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金曜 R-18
しおりを挟むよくも悪くも変わっていない最悪な日々を過ごしていても時間は平等に進んでいく。
今日は金曜日。授業も終わり、あとはホームルームをすれば学校は終わる。担任である中村からの形式ばった連絡事項を聞きながら、この後いつも通り行われるであろう行為にトオルは身を固くしながら黙って机に座って聞いていた。
目の前で喋る中村は、あれ以来定期的にトオルを呼び出し話をしようとしている。
しかし、トオルがそれに答えることはなく、結局、中村の世間話をただ聞くだけの時間になる。その間、シュウたち3人は教室でトオルを待ち、それが長ければ長いほど何を話したのかなどの詰問が待っている。
それにうまく答えられないと、そのあと待っている暴力がさらにひどくなるのだ。
仮にうまく答えられたとしても3人からの疑いの目つきはやむことはない。トオルは一刻も早くこの正義感溢れる熱血教師の中村が諦めることを望んでいた。
「学校からの連絡は以上だ。あまり遊びすぎるんじゃないぞ!」
中村の言葉に幾人の生徒が返事をする。
トオルは口うるさい教師だと思っている中村だが、生徒からは人気があり、特に女子は何かと理由をつけて中村と話す姿をよく見かける。
決して悪い教師ではない。それでも、今のトオルには中村に助けを呼ぶのは難しい。
「そういえば、来週、瀬名が少しだけ学校に戻ってくる。午後の授業だけ受けて帰るが、まだ松葉杖をついているらしい。困ってやっていたら協力してくれ! おい、桐島どうした?」
立ち上がったトオルに、中村が声をかける。
突然の事にクラスメイトの視線がトオルに集まる。
瀬名は、トオルの名字だ。
瀬名透。
その名前が今、中村の口から出たのだ。
「せ、先生……、瀬名って……」
「ん? ああ、桐島は確かその日に休んでいたな。事故に遭ってな。しばらく入院していたんだ」
「じ、事故……!?」
ありえない。
自分は、トオルは死んだのだ。
トラックに撥ねられ、全身から血が出て、死んだのだ、あれで生きているとは到底思えない。
「い、生きてい、る……?」
「おい、ユウヤ。どうしたんだよ?」
後ろの席にいるアリユキがトオルに声をかける。
そこでようやく自分がクラスメイト前で我を忘れていたことに気が付き、慌てて座り直す。
その様子を見て、中村は顔に疑問を浮かべつつもホールルームを終わらせ、学校は終わった。
■■
トオルが、自分が生きている。
思いもよらなかった自体にトオルの頭はそれしか考えられなかった。
いつも通りシュウの命令でアリユキに殴られても、リクに酷く扱われようと頭のどこかには来週登校する自分のことで頭がいっぱいだ。
そのせいか、いつもよりは幾分心が楽でいることが出来た。
「ユウヤ~、何考え事してんの」
アリユキの声がトオルに降りかかる。
現実に戻ったトオルは一生懸命アリユキの陰茎を舐めた。
時折髪を掴まれ頭を揺らされるのに耐えながら、トオルはそろそろ射精するであろうアリユキの陰茎を必死で舐める。
その後ろでシュウとリクが離れてトオルを見ている。2人は先に行為を終わらせた。ひとまず本日は終わりだろう。
「そういや、帰りのホームルームのやつ、なんだったの?」
「んっ……っ」
3人の中で比較的単純なアリユキならごまかせるだろうと、トオルは一生懸命舐めるふりをして、聞かないふりをした。
だが、今回ばかりは逃げられず、アリユキに頭を掴まれ、顔を無理やりあげられる。
髪が抜ける痛みに顔を歪む。
「ユウヤ」
「……ッ、そ、その……死んでいるのかと思って」
「はあ? 死んだ?」
アリユキの目が大きく開く。
そのトオルの発言はアリユキにとってよほど驚いたのか、しばらく沈黙の後、掴んでいた髪を離す。
何か気に障ることをしてしまったのかと恐る恐るアリユキの顔を見ると、よほどトオルの発言が面白かったのか、ケラケラと笑い出す。
「何言ってんだよ。それだったら花くらい置くだろ」
「ご、ごめん……、その、目立たないやつ、だったから……」
「ひでー。確かに瀬名は目立たないやつだったけどさ」
自分で自分のことを目立たないやつ、というのは少々悲しかったが、どうにかやり込めたと内心ほっとする。
月曜日、自分が学校に来る。
どうすべきか、トオルの中で考え続けていた。
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