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暴力

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「ウッ……!!」

 腹を勢いよく蹴られ、息ができないほどの痛みが襲う。
 芋虫のように縮こまるトオルをアリユキの足が何度も蹴り続ける。

「ガッ、アッ! ツ!」

 きっちり15回蹴られた。
 痛くて苦しい。
 そんなトオルをみて、アリユキはひと仕事終えたとばかりに額に浮かんだ汗を気持ちよさそうに拭った。
 
「ユウヤ。俺らに何か言うことない?」
「ハッ……、アッ、な、なにが…...、ガッ!」

 再度強く腹を蹴られ、トオルの口からは潰れたカエルのような汚い声がなる。
 それをアリユキは可笑しそうに声を上げて笑い、リクは興味無さそうに、シュウは口だけ笑みを見せる。
 三者三様の反応にトオルは純粋な恐怖を覚えた。
 人が人を殴る。
 実際に心の底から殴れ、喜びを見出す人間などそうそういないだろう。
 だが、目の前の3人はまさにそちらの部類なのだとトオルは実感し、いまだ痛む腹を抑えつつ這った。

「逃げるな」
「ぐっ……!」

 リクに背中を勢いよく踏まれたせいで潰れたカエルのような声が出た。
 それを愉快だと思う暇もなく、トオルはリクの足からなんとか逃れようと体をバタバタを動かす。

「虫みたいだな、かわいい~」
「気持ち悪いの間違いじゃないか?」

 アリユキとリクのやり取りを気にする暇もなかった。
 訳の分からないこの状況から抜け出したいと体を力の限り動かす。
 
「アリユキ、もう5回だ」
「はーい」

 シュウの淡々とした声とアリユキの軽い声の後に来た腹を蹴られる衝撃にトオルは息を詰まらせた。
先程よりも重い蹴りにトオルはなすすべもない。

「ウグッ、ハァッ、ハッ、や、やめて、やめ」
「じゃあユウヤ、俺らに言うこと、分かるな?」

アリユキの言葉を聴きながら、リクのトオルを踏む足がどかれる。
だが、3人になにを言えばいいのか分からず、トオルは混乱した頭で必死に考える。
3人に言うこと。
トオルは必死に頭をフル回転させ、3人の前で土下座をした。

「ご、ごめんなさい……!」
「何が~?」
「き、昨日、休んだ、こと……」

もう暴力は嫌だとトオルは頭を床にこすり付ける。
3人とトオルの間に嫌な沈黙が走る。
この家にトオルたちが来て、まだ30分も経っていない。それなのに、トオルと3人の間に越えられない従属関係ができてしまった。
それを自覚してしまった今、プライドを捨て3人にどうしか許してもらおうと懇願する。

「へぇ 」
「……ふん」
「……」

トオルの謝罪を聞いた後、3人は各々反応を見せた。
トオルは少し安堵したが、それも一瞬のこと。
次にくるであろう痛みに耐えようと目をつぶる。
しかし、いつまで経ってもその衝撃は来なかった。
不思議に思い恐る恐る顔を上げると、真ん中にいたリクと目が合う。
 冷たくトオルを同等の存在だと思っていないような冷酷な視線に、トオルは思わず身震いをした。

「ユウヤ」
「は、はい」
「ベッドに行け」
 
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