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マッサージ
しおりを挟む「口を開け」
「……」
言われるがまま、シャオは口を開くと乾燥ベリーを口の中に入れられた。
シャオも何度か口にしたことがある、なんの変哲のない村から貰った乾燥ベリーである。
果実の凝縮された甘さが口の中に広がる。この押し付けがましい甘さがシャオは好きでは無かった。
一瞬毒味の類ではと思ったが、アランはこの乾燥ベリーは何度も口にしているし、なによりシャオがアランに毒を盛るなど万に一つもない。
だがアランは乾燥ベリーをシャオの口に入れ続けている。
ーーな、なにをしたいのだ。
意味のわからぬアランの行動に、内心首を傾げながらシャオは乾燥ベリーを飲み込む。
結局、小皿の乾燥ベリーは全てシャオの口の中に入ってしまった。口の中の水分が全て持ってかれ、口の中がかわいている。
「あ、主……?」
戸惑うシャオとは対照的にアランは小皿をサイドテーブルに置き、紅茶の方に視線をを移す。
「いれろ」
「は、はい」
短い命令にシャオは、紅茶が入ったポットをカップに傾ける。すぐに紅茶のよい匂いが辺りに漂うが、アランの方に意識がいってしまい、シャオにはそれを楽しむ余裕はなかった。
乾燥ベリーをまた持ってこなくては、次は自分ではなく、アランが食す用にだ。
「あ、主、もう一度、厨房にーー」
「薬を飲め」
「……えっ?」
アランはサイドテーブルに置いてある薬の入ったカップをシャオに渡す。
思わず受けとってしまった薬とアランの顔を交互にシャオは見たが、疑問は解消されない。
しばらくそうしていると、アランの瞳が濃くなりのを見たシャオは従属魔法を使われないよう、慌ててカップの薬を口に含んだ。
ーー苦い……。
口の中に苦味が一気に広がる。
アランが飲むものなのである程度苦味は抑えるようしているが、苦いものは苦い。
病の薬はそこまで苦くないのだが、この足の後遺症のための薬は苦味がどうにも消せなかったのだ。
思わず口を抑えてしまったシャオをアランは観察するような目で見ている。
「どうだ?」
「ど、どうって……、苦い、ということですか?」
「……もうよい」
アランの言いたいことがいまいちよくわからなかった。その答えを深堀することはできず舌に張り付いた苦味は次第に強くなる。
舌にまだ残っている乾燥ベリーの甘さのせいで更に苦さがさらに際立っている。
ーーやはり、改良した方がよいな……。
最初試作した時はこれよりも更に酷い苦味だった。いくらかマシにしたものの、主の足をなんとかせねばと急いで作り雑な味にしてしまった。
これを少なくとも1年はアランに飲ませていたと思うとシャオは悔しい気持ちでいっぱいだった。
アランが薬を飲みたがらないのもこの苦味が原因だろう。薬をシャオに飲ませたのもこの苦味を分からせるためなのだ。
「……主、薬を改良します、もっと苦味を無くし、主が飲みやすいようにします。そうしたら、また薬を飲んでくれますか?」
「……」
その言葉にアランは呆れた表情を浮かべる。
なにかおかしなことを言ってしまったのだろうか。
カップの紅茶を1口飲んだあと、アランは呟くように言った。
「……お前は、わからぬな」
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