追放王子と出奔魔法使いの一冬の話

ブリリアント・ちむすぶ

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食事

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「ルカも連れていけ」
「……なぜ、でしょう?」

 嫌だという表情をしなかったことを褒めてほしいくらいだった。
 なぜシャオがルカをつれ薬草を取りにいかねばならないのか。

「奴は薬草について興味があると言っていただろう」
「確かにルカさんに先ほど薬草について聞かれましたが……」
「ならば教えてやれ」
「イッ--」

 嫌だ、と言いかけたシャオにアランの銀の瞳が真っすぐ見つめた。
 宝石のごとく美しい瞳がシャオを射貫く。
 魔法を使えないはずなのに、アランの瞳にはシャオを狂わす力があった。
 頷きそうになるのを必死で堪え、シャオは首を横に振った。

「……なりません」
「なぜだ?」
「彼が、信用ならないからです」

 シャオは真っ直ぐな瞳でアランの強い瞳に対抗した。
 主でアランの意見に対抗することはしたくない。だが、このアランの命令にはどうしても頷きたくなかった。

「彼――、ルカは平民ではありますが、現王イースの手の者。つまりは、主をこの地に追いやった者の仲間です。たとえこの地域の薬草を調べ終えても、主が王族に戻れる可能性は確実ではなく、もし奴が主を騙すことが目的ならば、危険が及ぶのは主自身、万が一でもその可能性があるならば、私は了承できません」
 
 シャオの言葉にアランは動じることなく、じっとシャオを見つめていた。
 しかし、シャオも譲る気はない。
 しばらく嫌な沈黙が流れた後、アランはふっと息を吐いた。

「ならば、俺が奴と従属魔法を結べば問題ないだろう」
「なっーーー!」

あまりにも衝撃的な言葉に、シャオは言葉を詰まらせた。

「それはいけません! あの者は敵です!  そんな者と契約など……」
「お前が奴を信頼できないと言うからだろう。現に、奴はお前がいない間俺に一切手は振れなかった。王宮についても、平民のあいつが知って良いことしかあいつは知られていない。奴が俺と契約しても、王宮は困らない」
「お、お辞めください! 従属魔法は主が思うほど万能ではないのです。仮に主がルカと結び表面上は結んだように見えてもその心根は変わりません!」

 従属魔法とは、主従関係を強制的に結ぶものではあるが、万能では無い。
 この従属魔法は「主が命令した時、従者側が命令を実行する魔法」であり、決して従者側が完全に主人側に逆らうことが出来なくする魔法では無いのだ。
 主人側も契約する従者が多ければ命令の強制力も弱まり、眠りなど意識を失っている場合には従者は好きに動けたりもする。
 中には従属魔法を結んだことで気が緩み、結果主人側が寝ている時に従者側が寝首をかいたという間抜けな話もあるほどだ。
 つまり、従属魔法では従者側の行動は支配できても心までは支配できないのである。 
 無論、シャオの主であるアランはそれをわかっている。だからこそ従属魔法はシャオのみにしか結んでいないのだ。
   必死にそれを伝えるとアランは諦めたのかややわざとらしく椅子に深く座り直す。

「お前がそこまで言うならば、俺は何も出来んな」
 
 アランは魔法を使えない。従属魔法を使うにはそれなりの技術のある魔法士の力が必要だ。当然シャオの力が必須だが、当の本人がここまで頑なに拒むのであればアランは諦めるしかない。
 その気持ちを感じ取ってか、アランはニコリと笑みを見せる。

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