40 / 45
マッサージ
しおりを挟む
シャオの言葉を遮り、アランは身体を起こす。まさかの行動にシャオは慌てながらアランを制す。
「あ、主! これは主のためにも必要なことで」
「もうよいと言っている」
「で、ですが」
アランはシャオの言葉を聞かず寝間着の紐をきつく結び、着直した。
「主、お待ちください! マッサージは全身やらねば意味がなく――」
シャオの説得虚しく、アランは毛布の中に入り体を沈めた。
起きてはいる。だが、シャオの言うことは聞く気がないという意思表示である。
だが、シャオにも従者として譲れないことがある。
背を向けるアランにシャオは必死で説得を試みる。
「主、後ろはすぐに終わらせますから! どうかもう少しだけ辛抱をーー」
『うるさい』
「んッーー!」
脳が鷲掴みされ、口が開かなくなる。
従属魔法だ。口が縫われたかのように閉じられ、開かなくなる。
手でこじ開けようともしてもビクともせず、シャオは涙目になりながらどうか、という視線をこめアランを見つめた。
「……」
涙目で慌てるシャオの様子に苛立ったアランも溜飲が下がったのだろう。
ベッドから起き上がり、シャオの従属魔法を解除する。
『口を開け』
「ッーー!」
アランがそう命じるとシャオの口も開く。
口が開放されたシャオは、ほっとはしたものの、アランはマッサージをされる気はないようで、机のサイドテーブルに置かれた紙とペンと手に取る。
「部屋に戻れ」
「ですが……!」
「寝ていろ。お前病み上がりだろう」
「私の体は大丈夫ですから!」
シャオの決死の訴えに、アランは眉を顰める。
また口を塞がれないよう、シャオは必死に目でアランに訴えかけた。シャオとアランの間に見えないやりとりを視線だけで交わしたあと、アランは諦めた様子でため息をついた。
「薬をもってこい」
「は?」
「茶も煎れてこい」
「……! は、はい!」
なんの事か一瞬分からなかったが、ようやく合点がいった。アランがこの2日間薬を飲んでいなかったことはシャオも把握している。それを飲むと言っているのだ。
本音を言えばマッサージをしたかったのが本音だが、薬を飲んでくれるとなると話は別だ。
飛び出るように部屋から出て、厨房に向かう。
湯瓶の中身がまだ残っていることを確認し、湯瓶を掴み、急ごしらえで茶器に湯を注いだ。
別のカップには薬も用意し、シャオは急ぎ足でアランの部屋へと戻った。
「主、失礼します」
扉を開けると先ほどと変わらない態勢でベッドに横たわるアランの姿が映る。
サイドテーブルに茶を置き、まずは乾燥ベリーを入れた小皿をアランに差し出した。
「……なんだ?」
「薬を飲まれるのですから、食べ物をと思いまして」
「……あぁ」
納得したかのような声を出したアランはその小皿を受け取り、乾燥ベリーを2、3粒摘つまんだ。
その乾燥ベリーをアランは何故か自分の口ではなくシャオの口に持ってくる。
「あ、主! これは主のためにも必要なことで」
「もうよいと言っている」
「で、ですが」
アランはシャオの言葉を聞かず寝間着の紐をきつく結び、着直した。
「主、お待ちください! マッサージは全身やらねば意味がなく――」
シャオの説得虚しく、アランは毛布の中に入り体を沈めた。
起きてはいる。だが、シャオの言うことは聞く気がないという意思表示である。
だが、シャオにも従者として譲れないことがある。
背を向けるアランにシャオは必死で説得を試みる。
「主、後ろはすぐに終わらせますから! どうかもう少しだけ辛抱をーー」
『うるさい』
「んッーー!」
脳が鷲掴みされ、口が開かなくなる。
従属魔法だ。口が縫われたかのように閉じられ、開かなくなる。
手でこじ開けようともしてもビクともせず、シャオは涙目になりながらどうか、という視線をこめアランを見つめた。
「……」
涙目で慌てるシャオの様子に苛立ったアランも溜飲が下がったのだろう。
ベッドから起き上がり、シャオの従属魔法を解除する。
『口を開け』
「ッーー!」
アランがそう命じるとシャオの口も開く。
口が開放されたシャオは、ほっとはしたものの、アランはマッサージをされる気はないようで、机のサイドテーブルに置かれた紙とペンと手に取る。
「部屋に戻れ」
「ですが……!」
「寝ていろ。お前病み上がりだろう」
「私の体は大丈夫ですから!」
シャオの決死の訴えに、アランは眉を顰める。
また口を塞がれないよう、シャオは必死に目でアランに訴えかけた。シャオとアランの間に見えないやりとりを視線だけで交わしたあと、アランは諦めた様子でため息をついた。
「薬をもってこい」
「は?」
「茶も煎れてこい」
「……! は、はい!」
なんの事か一瞬分からなかったが、ようやく合点がいった。アランがこの2日間薬を飲んでいなかったことはシャオも把握している。それを飲むと言っているのだ。
本音を言えばマッサージをしたかったのが本音だが、薬を飲んでくれるとなると話は別だ。
飛び出るように部屋から出て、厨房に向かう。
湯瓶の中身がまだ残っていることを確認し、湯瓶を掴み、急ごしらえで茶器に湯を注いだ。
別のカップには薬も用意し、シャオは急ぎ足でアランの部屋へと戻った。
「主、失礼します」
扉を開けると先ほどと変わらない態勢でベッドに横たわるアランの姿が映る。
サイドテーブルに茶を置き、まずは乾燥ベリーを入れた小皿をアランに差し出した。
「……なんだ?」
「薬を飲まれるのですから、食べ物をと思いまして」
「……あぁ」
納得したかのような声を出したアランはその小皿を受け取り、乾燥ベリーを2、3粒摘つまんだ。
その乾燥ベリーをアランは何故か自分の口ではなくシャオの口に持ってくる。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
悪役令息の死ぬ前に
ゆるり
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる