38 / 45
回復
しおりを挟む
「……そういえば、今王宮はどうなっているのだ?」
ふと、シャオは思い出してルカに尋ねた。アランの今後を考えるうえで、王宮については知っておくにこしたことがない。
シャオが王宮から半ば出奔するように出てから一年と少し、王がイースになったこともあり少しは変わっていることもあるだろう。
「えっと……」
ルカはシャオの突然の問いについてしばし考えたのち、王宮の状況についてつらつらと話し始めた。
「魔法士や技術者の平民登用が、制限されています」
「確か、貴様が初めてこの屋敷に来た時も言っていたな?」
効いた時は何も思わなかったが、今考えればおかしい話だ。
シャオの知る限り、イースはそのようなことをする人間ではないのだ。
イースは臆病で、甘い。貴族にも平民にも同じ態度で接しようとし、それ故に舐められることも多かった。
先王の時代で始まった平民の王宮魔法士の登用も緩和こそすれ制限などしないのがシャオの知るイースだ。
ーー何か緊急事態でも起きたのか? それとも、イースが考えを改めるほどの何かがあったか……。
自分の軸である考えを変えるほどの事態があったというのはアランにとっても僥倖だ。
臆病者で、優柔不断なイースに他の臣下はさぞやきもきしているだろう。そこに、完全無欠なリーダーシップを持つアランが現れれば、臣下はアランの意見を無視できなくなるはず。
シャオはそう考え、内心ほくそ笑む。
「おい、ルカ、貴様、この地域の薬草を調べることで主に貢献したいと言っていたな?」
「は、はい」
いまさら何を言うのかと、ルカは少々困惑気味に答える。
「薬草について、教えてやる」
「えっ!?」
「今じゃないぞ、お前が屋敷に戻ってきてからだ」
ルカはシャオの藪から棒の言葉に、一瞬呆けた顔をした。
が、すぐにその意味を理解すると大きく頷き、顔を輝かせる。
今までシャオはアランに命令されていたのにもかかわらず、ルカに薬草について教えようとしなかった。
それでもルカは薬草を自分で採ってきたり、シャオの薬作りの様子を観察するなどしそれらをノートにまとめていたがシャオの知識をいれればより精度の高い研究ができるだろう。それをイースの支持が落ちている適切なタイミングで王宮に持ち込めば、皆アランの王族復帰を大手を振って喜ぶはず。
しかも、シャオが調べきれていない草の中にアランの足を治す薬草があれば足の治療にもなる。
――これで主の足の治療法が見つかれば御の字だ。
嬉しそうに礼をいうルカをやりすごしつつ、シャオは内心ニヤリと笑った。
「では、私は主のマッサージに行ってくる。貴様も早く寝ろよ」
「はい!」
シャオはわざとらしくそう言い、アランのマッサージをするべく道具を取りにいった。
ふと、シャオは思い出してルカに尋ねた。アランの今後を考えるうえで、王宮については知っておくにこしたことがない。
シャオが王宮から半ば出奔するように出てから一年と少し、王がイースになったこともあり少しは変わっていることもあるだろう。
「えっと……」
ルカはシャオの突然の問いについてしばし考えたのち、王宮の状況についてつらつらと話し始めた。
「魔法士や技術者の平民登用が、制限されています」
「確か、貴様が初めてこの屋敷に来た時も言っていたな?」
効いた時は何も思わなかったが、今考えればおかしい話だ。
シャオの知る限り、イースはそのようなことをする人間ではないのだ。
イースは臆病で、甘い。貴族にも平民にも同じ態度で接しようとし、それ故に舐められることも多かった。
先王の時代で始まった平民の王宮魔法士の登用も緩和こそすれ制限などしないのがシャオの知るイースだ。
ーー何か緊急事態でも起きたのか? それとも、イースが考えを改めるほどの何かがあったか……。
自分の軸である考えを変えるほどの事態があったというのはアランにとっても僥倖だ。
臆病者で、優柔不断なイースに他の臣下はさぞやきもきしているだろう。そこに、完全無欠なリーダーシップを持つアランが現れれば、臣下はアランの意見を無視できなくなるはず。
シャオはそう考え、内心ほくそ笑む。
「おい、ルカ、貴様、この地域の薬草を調べることで主に貢献したいと言っていたな?」
「は、はい」
いまさら何を言うのかと、ルカは少々困惑気味に答える。
「薬草について、教えてやる」
「えっ!?」
「今じゃないぞ、お前が屋敷に戻ってきてからだ」
ルカはシャオの藪から棒の言葉に、一瞬呆けた顔をした。
が、すぐにその意味を理解すると大きく頷き、顔を輝かせる。
今までシャオはアランに命令されていたのにもかかわらず、ルカに薬草について教えようとしなかった。
それでもルカは薬草を自分で採ってきたり、シャオの薬作りの様子を観察するなどしそれらをノートにまとめていたがシャオの知識をいれればより精度の高い研究ができるだろう。それをイースの支持が落ちている適切なタイミングで王宮に持ち込めば、皆アランの王族復帰を大手を振って喜ぶはず。
しかも、シャオが調べきれていない草の中にアランの足を治す薬草があれば足の治療にもなる。
――これで主の足の治療法が見つかれば御の字だ。
嬉しそうに礼をいうルカをやりすごしつつ、シャオは内心ニヤリと笑った。
「では、私は主のマッサージに行ってくる。貴様も早く寝ろよ」
「はい!」
シャオはわざとらしくそう言い、アランのマッサージをするべく道具を取りにいった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
悪役令息の死ぬ前に
ゆるり
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる