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回復

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「……そういえば、今王宮はどうなっているのだ?」

ふと、シャオは思い出してルカに尋ねた。アランの今後を考えるうえで、王宮については知っておくにこしたことがない。
シャオが王宮から半ば出奔するように出てから一年と少し、王がイースになったこともあり少しは変わっていることもあるだろう。

「えっと……」

ルカはシャオの突然の問いについてしばし考えたのち、王宮の状況についてつらつらと話し始めた。

「魔法士や技術者の平民登用が、制限されています」
「確か、貴様が初めてこの屋敷に来た時も言っていたな?」

効いた時は何も思わなかったが、今考えればおかしい話だ。
シャオの知る限り、イースはそのようなことをする人間ではないのだ。
イースは臆病で、甘い。貴族にも平民にも同じ態度で接しようとし、それ故に舐められることも多かった。
先王の時代で始まった平民の王宮魔法士の登用も緩和こそすれ制限などしないのがシャオの知るイースだ。

ーー何か緊急事態でも起きたのか? それとも、イースが考えを改めるほどの何かがあったか……。

自分の軸である考えを変えるほどの事態があったというのはアランにとっても僥倖だ。
臆病者で、優柔不断なイースに他の臣下はさぞやきもきしているだろう。そこに、完全無欠なリーダーシップを持つアランが現れれば、臣下はアランの意見を無視できなくなるはず。
シャオはそう考え、内心ほくそ笑む。

「おい、ルカ、貴様、この地域の薬草を調べることで主に貢献したいと言っていたな?」
「は、はい」

 いまさら何を言うのかと、ルカは少々困惑気味に答える。

「薬草について、教えてやる」
「えっ!?」
「今じゃないぞ、お前が屋敷に戻ってきてからだ」

 ルカはシャオの藪から棒の言葉に、一瞬呆けた顔をした。
 が、すぐにその意味を理解すると大きく頷き、顔を輝かせる。
 今までシャオはアランに命令されていたのにもかかわらず、ルカに薬草について教えようとしなかった。
 それでもルカは薬草を自分で採ってきたり、シャオの薬作りの様子を観察するなどしそれらをノートにまとめていたがシャオの知識をいれればより精度の高い研究ができるだろう。それをイースの支持が落ちている適切なタイミングで王宮に持ち込めば、皆アランの王族復帰を大手を振って喜ぶはず。
 しかも、シャオが調べきれていない草の中にアランの足を治す薬草があれば足の治療にもなる。

――これで主の足の治療法が見つかれば御の字だ。

 嬉しそうに礼をいうルカをやりすごしつつ、シャオは内心ニヤリと笑った。
 
「では、私は主のマッサージに行ってくる。貴様も早く寝ろよ」
「はい!」

シャオはわざとらしくそう言い、アランのマッサージをするべく道具を取りにいった。
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