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目覚め
しおりを挟む「シャ、シャオ様!! 朝から一体何をしてるんですか!?」
「敵が来た」
「は!? 敵!?」
「すべて掃討したから、気にするな」
まさかアランに口付けをされる夢をみたとは恥ずかしくて口が裂けても言えるわけがない。
ルカに説明もできるはずがなく、シャオはそう誤魔化す。
「て、敵が来たって……!! そんなわけないでしょう!!」
「本当だ」
ギャーギャーとうるさいルカを無理やり黙らしシャオは先程まで寝ていたベッドに腰掛けた。
従者としてありえない失態にシャオは大きな息を吐く。
そのシャオの姿をルカはあろうことか、シャオが体調不良だと思い込んだ。
「シャオ様、熱はどうですか?」
「……あるわけないだろう」
そもそも昨日の体調が悪いという話は一人になりたいシャオがルカに適当に言った嘘。
本来のシャオの体調は全く悪くない。それなのに寝コケてしまったのはどう言う事だと自分を頭の中で罵倒した。
「ちょっと失礼します」
「額を触るな!」
シャオの前髪を押しのけ、ルカはシャオの額に手を乗せる。べたべたと何度もシャオの額を触りだし、自分の額の熱と比べている。
「熱は、ないですね……」
「当たり前だ」
ルカの手を振り払い、シャオはルカを睨みつける。
ルカはそんなことを気にせず、シャオの顔をジロジロと見て、しまいには後ろの首筋まで髪をどけてまでも見る。
そうやって人の顔をジロジロ見尽くした後にようやく満足したのか、ルカはなんとも大袈裟に息を吐いた。
「良かった。熱は下がったようですね」
「だから、熱は無いと……」
「……」
「どうした?」
ルカは困ったような表情を浮かべて、ため息をついた。
シャオはその様子を訝しげに見つめる。
「シャオ様、やっぱり今日も寝ておいた方が……」
「何を言う! 私は平気だって言ってるだろう!」
「だって、昨日あんな高熱をーー」
「……は?」
高熱? 何を言っているのだとシャオはルカを睨みつける。昨夜、シャオはそんな高熱など出していない。確かに頭は痛かったが、それくらいだ。
「まさか、覚えていないのですか!? シャオ様、昨日は朝から高熱出て一日中ずっと寝ていたんですよ!?」
ルカの血相を変えた顔から出た言葉は、シャオにとっては信じられないものだった。
「……熱!?!?」
「ありえない位の熱を出して……! 僕、本当に心配したんですから!」
「ちょ、ちょっと待て! 私にはそんな記憶ーー」
「意識が朦朧とするほどの熱であったということだ」
部屋の扉から声がし、そちらの方へ視線を向ける。
そこには、アランがいた。
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