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マッサージ

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シャオの言葉を遮り、アランは身体を起こす。まさかの行動にシャオは慌てながらアランを制す。

「あ、主! これは主のためにも必要なことで」
「もうよいと言っている」
「で、ですが」

アランはシャオの言葉を聞かず寝間着の紐をきつく結び、着直した。

「主、お待ちください! マッサージは全身やらねば意味がなく――」

シャオの説得虚しく、アランは毛布の中に入り体を沈めた。
起きてはいる。だが、シャオの言うことは聞く気がないという意思表示である。
だが、シャオにも従者として譲れないことがある。
背を向けるアランにシャオは必死で説得を試みる。

「主、後ろはすぐに終わらせますから! どうかもう少しだけ辛抱をーー」
『うるさい』
「んッーー!」

脳が鷲掴みされ、口が開かなくなる。
従属魔法だ。口が縫われたかのように閉じられ、開かなくなる。
手でこじ開けようともしてもビクともせず、シャオは涙目になりながらどうか、という視線をこめアランを見つめた。

「……」

涙目で慌てるシャオの様子に苛立ったアランも溜飲が下がったのだろう。
ベッドから起き上がり、シャオの従属魔法を解除する。

『口を開け』
「ッーー!」

アランがそう命じるとシャオの口も開く。
口が開放されたシャオは、ほっとはしたものの、アランはマッサージをされる気はないようで、机のサイドテーブルに置かれた紙とペンと手に取る。

「部屋に戻れ」
「ですが……!」
「寝ていろ。お前病み上がりだろう」
「私の体は大丈夫ですから!」

シャオの決死の訴えに、アランは眉を顰める。
また口を塞がれないよう、シャオは必死に目でアランに訴えかけた。シャオとアランの間に見えないやりとりを視線だけで交わしたあと、アランは諦めた様子でため息をついた。

「薬をもってこい」
「は?」
「茶も煎れてこい」
「……! は、はい!」

なんの事か一瞬分からなかったが、ようやく合点がいった。アランがこの2日間薬を飲んでいなかったことはシャオも把握している。それを飲むと言っているのだ。
本音を言えばマッサージをしたかったのが本音だが、薬を飲んでくれるとなると話は別だ。
飛び出るように部屋から出て、厨房に向かう。
湯瓶の中身がまだ残っていることを確認し、湯瓶を掴み、急ごしらえで茶器に湯を注いだ。
別のカップには薬も用意し、シャオは急ぎ足でアランの部屋へと戻った。

「主、失礼します」

扉を開けると先ほどと変わらない態勢でベッドに横たわるアランの姿が映る。
サイドテーブルに茶を置き、まずは乾燥ベリーを入れた小皿をアランに差し出した。

「……なんだ?」
「薬を飲まれるのですから、食べ物をと思いまして」   
「……あぁ」

納得したかのような声を出したアランはその小皿を受け取り、乾燥ベリーを2、3粒摘つまんだ。
 その乾燥ベリーをアランは何故か自分の口ではなくシャオの口に持ってくる。
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