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アラート音
しおりを挟むリクが昨日、戻ることはなかった。
トオル達は知らないが塾の予定があったらしい。雨が降ってからも戻る気配がなかったのでトオルとユウヤは家に帰ることを許された。
アリユキに殴られた痣はまだ残っているが、ユウヤが適切に処理をしてくれたおかげで今は痛くない。
問題はユウヤだ。トオルがアリユキに殴られている間、ユウヤはずっと青ざめ、また過呼吸になるのではという状態にいた。
終わった時には落ち着きを取り戻したものの、やはりあの3人がいる場はユウヤにとって恐怖そのものなのだ。
やはりユウヤの負担を考えると、やはりリクの言う通り体を元に戻るかユウヤを参加させないようにするしかない。
現状、後者が現実味があるが――、果たして3人が納得するだろうか?
「トオル、何考え事してるのさ」
「ユウヤのこと」
「……あっそ」
ユウヤはそういってそっぽ向く。
なにかユウヤの不快に思うことを口走ったのかと思ったが、心当たりはない。
もしかして考え事をしてユウヤの話を聞き漏らしてしまったのだろうか
「えっと、ユウヤごめん」
「何が?」
「俺、ユウヤの話聞けてなかったかも」
「……トオルって本当コミュ障だよね」
「え、なんで!?」
ユウヤは少しだけ笑いながら言う。
なんで笑ったのか、どこがコミュ障なのかをユウヤに聞いてもユウヤはトオルをからかうようにして言わなかった。
「お、教えてくれたっていいだろ!」
「いいじゃん。それがトオルだよ」
「コミュ障は言われて嬉しくないよ!」
そう言い合いながらトオルとユウヤは道を歩いた。
昨日、リクに言われたトオルの事故現場の方に向かっているのだが、次第にその道が賑やかになっていく。
普段はこんな人通りのある道では無いのに、どうしたのだろうか。
不思議に思いながら歩いて行くと、集合時間よりも早い時間ながらシュウ、リク、アリユキの3人は既に集合場所にいた。
3人はなにやら言い争っている。主にリクとアリユキだが。
「……」
嫌な予感がする。
ここ最近、といってもトオルとユウヤの入れ替わりがわかった辺りから、リクの様子がおかしい。
昨日は普段はやらない暴力もやってきた。
そんなリクが機嫌が悪い。トオルの頭の中の警鐘音がガンガンと響く。
「……トオル」
不安げなユウヤのを元気づけるかのようにトオルは手を握る。
さすがのリクも人通りのあるここではしないと自分に言い聞かせ、トオル達は3人の方へむかった。
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