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ルカ
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お願いします、と頭を下げたルカの黒髪を、冷たい鉄格子越しにシャオは見つめる。
体が冷える感覚がした。手が震える。
ああ。でも、我が主の手のほうがもっと冷たかった。
アランは追放され、病にかかり、苦しんだ身だ。それでも今、あんな威厳のある姿をシャオに見せてくれる。
ならば、自分はこの程度どうってことない。
シャオは覚悟を決めたようにルカに向かって口を開いた。
「貴様、貴様のいう故郷は――、本当に、お前の故郷なのか?」
「はっ……?」
シャオの顔は醜悪に笑っていた。
ルカはその顔をみて、初めて会った時の、自分を殺そうとした時を思い出しただろう。
「平民というのは、とても醜いものだ。自らとその家族を守るため、どこまでも非道になれる」
「……そんなの、貴族だって」
「貴族はいいぞ。あの称号があれば、衣食住はすべて保証される。他人からは殴られることもない、侮蔑の視線と陰口すら気にしなければこの世の天国そのものだ。よかったな。お前は貴族になって」
「なにが、言いたいんですか」
ルカの顔に初めて苛立ちのようなものが浮かんだ。
急に言われた言葉の意図にルカは気づいていない。
「一代貴族になった平民の村には、王宮から恩賞がもらえる。それを狙って多くの平民の魔法士が遠征に駆り出された。もらえる額は膨大だ。普通の平民の村ならば、村民全員が3年は働かなくて済むほどの金ーー、だからこそ、多くの平民が王宮にやってくる。故郷に売られることを知らずにな」
「……!」
ルカの目つきがさらに鋭くなったが、シャオは気にせず続ける。
「お前はめでたい奴だな、故郷とやらに利用されていることを知らずに、故郷のためにと馬鹿らしいことを本気で信じている。だが、膨大な金を得た故郷は二度とお前を家族とは思わない。ただの、自分たちに金を運んでくる道具としか見ない。村で病が拡がっている、というのも嘘かもしれん」
「違うッ!」
シャオの言葉をルカが吠えるように叫んだ。
その目にはルカから見たことの無い怒りが見える。
だがルカ程度、さんざん貴族社会でもまれてきたシャオにとっては敵ではない。
「違わない。所詮、平民など私の故郷と同じだ。卑しく、人を人と見ない。醜悪で、どこまでも愚かだ。いや、訂正しよう、貴族も同じだな。皮を剥げば、醜悪な醜い本性が詰まっている」
シャオは牢屋の鉄格子を鷲掴みにした。鉄格子と手錠の金属が鳴る音が牢屋内に響く。
「この世で主だけが高潔な存在だとなんで思わない!? 主だけが、私を救い、私を認めてくださった! 貴様の故郷も同じだ、俺の故郷と同じ、人を搾取し、ごみのように捨てるやつらだ。そんな奴らの――」
『黙れ!!』
脳が鷲掴みされる。
口が動かない。
従属魔法だ。シャオの口は突然閉じられ、それ以上ルカに対して言葉を続けることはできなかった。
「ぐぅ……!」
『膝をつけ』
シャオの膝が床に落ちる。
スープが服に染み込む。嫌な感覚に顔を顰めた。
顔を上げると怒りに震えたルカの姿があった。
「僕の故郷を愚弄することは、許しません、僕の故郷は、貴方と違うんですッ!」
ルカは荒くそう言い放つ。
体が冷える感覚がした。手が震える。
ああ。でも、我が主の手のほうがもっと冷たかった。
アランは追放され、病にかかり、苦しんだ身だ。それでも今、あんな威厳のある姿をシャオに見せてくれる。
ならば、自分はこの程度どうってことない。
シャオは覚悟を決めたようにルカに向かって口を開いた。
「貴様、貴様のいう故郷は――、本当に、お前の故郷なのか?」
「はっ……?」
シャオの顔は醜悪に笑っていた。
ルカはその顔をみて、初めて会った時の、自分を殺そうとした時を思い出しただろう。
「平民というのは、とても醜いものだ。自らとその家族を守るため、どこまでも非道になれる」
「……そんなの、貴族だって」
「貴族はいいぞ。あの称号があれば、衣食住はすべて保証される。他人からは殴られることもない、侮蔑の視線と陰口すら気にしなければこの世の天国そのものだ。よかったな。お前は貴族になって」
「なにが、言いたいんですか」
ルカの顔に初めて苛立ちのようなものが浮かんだ。
急に言われた言葉の意図にルカは気づいていない。
「一代貴族になった平民の村には、王宮から恩賞がもらえる。それを狙って多くの平民の魔法士が遠征に駆り出された。もらえる額は膨大だ。普通の平民の村ならば、村民全員が3年は働かなくて済むほどの金ーー、だからこそ、多くの平民が王宮にやってくる。故郷に売られることを知らずにな」
「……!」
ルカの目つきがさらに鋭くなったが、シャオは気にせず続ける。
「お前はめでたい奴だな、故郷とやらに利用されていることを知らずに、故郷のためにと馬鹿らしいことを本気で信じている。だが、膨大な金を得た故郷は二度とお前を家族とは思わない。ただの、自分たちに金を運んでくる道具としか見ない。村で病が拡がっている、というのも嘘かもしれん」
「違うッ!」
シャオの言葉をルカが吠えるように叫んだ。
その目にはルカから見たことの無い怒りが見える。
だがルカ程度、さんざん貴族社会でもまれてきたシャオにとっては敵ではない。
「違わない。所詮、平民など私の故郷と同じだ。卑しく、人を人と見ない。醜悪で、どこまでも愚かだ。いや、訂正しよう、貴族も同じだな。皮を剥げば、醜悪な醜い本性が詰まっている」
シャオは牢屋の鉄格子を鷲掴みにした。鉄格子と手錠の金属が鳴る音が牢屋内に響く。
「この世で主だけが高潔な存在だとなんで思わない!? 主だけが、私を救い、私を認めてくださった! 貴様の故郷も同じだ、俺の故郷と同じ、人を搾取し、ごみのように捨てるやつらだ。そんな奴らの――」
『黙れ!!』
脳が鷲掴みされる。
口が動かない。
従属魔法だ。シャオの口は突然閉じられ、それ以上ルカに対して言葉を続けることはできなかった。
「ぐぅ……!」
『膝をつけ』
シャオの膝が床に落ちる。
スープが服に染み込む。嫌な感覚に顔を顰めた。
顔を上げると怒りに震えたルカの姿があった。
「僕の故郷を愚弄することは、許しません、僕の故郷は、貴方と違うんですッ!」
ルカは荒くそう言い放つ。
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