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アリユキ
しおりを挟む「随分早いんだな」
「あ、有田、君……」
「はぁ?」
有田、と呼ばれた生徒は眉間にしわを寄せる。
不機嫌そうに眉をしかめた様子をみて、今は自分がユウヤということを思い出し、すぐさま言葉を直す。
「アリユキ……」
「昨日、どうしたんだよ。俺らに何も言わずに休むとか」
アリユキはユウヤの取り巻きの一人だ。
ユウヤを囲むグループの中で賑やかしを担当しており、場の雰囲気を和ませてくれる。
だが、そんな明るいクラスメイトのはずのアリユキが、こんな朝早い時間に待っていたのだ。しかも表情も何やら不機嫌そうだ。こんな姿見たことがない。
もしや、ユウヤは昨日何かアリユキに約束していたのだろうか。
昨日、ユウヤの部屋を物色した時の記憶を思い出しながら、トオルは目の前のアリユキに何を言おうかと考える。
それをアリユキは不審に思ったようで、訝しげにトオルを見る。
「ユウヤ?」
「ご、ごめん、昨日、体調悪くて」
「それでも、連絡するくらいはできるだろ?」
「えっと……、パスワードが、分からなくて」
「はあ?」
「いや、あの、スマホの」
あれ、折り畳みの携帯はガラケーっていうんだっけか、とトオルは頭の片隅で思いつつ、もう片隅でやはりこの言い訳は苦しかった、と思った。
いくら何でも自分の携帯のパスワードが分からないから友人に連絡を取れなかったなどおかしい。
だが、自分はユウヤではなくトオルなのだという摩訶不思議な理由を言う訳にもいかず、トオルは黙り込む。
そんなトオルを見て埒が明かないと感じたのか、アリユキは大きなため息をついた。
それはアリユキ自身から漏れ出たというよりも明らかに目の前のトオルを威圧するためだけのあからさまなふるまいだった。ただ1日連絡を返さないだけで、そこまでの態度をとられることの意味がわからずトオルは身を固くさせた。
「……まあいっか。行こうぜ、あいつら待たしてるんだ」
「えっ、あっ……!」
アリユキに手首を掴まれ、トオルは引っ張られるようにして歩き出す。
力はかなり強い。振り払うことが出来ない。このまま行けばトオルの家に行けなくなってしまう。
「ちょ、ちょっと……、有――、アリユキ!」
トオルがいくら止めようとしてもアリユキの力は止まらず、そのまま引っ張られるように連れてかれる。
連れてこられた空き地には、2人の男子生徒がトオルたちのこと待っていた。
二人はトオルとアリユキの姿をみて、顔を上げる。
そのうちの一人が読んでいた本を閉じながら、少しいらだった声で言った。
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