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帰路

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ーーしまった。

 うっかり自分の出自に関して口を滑らせてしまった。
 シャオは、出自の上では貴族で、王都のにあるグランチェ家の屋敷で生まれたことにはなっているが、実際は違う。
 普段は隠していることだが、平民のルカに知られても問題はないと判断しシャオは少しだけ声を潜めて言った。

「……生まれは、寒村だ」
「えっ?」

 ルカの驚く声。
 明らかにシャオの言葉を出来ていない様子だったが、やがてスポンジのようにじわじわとシャオの言葉の意味が分かったらしい。
 ルカの顔色がみるみると驚愕の顔色に変わっていく。

「えっ、ま、まさか……」
「第1王子の小姓が平民だと外聞が悪いからな」
「つ、つまり……、シャオ様って……、平民ですか?」
「元はな」
「え、えええええ!!!」

 とてつもない大声を出され、耳を押さえる。
 鼓膜まで破れそうな声量だ。

「うるさい」
「だって!それじゃあ、僕と同じですよね!?」
「元はと言っただろう。私の姓を忘れたのか?」
「あっ……」

 シャオの姓はグランチェ。
 王家と縁深いルクシオ家の分家筋にあたる名家である。
 優秀な魔法士を輩出する名家としても有名で、シャオはその代表格の魔法士だ。 

「第1王子の小姓が平民では外聞が悪いからな。便宜上、グランチェ家の子となっただけだ」
「えっ、そ、それって、僕知ってていいんですか?」
「別に、王宮に深い者なら知らぬものは居ない事実だ。それに、私が養子になったのは10年前だし、そのころ、本物のグランチェ家の者に魔法士はいなかったからな。都合も良かったのだろう。平民の魔法士が魔法士が居ない貴族の養子になるなど、よく聞く話だろう?」
「あ、そういえば、そうか……」

 ルカは曖昧な表情のまま頷く。
 今では平民の王宮魔法士の登用が進んだりもしているが、先々代前の王の時代において、平民はどんな才能がある魔法士でも魔法士兵にしかなることが出来なかった。
 だが、それ以外にも魔法士がいない貴族の子供になることで、成り上がるというケースも裏ルートだが存在し、そういった者は貴族として扱われ、跡取りとして扱われたりもする。
 魔素を操れる魔法士のような存在が同じ血族から生まれるとは限らないからこその事情だ。
 平民の王宮魔法士としてそういった存在と関わったことのあるルカはジロジロとシャオの顔を見つめる。
 
「確かに貴族としては背は小さいとは思いましたけど……、まさかシャオ様が平民の出なんて」
「うるさい。背は関係ないだろう」
「グランチェ家の方がシャオ様の魔法の才能を見つけたのですか?」
「違う。主だ」
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