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大円団
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「歓迎するぞ。貴族の世界へ」
「……………………」
ルカは自分がこれから待ち受ける貴族の生活にひとしきり震えたあと、髪をぐしゃぐしゃと掻き乱したあと顔を赤くして言い放つ。
「月の半分は故郷に帰らせて貰います!!」
「果たして、貴様の故郷が貴族になった貴様を向かい入れるかな」
「僕の家族たちを舐めないでください!」
そうルカは怒鳴るように言うと、早く部屋に行こうと早歩きで歩き出す。
どうやらからかい過ぎたようだ。明らかに怒っているルカにアランの歩みに合わせてゆっくりと歩くシャオはアランと目を合わせて目線だけで笑い合った。
ある程度歩くと案内された部屋にようやく到着する。
普通に歩くならそう時間はかからないが、ようやくついた。早くアランの足を休ませてやらねば。
「ほら、この部屋だそうです! 開けますよ!」
やけくそになったルカがそう言いながら扉を開く。
そういえば、アランはここに来る時イースに荷物があると言っていた。イースはその荷物もこの部屋に運ばせたと言っていたが、もうあるのだろうか。一体アランはなにをーー。
「……」
子供。
扉を開いた先に子供が1人、床の上に座っていた。
「……は?」
思わず声出してしまったシャオにその子供はびくん、と肩を震わせた。
年は10程だろうか。明らかについさっき着させられたような侍従服を身につけており、それが少年よりも大きいサイズであることやその少年の垢抜けぬ顔をみればその少年が平民だとわかる。
「お、お帰りなさいませ!」
その少年は冷たいであろう床に膝をつき、薄茶の髪を下げていた。
「だ、誰……?」
先程貴族になった憤りを忘れたルカが頭を下げる少年を指さす。
少年は跪いたまま、シャオとルカの視線を一身に向けている。
「マト、顔を上げろ」
呆然としているシャオをよそにアランは足をようやく休められるとシャオから離れ一目散に部屋にある椅子に座る。
アランにマト、と呼ばれた少年は顔をあげた。
髪より少し濃い色の瞳とそばかす顔。まだあどけない顔立ちの少年だ。
マトはアランの方に視線を向ける。明らかにアランに対して特別な感情を持っている視線にシャオは気が気で居られなくなってしまう。
「……誰です? その子」
「マトだ。引き取った」
ルカのもっともな問いにアランは簡潔にそう答える。
アランはなにやら話しているが、シャオの耳にはアランの「引き取った」という言葉だけが残った。
引き取った。つまり、マトはアランのもの、という訳である。つまり、つまり、つまりーーー、
「……主、その子には魔法の才能が?」
震えた声で聞くシャオにアランは今まで思いつかなかった、という顔をした後、懐から魔石を取り出す。
その魔石が昔シャオに対して使っていた魔石というのをシャオは見逃さなかった。
「マト。これを持て」
「は、はい」
マトはアランに投げるように渡された魔石を手に取りそれを握る。
そのマトに渡された魔石が、光り輝いたのをシャオは見逃さなかった。
「……………………」
ルカは自分がこれから待ち受ける貴族の生活にひとしきり震えたあと、髪をぐしゃぐしゃと掻き乱したあと顔を赤くして言い放つ。
「月の半分は故郷に帰らせて貰います!!」
「果たして、貴様の故郷が貴族になった貴様を向かい入れるかな」
「僕の家族たちを舐めないでください!」
そうルカは怒鳴るように言うと、早く部屋に行こうと早歩きで歩き出す。
どうやらからかい過ぎたようだ。明らかに怒っているルカにアランの歩みに合わせてゆっくりと歩くシャオはアランと目を合わせて目線だけで笑い合った。
ある程度歩くと案内された部屋にようやく到着する。
普通に歩くならそう時間はかからないが、ようやくついた。早くアランの足を休ませてやらねば。
「ほら、この部屋だそうです! 開けますよ!」
やけくそになったルカがそう言いながら扉を開く。
そういえば、アランはここに来る時イースに荷物があると言っていた。イースはその荷物もこの部屋に運ばせたと言っていたが、もうあるのだろうか。一体アランはなにをーー。
「……」
子供。
扉を開いた先に子供が1人、床の上に座っていた。
「……は?」
思わず声出してしまったシャオにその子供はびくん、と肩を震わせた。
年は10程だろうか。明らかについさっき着させられたような侍従服を身につけており、それが少年よりも大きいサイズであることやその少年の垢抜けぬ顔をみればその少年が平民だとわかる。
「お、お帰りなさいませ!」
その少年は冷たいであろう床に膝をつき、薄茶の髪を下げていた。
「だ、誰……?」
先程貴族になった憤りを忘れたルカが頭を下げる少年を指さす。
少年は跪いたまま、シャオとルカの視線を一身に向けている。
「マト、顔を上げろ」
呆然としているシャオをよそにアランは足をようやく休められるとシャオから離れ一目散に部屋にある椅子に座る。
アランにマト、と呼ばれた少年は顔をあげた。
髪より少し濃い色の瞳とそばかす顔。まだあどけない顔立ちの少年だ。
マトはアランの方に視線を向ける。明らかにアランに対して特別な感情を持っている視線にシャオは気が気で居られなくなってしまう。
「……誰です? その子」
「マトだ。引き取った」
ルカのもっともな問いにアランは簡潔にそう答える。
アランはなにやら話しているが、シャオの耳にはアランの「引き取った」という言葉だけが残った。
引き取った。つまり、マトはアランのもの、という訳である。つまり、つまり、つまりーーー、
「……主、その子には魔法の才能が?」
震えた声で聞くシャオにアランは今まで思いつかなかった、という顔をした後、懐から魔石を取り出す。
その魔石が昔シャオに対して使っていた魔石というのをシャオは見逃さなかった。
「マト。これを持て」
「は、はい」
マトはアランに投げるように渡された魔石を手に取りそれを握る。
そのマトに渡された魔石が、光り輝いたのをシャオは見逃さなかった。
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