38 / 109
回復
しおりを挟む
「……そういえば、今王宮はどうなっているのだ?」
ふと、シャオは思い出してルカに尋ねた。アランの今後を考えるうえで、王宮については知っておくにこしたことがない。
シャオが王宮から半ば出奔するように出てから一年と少し、王がイースになったこともあり少しは変わっていることもあるだろう。
「えっと……」
ルカはシャオの突然の問いについてしばし考えたのち、王宮の状況についてつらつらと話し始めた。
「魔法士や技術者の平民登用が、制限されています」
「確か、貴様が初めてこの屋敷に来た時も言っていたな?」
効いた時は何も思わなかったが、今考えればおかしい話だ。
シャオの知る限り、イースはそのようなことをする人間ではないのだ。
イースは臆病で、甘い。貴族にも平民にも同じ態度で接しようとし、それ故に舐められることも多かった。
先王の時代で始まった平民の王宮魔法士の登用も緩和こそすれ制限などしないのがシャオの知るイースだ。
ーー何か緊急事態でも起きたのか? それとも、イースが考えを改めるほどの何かがあったか……。
自分の軸である考えを変えるほどの事態があったというのはアランにとっても僥倖だ。
臆病者で、優柔不断なイースに他の臣下はさぞやきもきしているだろう。そこに、完全無欠なリーダーシップを持つアランが現れれば、臣下はアランの意見を無視できなくなるはず。
シャオはそう考え、内心ほくそ笑む。
「おい、ルカ、貴様、この地域の薬草を調べることで主に貢献したいと言っていたな?」
「は、はい」
いまさら何を言うのかと、ルカは少々困惑気味に答える。
「薬草について、教えてやる」
「えっ!?」
「今じゃないぞ、お前が屋敷に戻ってきてからだ」
ルカはシャオの藪から棒の言葉に、一瞬呆けた顔をした。
が、すぐにその意味を理解すると大きく頷き、顔を輝かせる。
今までシャオはアランに命令されていたのにもかかわらず、ルカに薬草について教えようとしなかった。
それでもルカは薬草を自分で採ってきたり、シャオの薬作りの様子を観察するなどしそれらをノートにまとめていたがシャオの知識をいれればより精度の高い研究ができるだろう。それをイースの支持が落ちている適切なタイミングで王宮に持ち込めば、皆アランの王族復帰を大手を振って喜ぶはず。
しかも、シャオが調べきれていない草の中にアランの足を治す薬草があれば足の治療にもなる。
――これで主の足の治療法が見つかれば御の字だ。
嬉しそうに礼をいうルカをやりすごしつつ、シャオは内心ニヤリと笑った。
「では、私は主のマッサージに行ってくる。貴様も早く寝ろよ」
「はい!」
シャオはわざとらしくそう言い、アランのマッサージをするべく道具を取りにいった。
ふと、シャオは思い出してルカに尋ねた。アランの今後を考えるうえで、王宮については知っておくにこしたことがない。
シャオが王宮から半ば出奔するように出てから一年と少し、王がイースになったこともあり少しは変わっていることもあるだろう。
「えっと……」
ルカはシャオの突然の問いについてしばし考えたのち、王宮の状況についてつらつらと話し始めた。
「魔法士や技術者の平民登用が、制限されています」
「確か、貴様が初めてこの屋敷に来た時も言っていたな?」
効いた時は何も思わなかったが、今考えればおかしい話だ。
シャオの知る限り、イースはそのようなことをする人間ではないのだ。
イースは臆病で、甘い。貴族にも平民にも同じ態度で接しようとし、それ故に舐められることも多かった。
先王の時代で始まった平民の王宮魔法士の登用も緩和こそすれ制限などしないのがシャオの知るイースだ。
ーー何か緊急事態でも起きたのか? それとも、イースが考えを改めるほどの何かがあったか……。
自分の軸である考えを変えるほどの事態があったというのはアランにとっても僥倖だ。
臆病者で、優柔不断なイースに他の臣下はさぞやきもきしているだろう。そこに、完全無欠なリーダーシップを持つアランが現れれば、臣下はアランの意見を無視できなくなるはず。
シャオはそう考え、内心ほくそ笑む。
「おい、ルカ、貴様、この地域の薬草を調べることで主に貢献したいと言っていたな?」
「は、はい」
いまさら何を言うのかと、ルカは少々困惑気味に答える。
「薬草について、教えてやる」
「えっ!?」
「今じゃないぞ、お前が屋敷に戻ってきてからだ」
ルカはシャオの藪から棒の言葉に、一瞬呆けた顔をした。
が、すぐにその意味を理解すると大きく頷き、顔を輝かせる。
今までシャオはアランに命令されていたのにもかかわらず、ルカに薬草について教えようとしなかった。
それでもルカは薬草を自分で採ってきたり、シャオの薬作りの様子を観察するなどしそれらをノートにまとめていたがシャオの知識をいれればより精度の高い研究ができるだろう。それをイースの支持が落ちている適切なタイミングで王宮に持ち込めば、皆アランの王族復帰を大手を振って喜ぶはず。
しかも、シャオが調べきれていない草の中にアランの足を治す薬草があれば足の治療にもなる。
――これで主の足の治療法が見つかれば御の字だ。
嬉しそうに礼をいうルカをやりすごしつつ、シャオは内心ニヤリと笑った。
「では、私は主のマッサージに行ってくる。貴様も早く寝ろよ」
「はい!」
シャオはわざとらしくそう言い、アランのマッサージをするべく道具を取りにいった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
転生したいらない子は異世界お兄さんたちに守護られ中! 薔薇と雄鹿と宝石と
夕張さばみそ
BL
旧題:薔薇と雄鹿と宝石と。~転生先で人外さんに愛され過ぎてクッキーが美味しいです~
目が覚めると森の中にいた少年・雪夜は、わけもわからないままゴロツキに絡まれているところを美貌の公爵・ローゼンに助けられる。
転生した先は 華族、樹族、鉱族の人外たちが支配する『ニンゲン』がいない世界。
たまに現れる『ニンゲン』は珍味・力を増す霊薬・美の妙薬として人外たちに食べられてしまうのだという。
折角転生したというのに大ピンチ!
でも、そんなことはつゆしらず、自分を助けてくれた華族のローゼンに懐く雪夜。
初めは冷たい態度をとっていたローゼンだが、そんな雪夜に心を開くようになり――。
優しい世界は最高なのでクッキーを食べます!
溺愛される雪夜の前には樹族、鉱族の青年たちも現れて……
……という、ニンゲンの子供が人外おにいさん達と出逢い、大人編でLOVEになりますが、幼少期はお兄さん達に育てられる健全ホノボノ異世界ライフな感じです。(※大人編は性描写を含みます)
※主人公の幼児に辛い過去があったり、モブが八つ裂きにされたりする描写がありますが、基本的にハピエン前提の異世界ハッピー溺愛ハーレムものです。
※大人編では残酷描写、鬱展開、性描写(3P)等が入ります。
※書籍化決定しました~!(涙)ありがとうございます!(涙)
アルファポリス様からタイトルが
『転生したいらない子は異世界お兄さんたちに守護られ中!(副題・薔薇と雄鹿と宝石と)』で
発売中です!
イラストレーター様は一為先生です(涙)ありがたや……(涙)
なお出版契約に基づき、子供編は来月の刊行日前に非公開となります。
大人編(2部)は盛大なネタバレを含む為、2月20日(火)に非公開となります。申し訳ありません……(シワシワ顔)
※大人編公開につきましては、現在書籍化したばかりで、大人編という最大のネタバレ部分が
公開中なのは宜しくないのではという話で、一時的に非公開にさせて頂いております(申し訳ありません)
まだ今後がどうなるか未確定で、私からは詳細を申し上げれる状態ではありませんが、
続報がわかり次第、近況ボードやX(https://twitter.com/mohikanhyatthaa)の方で
直ぐに告知させていただきたいと思っております……!
結末も! 大人の雪夜も! いっぱいたくさん! 見てもらいたいのでッッ!!(涙)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる