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次の日
しおりを挟むユウヤは今日、午後から学校にくるらしい。足のリハビリもあるので暫くは午前だけ、午後だけの登校をしばらくはするのだという。
昼休み。いつものようにユウヤであるトオルの周りには人が集まる。午後の授業のことも考えると、ユウヤがそろそろ来る時間だ。
ユウヤの事を考え、あまりシュウ達3人は近づけないほうが良いことをわかってはいるものの、トオルには何とかできる程の力はない。
だから、取り巻きたちの話を終わるまで来ないで欲しいと思ったが、そう思ったと同時にユウヤは教室に姿を現した。
教室に訪れたユウヤの顔が硬直する。トオルの周りにはシュウ、リク、アリユキの姿もあるのだから当たり前だ。
トオルは椅子から立ち上がり、ユウヤの机の椅子を引き、ユウヤが座りやすいようにする。
「ユウーー、瀬名君、はい」
さりげなくユウヤの席にいる取り巻き達をどかし、座りやすいように椅子を引いた。
「あ、ありがとう」
トオルが引いた椅子にユウヤは座る。
明らかにユウヤの動きは固まっているが、談笑をしていた取り巻き達は気にする素振りはない。
念の為シュウ達を見るが様子に変わりはない。この行為をみて何か特別に殴られる回数が増えることはないだろう。
「ユウヤやさしー」
賑やかしをするアリユキが茶化すようにいうと隣のユウヤの肩がびくりと震えた。
他のシュウ、リクの二人が不審に思わないように、トオルはなるべく自然に振る舞う。
「中村先生に頼まれてて。隣だから、手を貸してやれって」
「ふーん。なあ、瀬名。トラックに吹っ飛ばされたって本当?」
「えっ……、と」
アリユキに聞かれ、ユウヤは言葉に詰まる。
急にアリユキに話しかけられ、頭が真っ白になってしまったの。
無理もない。だが、ここできちんと答えなければ不審がられてしまうとユウヤもわかったのだろう。たどたどしい口調でどうにか答える。
「……ごめん。目が覚めたら、病院で」
「目が覚めたら病院って、漫画みたいだな」
取り巻きの一人が笑いながら言った。
ユウヤは必死に合わせてぎこちないながら笑う。
「だ、だからよく覚えていなくて……、ごめん」
「撥ねたトラックはどうなった?」
今度はシュウが聞く。
ユウヤの顔がさらに強張るのをトオルは横目で心配げに見つめた。
「トラックなら、逃げたんだけど、今は捕まってるって」
「ひき逃げかよ! 本当に災難だな」
驚いたようにアリユキが声を上げる。
他の話を聞いていた取り巻きも同じように騒ぐのを、ユウヤは下手に貼り付けた笑みを浮かべながら聞いていた。
もう2,3質問がくると思っていたところに、ちょうど授業のチャイムがなる。
シュウ達が自分たちの席に戻っていったのを確認したあと、トオルとユウヤは同時に息を吐いた。
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