48 / 109
目覚めの2人
しおりを挟む
ありえない。
アランがシャオを主と呼ぶなど、この世界がひっくり返ってもありえないし、アランのためなら死ぬことすらできるシャオにとってアランの名を呼び捨てで呼ぶなど考えられない。
それはアランの身分が平民でも同じことだ。仮に、シャオを拾ったのが王族ではなく平民のアランであってもシャオは敬愛と忠誠の証として、アランを「主」と呼ぶだろう。
「それに、お前も昔は俺の事を呼び捨てで呼んだことがあるだろう」
「それはッ! わ、私がまだ学の足りてない子供だったからで……、そんな昔の事、思い出したくもありませんッ!」
確かに昔、1度だけだがアランと出会ってすぐの時、目上の人間に対してどう呼べばいいのか分からず、シャオはアランの事を呼び捨てで呼んでしまった。
もちろんその場にいた他の従者に激しい叱責を受け、すぐにアランのことは「主」と呼ぶようになったのだが、呼び捨てで呼ばれたことがその当時のアランにとっては新鮮だったようで、シャオをからかう時にはいつもその話をされのだ。
普段ならばアランが満足する程度に付き合うのだが、今日はそのような余裕もない。
シャオは羞恥で顔を真っ赤に染めながらもアランに抗議の声を浴びせた。
「お願いします! これでは他の者に示しがーー」
「この屋敷には俺とお前しかいないだろう。ルカもいない」
「で、ですが……」
「シャオ、俺を名前で呼べ」
「ッ!」
アランの赤目が濃くなる。従属魔法を使われるのだ。
もう従属魔法は勘弁してくれとシャオは涙目になりながら首を振った。
「お、お許しを……」
「……」
「ア、ア……、アラン……様」
「なんだ?」
「じゅ、従属魔法をーー」
「却下」
「……ッ」
シャオがこんなにも懇願しているというのに、アランはいとも容易くシャオの願いを断った。
「貴様、昨日俺の隣に居たいと言っただろう。名を呼ぶくらいなんだ」
「あれは、ア、アーー、アラン、様の従者としてという意味であって」
「もう、10年も仕えているだろう、それに、ルカだって俺の事を名前で呼ぶ」
「奴は、浅学ですから! それに、ルカだってアランーー、様のことを様とつけて呼んでおります!」
必死に説得を試みるシャオだが、アランは動じない。そもそも主人と従者だ。元からシャオの思い通りになるはずがなかった。
アランはカップをサイドテーブルに置き、シャオの後ろでまとめ、前に垂らした髪に手を伸ばした。
その髪を撫ぜ、耳にかけ、そのまま冷たい手でシャオの頰をなぞった。
体が総毛立つ。せっかく体を冷やしたというのに、シャオの体がまた熱くなる。
アランがシャオを主と呼ぶなど、この世界がひっくり返ってもありえないし、アランのためなら死ぬことすらできるシャオにとってアランの名を呼び捨てで呼ぶなど考えられない。
それはアランの身分が平民でも同じことだ。仮に、シャオを拾ったのが王族ではなく平民のアランであってもシャオは敬愛と忠誠の証として、アランを「主」と呼ぶだろう。
「それに、お前も昔は俺の事を呼び捨てで呼んだことがあるだろう」
「それはッ! わ、私がまだ学の足りてない子供だったからで……、そんな昔の事、思い出したくもありませんッ!」
確かに昔、1度だけだがアランと出会ってすぐの時、目上の人間に対してどう呼べばいいのか分からず、シャオはアランの事を呼び捨てで呼んでしまった。
もちろんその場にいた他の従者に激しい叱責を受け、すぐにアランのことは「主」と呼ぶようになったのだが、呼び捨てで呼ばれたことがその当時のアランにとっては新鮮だったようで、シャオをからかう時にはいつもその話をされのだ。
普段ならばアランが満足する程度に付き合うのだが、今日はそのような余裕もない。
シャオは羞恥で顔を真っ赤に染めながらもアランに抗議の声を浴びせた。
「お願いします! これでは他の者に示しがーー」
「この屋敷には俺とお前しかいないだろう。ルカもいない」
「で、ですが……」
「シャオ、俺を名前で呼べ」
「ッ!」
アランの赤目が濃くなる。従属魔法を使われるのだ。
もう従属魔法は勘弁してくれとシャオは涙目になりながら首を振った。
「お、お許しを……」
「……」
「ア、ア……、アラン……様」
「なんだ?」
「じゅ、従属魔法をーー」
「却下」
「……ッ」
シャオがこんなにも懇願しているというのに、アランはいとも容易くシャオの願いを断った。
「貴様、昨日俺の隣に居たいと言っただろう。名を呼ぶくらいなんだ」
「あれは、ア、アーー、アラン、様の従者としてという意味であって」
「もう、10年も仕えているだろう、それに、ルカだって俺の事を名前で呼ぶ」
「奴は、浅学ですから! それに、ルカだってアランーー、様のことを様とつけて呼んでおります!」
必死に説得を試みるシャオだが、アランは動じない。そもそも主人と従者だ。元からシャオの思い通りになるはずがなかった。
アランはカップをサイドテーブルに置き、シャオの後ろでまとめ、前に垂らした髪に手を伸ばした。
その髪を撫ぜ、耳にかけ、そのまま冷たい手でシャオの頰をなぞった。
体が総毛立つ。せっかく体を冷やしたというのに、シャオの体がまた熱くなる。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
龍神様の神使
石動なつめ
BL
顔にある花の痣のせいで、忌み子として疎まれて育った雪花は、ある日父から龍神の生贄となるように命じられる。
しかし当の龍神は雪花を喰らおうとせず「うちで働け」と連れ帰ってくれる事となった。
そこで雪花は彼の神使である蛇の妖・立待と出会う。彼から優しく接される内に雪花の心の傷は癒えて行き、お互いにだんだんと惹かれ合うのだが――。
※少々際どいかな、という内容・描写のある話につきましては、タイトルに「*」をつけております。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる