上 下
6 / 20

アリユキ

しおりを挟む

「随分早いんだな」
「あ、有田、君……」
「はぁ?」

 有田、と呼ばれた生徒は眉間にしわを寄せる。
 不機嫌そうに眉をしかめた様子をみて、今は自分がユウヤということを思い出し、すぐさま言葉を直す。

「アリユキ……」
「昨日、どうしたんだよ。俺らに何も言わずに休むとか」

 アリユキはユウヤの取り巻きの一人だ。
 ユウヤを囲むグループの中で賑やかしを担当しており、場の雰囲気を和ませてくれる。
 だが、そんな明るいクラスメイトのはずのアリユキが、こんな朝早い時間に待っていたのだ。しかも表情も何やら不機嫌そうだ。こんな姿見たことがない。
 もしや、ユウヤは昨日何かアリユキに約束していたのだろうか。
 昨日、ユウヤの部屋を物色した時の記憶を思い出しながら、トオルは目の前のアリユキに何を言おうかと考える。
 それをアリユキは不審に思ったようで、訝しげにトオルを見る。
 
「ユウヤ?」
「ご、ごめん、昨日、体調悪くて」
「それでも、連絡するくらいはできるだろ?」
「えっと……、パスワードが、分からなくて」
「はあ?」
「いや、あの、スマホの」

 あれ、折り畳みの携帯はガラケーっていうんだっけか、とトオルは頭の片隅で思いつつ、もう片隅でやはりこの言い訳は苦しかった、と思った。
 いくら何でも自分の携帯のパスワードが分からないから友人に連絡を取れなかったなどおかしい。
 だが、自分はユウヤではなくトオルなのだという摩訶不思議な理由を言う訳にもいかず、トオルは黙り込む。
 そんなトオルを見て埒が明かないと感じたのか、アリユキは大きなため息をついた。
 それはアリユキ自身から漏れ出たというよりも明らかに目の前のトオルを威圧するためだけのあからさまなふるまいだった。ただ1日連絡を返さないだけで、そこまでの態度をとられることの意味がわからずトオルは身を固くさせた。

「……まあいっか。行こうぜ、あいつら待たしてるんだ」
「えっ、あっ……!」

 アリユキに手首を掴まれ、トオルは引っ張られるようにして歩き出す。
 力はかなり強い。振り払うことが出来ない。このまま行けばトオルの家に行けなくなってしまう。

「ちょ、ちょっと……、有――、アリユキ!」

 トオルがいくら止めようとしてもアリユキの力は止まらず、そのまま引っ張られるように連れてかれる。
 連れてこられた空き地には、2人の男子生徒がトオルたちのこと待っていた。
 二人はトオルとアリユキの姿をみて、顔を上げる。
 そのうちの一人が読んでいた本を閉じながら、少しいらだった声で言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陵辱クラブ♣️

るーな
BL
R-18要素を多分に含みます。 陵辱短編ものでエロ要素満載です。 救いなんて一切ありません。 苦手な方はご注意下さい。 非合法な【陵辱クラブ♣️】にて、 月一で開かれるショー。 そこには、欲望を滾せた男たちの秘密のショーが繰り広げられる。 今宵も、哀れな生け贄が捧げられた。

叔父さんと一緒♡

らーゆ
BL
叔父とショタ甥がヤッてるだけ。ガチのヤツなので苦手なひとは回避推奨。

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

ねねこ
BL
20歳の男がご主人様に飼われペットとなり、体を開発されまくって、複数の男達に調教される話です。 複数表現あり

【エロ好き集まれ】【R18】調教モノ・責めモノ・SMモノ 短編集

天災
BL
 BLのエロ好きの皆さま方のためのものです。 ※R18 ※エロあり ※調教あり ※責めあり ※SMあり

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

BL性癖詰め合わせ短編集

紅音
BL
とにかくエロいをモットーに書いています。 毎話エッチなことしかしてません。 日常的なことは挟むかもしれませんが多分ほぼほぼエッチなことしかしてません。 一応1話完結型ですが、同じキャラクターが別の話に出てきたりすることがあります。 誰かの地雷とか踏み抜くような話があったら誠に申し訳ございませんがお逃げください。 とにかくエロいをモットーに書いています。(大事だから2回言った。)

身体検査が恥ずかしすぎる

Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。 しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。 ※注意:エロです

男の子の雌化♡

クレアンの物書き
BL
いろんな男の子達が従順なメス男子に変わっちゃうお話です!

処理中です...