伝うため、店は閉店することになったのだ。
店を閉めることは父親も納得していたとはいえ、心残りもあったのだろう。
同じ店舗で店をやりたいと言ったレンに父親は嬉しそうに歓迎してくれ、その時に家具や器具のなどの援助をしてくれたのだ。
「ですから、あまり内装は変えたくなくて。あのままがいいんです」
「だったら、俺は今のままがいい」
「ガラン?」
「……」
レンの話の途中から喋らなくなったガランは飲んでいたワインを一口で飲みきる。
その時の顔があの本で見たあどけない顔を彷彿とさせるが、それは直ぐに収まり、気まずそうに目を逸らしたガランは顔を赤くしながら吐き捨てるように言った。
「わりぃ。少し、酔いすぎたから寝る」
そう言って席を立ったガランがレンの横をすり抜けた時、あの本が入っている棚を撫ぜたのをレンは見逃さなかった。
「カーテン?」
「あ、その、なんでも――」
「カーテンだな。わかった」
しまった、と思った時にはもう遅かった。
レンは慌てて訂正しようとするも、ガランは早速持っている携帯でカーテンを調べ始めている。
「ま、待ってください! カーテンはいいですから。なにか別のものをーー」
「じゃあ、リフォームするか?」
「それもいいですから!」
「じゃあ、楽しみにしていてくれ」
ガランはすっかりカーテンを買う気になってしまっているようだ。
レンの店は窓が多く、大きなガラスを使っているため、日差しがよく入るようになっている。
その分カーテンも多く使われており、それを変えるとなるとそれなりの値段と手間が必要で、変えようと思ってもなかなか変えられない。
まあ、そろそろ変えようと思っていたし、何よりリフォームとか増築よりは何倍も値段も手間もかからない。
しかも、何よりガランがやる気だ。
仕方ない。
それをプレゼントとしよう。ガランも積極的だし、センスも任せられる。
レンは心を決め、ガランに頭を下げた。
「……よろしく、お願いします」
「希望はあるか? 柄とか色とか」
「明るくて、柄が入って、店の雰囲気が明るくなるようなものを子供が入りやすいようなものを」
「明るいの? なら、いっそのこと内装も変えたらどうだ? 別に俺はリフォームも込みでもーー」
「それは結構です!」
瞬時に拒否したレンにガランは少し残念そうな顔をした。
そんな顔をされても困る。そこまでレンの店をリフォームしたいのか。だが、いくら金を持っているとはいえ、リフォームされるのは遠慮したい。
「あの店は元は父がやっていた店で内装は僕も気に入っていますから、大きく変えたくないんです」
「お前の親が?」
「はい。といっても、店をやっていたのは10年くらい前ですが」
レンがまだ幼き頃の話だ。施設が出来たばかりで、母親はその運営に忙しくレンの子育てにほとんど参加出来なかった。
そのため、レンの世話はほとんど父親がしてくれた。
学校が終わるとレンは家ではなく店に行き、そこで父が入れたカフェオレを飲みながら勉強やその日あった出来事を父や店の客に話す。
店が終わったら、一緒に店の掃除をして家に戻り、施設の方へ働いている母親のために食事を作り、食事を食べるがてら施設で他の子供と一緒に食事をする生活。
穏やかで楽しい記憶だが、施設の規模が大きくなるにつれ、受け入れる子供も多くなり、父も施設を手伝うようになり店より施設にいることが多くなった。
それが週に何度もになり、父も母の施設を本格的に手伝うため、店は閉店することになったのだ。
店を閉めることは父親も納得していたとはいえ、心残りもあったのだろう。
同じ店舗で店をやりたいと言ったレンに父親は嬉しそうに歓迎してくれ、その時に家具や器具のなどの援助をしてくれたのだ。
「ですから、あまり内装は変えたくなくて。あのままがいいんです」
「だったら、俺は今のままがいい」
「ガラン?」
「……」
レンの話の途中から喋らなくなったガランは飲んでいたワインを一口で飲みきる。
その時の顔があの本で見たあどけない顔を彷彿とさせるが、それは直ぐに収まり、気まずそうに目を逸らしたガランは顔を赤くしながら吐き捨てるように言った。
「わりぃ。少し、酔いすぎたから寝る」
そう言って席を立ったガランがレンの横をすり抜けた時、あの本が入っている棚を撫ぜたのをレンは見逃さなかった。
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