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話し合い
しおりを挟む異様な雰囲気の中、トオルとユウヤは二人で話し合いをした。
これからどうするか、どうしたいか。
それは答えのでないものではあったが、リクの現状を聞く限り少なくともユウヤの家にいるのはよくない、というのは二人の共通の認識であった。
「俺の家もセキュリティは普通の家だし。リクがもし何かしたら、俺の親も危ない。やっぱり、ここにいた方がいいと思う」
「……」
嫌そうに顔を歪めるユウヤはしばらく悩んでいたものの、ようやくトオルの意見に頷いた。
ユウヤだってわかっているのだ。今が緊急事態であることに。
いくら病院の件を知らないからといってもユウヤとトオルは祭りの時にリクの狂った所を見ている。
リクは、あんな場所で行為をする人間でも、力任せに見える場所にけがを負わせる人間でもない。
「2人には、ここにいるって言おう。もし俺らに何かしたら問答無用で親とかに言うって言えば、手は出てこない。幸い、証拠は沢山あるんだからさ」
今はトオルが使っているユウヤの携帯には、アリユキなどから送られた卑猥な画像やメールが沢山ある。
それを見せればひとまず大人は話を聞いてくれる。3人がいくら優等生でも言い逃れはできないだろう。
「それでいい?」
「……」
トオルの提案にユウヤは渋々、頷いた。
そのまま再度シュウ達を呼びつけ、トオルはシュウとアリユキに言った。
「シュウ達の話だけど、やっぱり、俺らもここにいるべきだと思う」
「……ああ」
「だけど、もう俺らには触れないでほしい。顔も、なるべく見せないで」
「食事はどうする?」
「できれば、出前とか、取ってほしい」
「わかった」
「これを破ったら、俺らはシュウがやってきたことを、親とか、先生に言う」
「なっ――!」
反応したのはアリユキだった。
この事が公になれば、シュウ達はただではいられない。特に、学校きっての優等生のシュウのイメージは崩落する。
アリユキはそれを何よりも恐れているのだろう。トオル達に対し立場を忘れて睨みつけている。
「なんで! お前らを殴ったのは――」
「命令したのはシュウだろ」
「ッーー!」
トオルの言葉にアリユキの言葉は詰まる。
言い返せず黙るアリユキにシュウは冷静に言う。
「別に、構わない。俺らはお前らに手出しはしないから。それに、もう遅かれ早かれ俺らの事はバレる」
「はっ? バレるって――」
「リクの親から、連絡が来た」
シュウの言葉に反応したのはアリユキだった。
トオルとユウヤも目を開き、互いの顔を見合わせる。
「連絡って?」
「リクが、家に帰っていないとのことだ。塾にもいない」
「えっ……!」
「俺らが、リクの病院にけが人を運んできたことも、リクの親は知っていた。何があったか、聞かれた」
「……ッ!!」
アリユキの目が大きく見開かれた。
そのまま、足の力が無くなり膝から崩れ落ちる姿をユウヤは感情なく見つめている。
けが人。それは、トオルの事だろう。
病院で目が覚めた時、医者に何があったのかを詳しく聞かれたのを思い出す。
その時は必死にごまかし、納得してもらえたと思ったのだが、やはり医者の目から見ればトオルが暴行を日常的に受けていたのがわかるのだろう。
「じゃあ、やばいじゃん。リク」
トオルの呟きを返す者はいなかった。
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