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暖炉の火

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「――ッ!」

 シャオは思わず赤面をした。
 シャオの体が今どんな状態なのかぐらい、それをしたアランが気づいていないわけないのだ。
 熱やそう言った類の症状は無いものの、何も知らぬ人間が今のシャオの体を見たら何があったのかと聞いてしまうくらいにはシャオの身体は痣だらけになっている。

「……だ、大丈夫です。痣はいずれ消えますから」
 
痣など、アランに出会う前の3年間は日常茶飯事で出来ていた。
 いずれ薄くなり、無くなることをシャオはこの身をもって知っている。
 
「何もしなければ、な」

 アランの挑発的な顔をしながら服を着ただけでは隠しきれない首に近い所に出来た痣を押した。
 皮膚が弱くなっているだけだろう。少し押すだけでも鈍い痛みがシャオの体に広がると同時に眠る前のあの情事が思い出され、シャオの顔はさらに赤くなる。
アランは楽しんでいる。シャオは震える声で静かにアランに聞いた。

「な、何ゆえ、このようなこと」

昨夜からーー、いや、今思えば1か月前のときからアランはシャオに触れるようになっていた。
こんなこと初めてだ。
王宮にいた頃も、屋敷で2人で暮らしていた時もアランは不必要にシャオに触れるなどということはしなかった。
シャオとアランが体を触れ合うようになったのはこの屋敷に暮らすようになってからである。
従者がシャオしか居ないため、病の時の看病やマッサージをしなくてはいけないからだが、少なくともそれ以外でアランに触れる機会などシャオにはないし、アランもなかったり
それなのに、なぜ今になってアランは触れてくるのか。
そのきっかけに、シャオは心当たりがあった。

「ルカ、ですか?  あやつが、私にこういったことをしろとアラン様に言ったのですか?」

アランのおかしい言動が全て、ルカがこの屋敷に来てから始まったことだ。
それに、ルカのネズミについて書かれた紙の束。あれはまだシャオの部屋に隠しておいているが、それとアランの関係もシャオには分からない。
ルカはアランに何を吹き込んだのか、そのせいでシャオとアランの関係がおかしくなっているのならば、シャオはルカをどうにかしなくてはならない。
そういった気持ちを込めてシャオはアランに聞いた。
アランもそれは伝わっているはずだ。銀の瞳が揺れ、シャオから視線を逸らす。

「あやつは、関係ない」
「で、ですが、アラン様がおかしくなったのは彼が来てからです! 何か言われたのですか?」
「知って、どうする?」
「……」

現状、アランの王族復帰の希望にルカがいるのは変わらない。
今のアランにとってルカは必要な存在だ。
シャオの独断でルカに危害を加える気か、といったふうにアランは聞くが、今のシャオにはここにはいないあの黒い平民の魔法士がどうしても気になってしまう。
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