2 / 2
2
しおりを挟む
ワムナール・ガリバーの名を知らないダンサーなんてダンサーと名乗る資格はない。
幼いころから貴族のたしなみとして始めたダンスで才能を開花させ、世界の中でワムナールのダンス技術に勝てるものなどどこを探したっていない。
15でサラ・アルバリトとダンスパートナーを組み、美しい男女から織りなす世界最高のダンス技術は衰えることを知らず世界のイギリスを牽引する最高のダンサーだった。
それが今、ロイの前にいる。
「よろしく」
ロイはワムナールの美しい手をみた。
汚れることを知らない艶やかな手がロイのどんなに洗っても汚れ切っている手が汚してしまいそうで、握手すらできなかった。
なぜ、世界中を飛び回っているはずのワムナールがこのホールにいるのかというと、彼のダンスパートナーであるサラが練習中の事故でしばらくダンスができないということで、ワムナールはこのホールでサラの怪我が治る間働くことになったらしい。
確かにこのホールは富裕層の淑女が集まる格式だからホテルではあるが、それでもワムナールのする仕事ではないだろう。
「君、意外と失礼なんだね」
握手をしない様子のロイに呆れたようにワムナールは言った。
違う、と言いたかったが口を開き同じ空気を共有するだけでワムナールが汚れてしまいそうで、ロイはそのままその場を去った。
ーーーーーーーーーーーー
「ワムナール、すまない。彼には俺がよく言っておく」
「オーナー、俺は気にしないよ」
いくらこのホールの一番のダンサーと言っても育ちはよくない。
いや、ワムナールに勝てる人間などそう現れないだろう。
ワムナールもこんな雑多としたホールに長くいるつもりはない。ダンスパートナーのサラの怪我が完治しだいさっさと辞めるつもりだ。
ダンスを女との金絞りとみているやつらと慣れあう気はワムナールには毛頭なかった。
「オーナー、そろそろ準備をしますので失礼します」
適当な理由を言ってワムナールは支配人室から出た。
タバコの匂いが染みついたこの部屋なんて一時もいたくなかった。
自分用に与えられた準備室に入り準備を行う。
「ロイ・ロッソ…」
ワムナールは先ほどこのホールで一番人気と言っていたロイの顔を思い浮かべた。
確かに顔は整っており、黒髪とややブルーの瞳はきらめいていてまるで星のようだった。
その顔がワムナールの前では無表情でただ棒のように立っている姿はそれだけで様になっていた。
体格もそれなりにある。磨けばいいダンサーになるというのに本当にもったいない。
ーーーーーーーーーーーー
ああ、もったいない。
ロイ・ロッソの体格、手足の長さ。なぜなぜ!!!
「おいロイ・ロッソ」
「………」
「来い!」
「はっ!?」
仕事が終わったロイをワムナールは自分の準備室へと無理やり連れ込んだ。
意味が分からずロイのブルーの瞳は揺れている。
「おい、今から荷物をまとめろ。オーナーにここをやめると言え」
「はっ、なんで…?」
「お前のこの体格、動き、すべて天才的だ。この俺がいうのだから間違いない。今からでも遅くない、ちゃんとしたパートナーと組み教師に習えば俺の次にうまいダンサーになれる」
「ちょっ…」
「さっさと荷物をまとめろ。ああ、それは後でやらせよう、行くぞ」
「ちょっと待て!」
ロイは叫ぶように言った。
はっ、としてワムナールはロイの腕を離した。
服も髪も乱れているロイは頬を紅潮させながらワムナールに怒声を浴びせた。
「なんなんだ、荷物まとめろとかやめろとか…、俺の仕事に口だすんじゃねぇ!」
「こんなタバコや香水にまみれて踊るよりやるべきことがあるからだ」
「俺は知らねぇ!」
「待て!!」
部屋から出ていこうとするロイをワムナールは必死で止めた。
なぜわからない。この俺がここまで言っているのに。
暴れるロイをワムナールは壁に押し付けた。
そのままロイの腕をひねり動かなくする。
「いいか。よく聞け。お前には俺には及ばないが才能がある。ここにいるべきではない」
「なん、の、才能だよ…!」
「わからないのか? いいかよく聞け」
「っ!」
ワムナールはロイの燕尾服の上衣の中に手を入れた。
体のバランスは整っている。腹筋の出来も完璧だ。
「いいか。俺の手をよく感じろ。お前の体は――」
「うるせぇ!」
「アッ!」
固く拘束していたはずなのにうまくワムナールの手から抜け出したロイは振りほどいた反動でワムナールの顔を殴る。
殴られた衝撃で床に倒れたワムナールをロイは顔を赤くして怒鳴った。
「才能とか意味わかんねぇ。この変態が!」
荒々しく出て行ったロイの余韻が消えた後もワムナールは殴られた顔に手を抑えながらロイが出て行った先を眺めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだ、なんだあいつ…」
ロイはワムナールに乱された燕尾服を簡単に直し、同じ建物内の自室に戻った。
ワムナールに触られたあとが熱い。
「……くそっ」
あのワムナールのグリーンの瞳。
それに見つめられたらもう一生抜け出せないきがした。
幼いころから貴族のたしなみとして始めたダンスで才能を開花させ、世界の中でワムナールのダンス技術に勝てるものなどどこを探したっていない。
15でサラ・アルバリトとダンスパートナーを組み、美しい男女から織りなす世界最高のダンス技術は衰えることを知らず世界のイギリスを牽引する最高のダンサーだった。
それが今、ロイの前にいる。
「よろしく」
ロイはワムナールの美しい手をみた。
汚れることを知らない艶やかな手がロイのどんなに洗っても汚れ切っている手が汚してしまいそうで、握手すらできなかった。
なぜ、世界中を飛び回っているはずのワムナールがこのホールにいるのかというと、彼のダンスパートナーであるサラが練習中の事故でしばらくダンスができないということで、ワムナールはこのホールでサラの怪我が治る間働くことになったらしい。
確かにこのホールは富裕層の淑女が集まる格式だからホテルではあるが、それでもワムナールのする仕事ではないだろう。
「君、意外と失礼なんだね」
握手をしない様子のロイに呆れたようにワムナールは言った。
違う、と言いたかったが口を開き同じ空気を共有するだけでワムナールが汚れてしまいそうで、ロイはそのままその場を去った。
ーーーーーーーーーーーー
「ワムナール、すまない。彼には俺がよく言っておく」
「オーナー、俺は気にしないよ」
いくらこのホールの一番のダンサーと言っても育ちはよくない。
いや、ワムナールに勝てる人間などそう現れないだろう。
ワムナールもこんな雑多としたホールに長くいるつもりはない。ダンスパートナーのサラの怪我が完治しだいさっさと辞めるつもりだ。
ダンスを女との金絞りとみているやつらと慣れあう気はワムナールには毛頭なかった。
「オーナー、そろそろ準備をしますので失礼します」
適当な理由を言ってワムナールは支配人室から出た。
タバコの匂いが染みついたこの部屋なんて一時もいたくなかった。
自分用に与えられた準備室に入り準備を行う。
「ロイ・ロッソ…」
ワムナールは先ほどこのホールで一番人気と言っていたロイの顔を思い浮かべた。
確かに顔は整っており、黒髪とややブルーの瞳はきらめいていてまるで星のようだった。
その顔がワムナールの前では無表情でただ棒のように立っている姿はそれだけで様になっていた。
体格もそれなりにある。磨けばいいダンサーになるというのに本当にもったいない。
ーーーーーーーーーーーー
ああ、もったいない。
ロイ・ロッソの体格、手足の長さ。なぜなぜ!!!
「おいロイ・ロッソ」
「………」
「来い!」
「はっ!?」
仕事が終わったロイをワムナールは自分の準備室へと無理やり連れ込んだ。
意味が分からずロイのブルーの瞳は揺れている。
「おい、今から荷物をまとめろ。オーナーにここをやめると言え」
「はっ、なんで…?」
「お前のこの体格、動き、すべて天才的だ。この俺がいうのだから間違いない。今からでも遅くない、ちゃんとしたパートナーと組み教師に習えば俺の次にうまいダンサーになれる」
「ちょっ…」
「さっさと荷物をまとめろ。ああ、それは後でやらせよう、行くぞ」
「ちょっと待て!」
ロイは叫ぶように言った。
はっ、としてワムナールはロイの腕を離した。
服も髪も乱れているロイは頬を紅潮させながらワムナールに怒声を浴びせた。
「なんなんだ、荷物まとめろとかやめろとか…、俺の仕事に口だすんじゃねぇ!」
「こんなタバコや香水にまみれて踊るよりやるべきことがあるからだ」
「俺は知らねぇ!」
「待て!!」
部屋から出ていこうとするロイをワムナールは必死で止めた。
なぜわからない。この俺がここまで言っているのに。
暴れるロイをワムナールは壁に押し付けた。
そのままロイの腕をひねり動かなくする。
「いいか。よく聞け。お前には俺には及ばないが才能がある。ここにいるべきではない」
「なん、の、才能だよ…!」
「わからないのか? いいかよく聞け」
「っ!」
ワムナールはロイの燕尾服の上衣の中に手を入れた。
体のバランスは整っている。腹筋の出来も完璧だ。
「いいか。俺の手をよく感じろ。お前の体は――」
「うるせぇ!」
「アッ!」
固く拘束していたはずなのにうまくワムナールの手から抜け出したロイは振りほどいた反動でワムナールの顔を殴る。
殴られた衝撃で床に倒れたワムナールをロイは顔を赤くして怒鳴った。
「才能とか意味わかんねぇ。この変態が!」
荒々しく出て行ったロイの余韻が消えた後もワムナールは殴られた顔に手を抑えながらロイが出て行った先を眺めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだ、なんだあいつ…」
ロイはワムナールに乱された燕尾服を簡単に直し、同じ建物内の自室に戻った。
ワムナールに触られたあとが熱い。
「……くそっ」
あのワムナールのグリーンの瞳。
それに見つめられたらもう一生抜け出せないきがした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる