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新たな異物
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ルカがきて1ヶ月ほど、シャオの屋敷での生活は変わった。
それはアランも同様だった。
アランはーー、ペットを飼い始めた。
「チュー!」
「……全く、チューチュー鳴くしか脳のないやつだ」
手のひらに収まるほどの小さな命はシャオが与えた餌に狂喜乱舞になりつつも必死にかじりついている。
3匹のネズミは2つのカゴに2匹と1匹に分けられ入れられており、1番元気に騒いでいる1匹は籠の中に入れた餌を探している。
「ほら、こちらだ」
指でネズミの口の近くに餌を持っていくと、まるで花に群がる虫のようにネズミは餌に飛びついた。
もう1つ籠にはいっている2匹のネズミの方は2匹とも餌をそれぞれ確保し、仲良く食べている。
「……」
シャオは3匹のネズミを見つめる。
このネズミ達は元々1ヶ月前、アランの命令でシャオが村から持ってきたネズミ達だ。
シャオの記憶では100匹いたはずだが、今残っているのはこの3匹。
ほかの90匹近くのネズミはどこに言ったのか。
それに、この3匹もシャオが採ってきた時には五体満足の健康なネズミを選りすぐったはずだったが、この3匹にはそれぞれ手と足と目に障害がある。
手や足をそれぞれ引きずるネズミが2匹と目が見えないネズミが1匹。目が見えないネズミに至っては視力がほとんど無いようで餌の時も餌を口に近づけないと見つけることすら出来ないのだ。
こんなネズミ、野生では生きていくこともできないだろう。普通に飼っても健康なネズミと違い死ぬのも早い。
ーーなぜ主は、こんなネズミを。
王宮にいた時にも動物はいた。馬や、鳥など。
弟のイースは動物に興味があり、よく庭で小鳥を眺めたり、馬を愛でていたが、アランはそのような興味を示さなかった。
それなのに突然、シャオにネズミを取りに行かせ、その内の3匹を飼うと言い出した。
なぜネズミを飼うのか、他のネズミはどこに行ったのか。
「……」
アランは、何を考えているのだろう。
自分の主のことなのに、最近のアランがシャオには分からなくなっている。
主の考えが分からねば、忠臣とは言えない。
主の考えを察し、それを主が望む前に提供しなければアランの忠臣といえないのだ。
「……」
「シャオ、餌やりは終わったのか?」
「は、はい!」
声をかけられ慌てて振り向く。
そこにはいつものように執務室の机にいるアランの姿があった。
一瞬、アランの事を忘れて考え事にふけってしまった自分を恨む。
ここは執務室だ。
アランがいるのは当たり前なのに、自分はあろうことか独り言を呟いていた。
忠臣有るまじき行為にシャオは唇を強く噛み締める。
気を取り直し、シャオはアランの机の前に置かれた昼食を見つめた。
「……お食事はもうよいのですか?」
視界にあるアランの昼食はほとんど残っていた。パンも、スープもほとんど手をつけられていない。唯一手をつけたのは以前シャオが村の人間から貰ってきた乾燥ベリーが数粒ほど。
それ以外には全くと言っていいほど手をつけられてないのだ。
それはアランも同様だった。
アランはーー、ペットを飼い始めた。
「チュー!」
「……全く、チューチュー鳴くしか脳のないやつだ」
手のひらに収まるほどの小さな命はシャオが与えた餌に狂喜乱舞になりつつも必死にかじりついている。
3匹のネズミは2つのカゴに2匹と1匹に分けられ入れられており、1番元気に騒いでいる1匹は籠の中に入れた餌を探している。
「ほら、こちらだ」
指でネズミの口の近くに餌を持っていくと、まるで花に群がる虫のようにネズミは餌に飛びついた。
もう1つ籠にはいっている2匹のネズミの方は2匹とも餌をそれぞれ確保し、仲良く食べている。
「……」
シャオは3匹のネズミを見つめる。
このネズミ達は元々1ヶ月前、アランの命令でシャオが村から持ってきたネズミ達だ。
シャオの記憶では100匹いたはずだが、今残っているのはこの3匹。
ほかの90匹近くのネズミはどこに言ったのか。
それに、この3匹もシャオが採ってきた時には五体満足の健康なネズミを選りすぐったはずだったが、この3匹にはそれぞれ手と足と目に障害がある。
手や足をそれぞれ引きずるネズミが2匹と目が見えないネズミが1匹。目が見えないネズミに至っては視力がほとんど無いようで餌の時も餌を口に近づけないと見つけることすら出来ないのだ。
こんなネズミ、野生では生きていくこともできないだろう。普通に飼っても健康なネズミと違い死ぬのも早い。
ーーなぜ主は、こんなネズミを。
王宮にいた時にも動物はいた。馬や、鳥など。
弟のイースは動物に興味があり、よく庭で小鳥を眺めたり、馬を愛でていたが、アランはそのような興味を示さなかった。
それなのに突然、シャオにネズミを取りに行かせ、その内の3匹を飼うと言い出した。
なぜネズミを飼うのか、他のネズミはどこに行ったのか。
「……」
アランは、何を考えているのだろう。
自分の主のことなのに、最近のアランがシャオには分からなくなっている。
主の考えが分からねば、忠臣とは言えない。
主の考えを察し、それを主が望む前に提供しなければアランの忠臣といえないのだ。
「……」
「シャオ、餌やりは終わったのか?」
「は、はい!」
声をかけられ慌てて振り向く。
そこにはいつものように執務室の机にいるアランの姿があった。
一瞬、アランの事を忘れて考え事にふけってしまった自分を恨む。
ここは執務室だ。
アランがいるのは当たり前なのに、自分はあろうことか独り言を呟いていた。
忠臣有るまじき行為にシャオは唇を強く噛み締める。
気を取り直し、シャオはアランの机の前に置かれた昼食を見つめた。
「……お食事はもうよいのですか?」
視界にあるアランの昼食はほとんど残っていた。パンも、スープもほとんど手をつけられていない。唯一手をつけたのは以前シャオが村の人間から貰ってきた乾燥ベリーが数粒ほど。
それ以外には全くと言っていいほど手をつけられてないのだ。
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