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話の本題

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「聞いたことないな……、今までの報告に足についての症状はでているか?」

 シャオに問われた要人たちは顔を見合わせ、代表の1人が首を横にふる。

「いいえ、残念ながら。ですが、アラン様のいらっしゃる環境は土地や人間含め他の罹患者と大きくかけ離れております。しかも、看病したのはシャオです。もしかすると、アラン様を我がものにすべく毒を与えた可能性がーー」
「毒など与えるわけが無いだろう!!」

 あまりにも非道な言葉を言われ、シャオは思わず喋っている要人に怒鳴りつけた。
 怯えだす要人とは違い、イースはわざとらしく、「おお、怖い」とシャオを嘲笑う。
 そのまま視線をルカに向き直した。

「ルカ、シャオに説明は?」
「……しておりません」
「それでこの成果か。君は私の想像を大きく超えた働きをしてくれたな」

 イースはそう言いながら、手に持った瓶を蝋燭の火の明かりに透かすように見つめた。
 少し色味がかかっているこの薬は、シャオがアランの病のために作った薬だ。念のため保存してあった薬は今、イースの手の中の瓶の中に揺れている。
 アランの病が治った今なら必要のないものだ。
 病にかかっていないイースが飲んでも何の効果もない。
 それでも、イースはその薬を大切そうに箱にいれ、鍵をかける。
 シャオにとってはただの薬だ。しかも、今や何の必要もない棚の邪魔になるだけのもの。

 ――なにが、目的だ?

 イースとルカは何が目的なのか、シャオには全くわからない。
 ルカのほうに視線を向けても、ルカは無表情でイースの行動を見ている。
 ルカの胸に下げられた貴族の証である首飾りに彫られた紋章に視線を移すと、そこには一代のみの貴族を表す犬の紋章が彫られていた。
 つまり、ルカは元は平民だったのだろう。平民についての話が間違っていなかったのもそのせいだ。
 その後、王宮魔法士として何らかの成果を上げ、一代貴族としての身分を得た。
 簡単な簡単な話ではあるがシャオからすればその話では納得はできない。

――遠征もしていないのに、どうやって成果を……?

 確かに遠征を繰り返し行ってきた時には作戦に多大な功績を遺した平民の兵士に一代貴族の称号を与えることもあるが、こんな時代、遠征もないのに一代貴族など、前代未聞だ。
 それに――、ルカは故郷をを愛していた。
 話の隙には故郷の話をしだし、部屋には故郷に送ろうとしていた手紙が多数残されていたのを知っている。
 それなのに、わざわざ故郷を捨てて一代貴族など――、故郷の話すら嘘だったということか。
 より、ルカを許せるはずがない。

「……殺す」

 シャオはイースよりもルカに最大級の殺意を込めて睨んでやった。
 少なくとも、シャオはルカへの故郷の思いを評価していた。何かのために自分のすべてを尽くすという点についてはシャオとルカは対象は違えど、同じだと思っていたのだ。
 それを裏切ったというのが許せない。
 しかも、シャオが今無理やり連れてこられている原因はアランから受けた従属魔法によるものだ。
 ルカはアランすらも利用している。これだけでシャオは我慢が出来ない。
 シャオとルカの無言でのやりとりを眺めていたイースが手を叩く。

「じゃあ、説明を一からしなくてはな」

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