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プレゼント選び

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 レンの運転で向かった先は待ち合わせから車で10分ほどの場所にあるショッピングモールだった。
 大小様々なショップが立ち並ぶここは子供向け玩具も豊富に取り揃えており、子供も喜ぶプレゼントの品も豊富にある便利な場所だ。
 何度かここに買い出しに来たことのあるレンはまっすぐにぬいぐるみが売られている店へと向かう。
 その店にある高く積み上げられているぬいぐるみたちの中、レンは1つのぬいぐるみを手に取った。

「これ、どう思いますか?」
「もっと明るい方がいいと思う」
「そうですか……」

 レンは残念な顔をしながら手を向き直し、ぬいぐるみを自分の顔に向けた。
 ガランに見せたのは黒猫のぬいぐるみだった。黒い毛皮の中にあるキラキラした赤い目がレンにはかわいいと思ったが、あまりよい選択ではなかったか。
 難しい顔でぬいぐるみの山を見つめるレンにガランは山の上あたりにあるぬいぐるみを指さす。

「白いオオカミのやつはどうだ?」
「あれは犬じゃないですか? 女の子なので、かわいいのがいいかもしれません」
「持ってるその黒豹もかわいくないと思うがな」
「……そう、でしょうか」

 ガランはそういいながら、高く積み上げられているぬいぐるみの中からピンクのユニコーンのぬいぐるみを持った。

「ほら、これならどうだ?」
「可愛すぎではありませんか?」
「さっき可愛いのがいいって言ってたのはお前だろ」
「……でも、あまり可愛すぎると嫌がるかも」

 レンの不安げな言葉にガランは苦笑しつつ、じゃあこれはどうだとさまざまなぬいぐるみを見せ続ける。
 その行為を何回か繰り返したあと、1番最後に見せられたぬいぐるみを手に取った。

「……これなら」
「いいじゃないか?」

 そのぬいぐるみは熊のぬいぐるみだった。
 体はごく普通のブラウンだが、身に着けている服がパッチワーク風のドレスになっており、色とりどりだ。
 これなら、カラフルで子供も喜ぶだろう。服も脱ぎ着ができるもので、裁縫が得意なエイダに頼めばもう数種類のドレスも作ってくれるかもしれない。
 これを渡すのはもう少し後になるが、レンはその子が渡して喜ぶ未来を想像し、思わず笑みが浮かんだ。

「なにニヤニヤしてるんだ? 」
「な、なんでもありません! これ、買ってきます」

 ラッピングは後で自分で行おう。
 渡す子供が喜びそうなラッピングを何個か考える。ならば必要なリボンや袋は何が必要か。あれやこれやと考えつつ、レンは店員に会計を頼む。

「ありがとうございました」

 店員の元気な声を背に受けながら、レンは会計を待っていたガランの下へ戻る。

「お待たせしました」
「もういいのか?」
「はい、大丈夫です。プレゼント、喜んでくれるといいんですが」
「お前の選んだ品なら大丈夫だろ」
「そうでしょうか……、こういうの、自信が無くて」
「大丈夫だって」

 さんざん悩んだというのにまだあれやこれやと言うのかとガランは笑うが、レンは妥協ができない。
 誕生日というのは一年に一度だ。だからこそ、良い誕生日は一生に一度の思い出になる。
 そのため、プレゼントはいつも店で店員を困らすほど悩んでしまう。今回はガランのおかげで早く済むことが出来た。

「俺は付き添っただけだし……、なあ、これからどうする?」
「え、えっと……」
「いくか?」

 ガランの言葉にレンは詰まる。
 これから。
 ガランはそのままあのホテルに行くか、家に帰るかどうするのかと聞いているのだ。
 いつもなら、レンはホテルに行っていただろう。そこで、体を重ねる。
 だが、ガランの本当の年齢がわかった以上、行くのは良く無い。
 ガランは危険な存在だ。レンの不用意な行為が両親ひいては子供たちに危険が及ぶ。
 本来はこのまま帰るのが正解なのだ。
 だから、レンは帰ると言おうとした。
 だが、脳裏にケビンの言葉が再生される。

『君がよければあの子とこのまま関係を続けてほしい』

「……ッ」
「レン?」
「な、なんでもありません」

 なんで帰ると言う前にあのケビンの言葉が思い浮かぶのだろう。
 ダメだ。このまま帰ると言わなくては。そう心にきめガランの方を見ると、ガランのスーツの時とはまた違う美しいガランの顔が目に入る。
 それがレンに真っ直ぐな愛をくれることをレンはもう既に知っている。
 だが、年齢が15であることも、知っている。

『君だけはせめて、あの子のことを理解してあげてほしい。助けて、あげて欲しい』

 ケビンの声が再度脳裏に響いた。
 ダメなのに、レンの手は勝手にガランの手を取ってしまった。
 一回り大きい手。レンの手は同世代よりも少し小さいから、なおさら大きく感じる。
 この手がまだ15だなんて信じられない。もっと成長するのかと思うともはや恐ろしさも感じる。
 だが、それを見てみたい。でも、ダメだ。ガランと関係を切らなければ。
 いうのだ。関係を切るために考えてきたセリフを。
 だが――。

「ぼ、僕の車で行くことになるのには構いませんか? 手入れはしてますが、あなたの乗る車とは大違いですが」
「……ああ、構わない」
 
 ガランの顔は嬉しそうにしているが、その裏でレンは自分の弱さを嘆いていた。
 自分は馬鹿だ。
 そう自分を罵倒しながら、レンはガランと共に車に向かった。
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