上 下
41 / 48

マッサージ

しおりを挟む

「口を開け」
「……」

言われるがまま、シャオは口を開くと乾燥ベリーを口の中に入れられた。
シャオも何度か口にしたことがある、なんの変哲のない村から貰った乾燥ベリーである。
 果実の凝縮された甘さが口の中に広がる。この押し付けがましい甘さがシャオは好きでは無かった。
一瞬毒味の類ではと思ったが、アランはこの乾燥ベリーは何度も口にしているし、なによりシャオがアランに毒を盛るなど万に一つもない。
だがアランは乾燥ベリーをシャオの口に入れ続けている。

ーーな、なにをしたいのだ。

意味のわからぬアランの行動に、内心首を傾げながらシャオは乾燥ベリーを飲み込む。
結局、小皿の乾燥ベリーは全てシャオの口の中に入ってしまった。口の中の水分が全て持ってかれ、口の中がかわいている。
 
「あ、主……?」

戸惑うシャオとは対照的にアランは小皿をサイドテーブルに置き、紅茶の方に視線をを移す。

「いれろ」
「は、はい」
 
短い命令にシャオは、紅茶が入ったポットをカップに傾ける。すぐに紅茶のよい匂いが辺りに漂うが、アランの方に意識がいってしまい、シャオにはそれを楽しむ余裕はなかった。
乾燥ベリーをまた持ってこなくては、次は自分ではなく、アランが食す用にだ。

「あ、主、もう一度、厨房にーー」
「薬を飲め」
「……えっ?」

アランはサイドテーブルに置いてある薬の入ったカップをシャオに渡す。
思わず受けとってしまった薬とアランの顔を交互にシャオは見たが、疑問は解消されない。
しばらくそうしていると、アランの瞳が濃くなりのを見たシャオは従属魔法を使われないよう、慌ててカップの薬を口に含んだ。

ーー苦い……。

口の中に苦味が一気に広がる。
アランが飲むものなのである程度苦味は抑えるようしているが、苦いものは苦い。
病の薬はそこまで苦くないのだが、この足の後遺症のための薬は苦味がどうにも消せなかったのだ。
思わず口を抑えてしまったシャオをアランは観察するような目で見ている。

「どうだ?」
「ど、どうって……、苦い、ということですか?」
「……もうよい」

アランの言いたいことがいまいちよくわからなかった。その答えを深堀することはできず舌に張り付いた苦味は次第に強くなる。
舌にまだ残っている乾燥ベリーの甘さのせいで更に苦さがさらに際立っている。

ーーやはり、改良した方がよいな……。

最初試作した時はこれよりも更に酷い苦味だった。いくらかマシにしたものの、主の足をなんとかせねばと急いで作り雑な味にしてしまった。
これを少なくとも1年はアランに飲ませていたと思うとシャオは悔しい気持ちでいっぱいだった。
 アランが薬を飲みたがらないのもこの苦味が原因だろう。薬をシャオに飲ませたのもこの苦味を分からせるためなのだ。

「……主、薬を改良します、もっと苦味を無くし、主が飲みやすいようにします。そうしたら、また薬を飲んでくれますか?」
「……」

その言葉にアランは呆れた表情を浮かべる。
なにかおかしなことを言ってしまったのだろうか。
カップの紅茶を1口飲んだあと、アランは呟くように言った。
 
「……お前は、わからぬな」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

【完結】素直になれない皇子は四人の夫たちに溺愛される~巨人族貴族の結婚事情

浅葱
BL
【12/20 完結しました】 男しか存在しない世界「ナンシージエ」の物語。 巨人族の皇子である勇志(ヨンジー)は、成人前に「抱かれる身体」をしていると言い渡され、成人してすぐに貴族の四人兄弟に嫁がされた。 皇子でありながら「抱かれる身体」なのだと認定されたショックで、夫たちに抱かれても素直になれない。 そうしている間に妊娠して卵を産んだ後(卵生)、身体が必要以上に疼くようになってしまった。それでも素直になれないまま歳を重ねた。 ある日長いこと結婚しないでいた兄皇子たちが妻を娶ったと聞いた。五個目の卵を産んだ直後、勇志はたまらなくなって兄たちの妻に会いに行く。 そこで兄たちの妻への溺愛ぶりを目の当たりにした。 勇志は兄たちの妻に聞かれるがままに夫たちとの結婚生活を話し、たまには強引にしてくれてもいいのにと愚痴ったら……? すごく妻を甘やかしたかった四人の夫(臣下)×素直になれないけど本当は甘やかされたい妻(皇子)の溺愛物語。 妻の気持ちを知った夫たちはこれ以上ないってぐらい妻をどろどろに溺愛します。 妻が夫たちの愛を受け止めてあっぷあっぷしていますが、本当は甘やかされたいのでラブラブボンバーです(何 ラブラブハッピーエンドです。 中華ファンタジー/受け視点/産卵/溺愛/乳首責め/アナル責め/結腸責め/おもらし(小スカ)/潮吹き/総受け/授乳プレイ/舌フェラ/尿道責め/駅弁 「巨人族の皇子たち四人と、異世界ラブラブ性活にいたるまで」のスピンオフですが、そちらを読んでいなくてもお楽しみいただけます。 天使さまの生態についてfujossyに設定を載せてあります。 「天使さまの愛で方」 外部登録してあります。よろしくですー 表紙のイラストはNEO ZONEさんにお願いしました。向かって左から智明、勇志、智軒です。さすがに五人は画面に入らない(笑) とっても美しく描いていただけて嬉しいです!(自分にご褒美

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

召喚先は腕の中〜異世界の花嫁〜【完結】

クリム
BL
 僕は毒を飲まされ死の淵にいた。思い出すのは優雅なのに野性味のある獣人の血を引くジーンとの出会い。 「私は君を召喚したことを後悔していない。君はどうだい、アキラ?」  実年齢二十歳、製薬会社勤務している僕は、特殊な体質を持つが故発育不全で、十歳程度の姿形のままだ。  ある日僕は、製薬会社に侵入した男ジーンに異世界へ連れて行かれてしまう。僕はジーンに魅了され、ジーンの為にそばにいることに決めた。  天然主人公視点一人称と、それ以外の神視点三人称が、部分的にあります。スパダリ要素です。全体に甘々ですが、主人公への気の毒な程の残酷シーンあります。 このお話は、拙著 『巨人族の花嫁』 『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』 の続作になります。  主人公の一人ジーンは『巨人族の花嫁』主人公タークの高齢出産の果ての子供になります。  重要な世界観として男女共に平等に子を成すため、宿り木に赤ん坊の実がなります。しかし、一部の王国のみ腹実として、男女平等に出産することも可能です。そんなこんなをご理解いただいた上、お楽しみください。 ★なろう完結後、指摘を受けた部分を変更しました。変更に伴い、若干の内容変化が伴います。こちらではpc作品を削除し、新たにこちらで再構成したものをアップしていきます。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

処理中です...