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帰宅
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再度村に行きネズミをとりなおした後、死なぬよう最善の注意を払いながら屋敷に戻った時には、既に辺りは暗くなっていた。
ネズミをアランに見せ、今回は全部死んでいないことを確認してもらい、そのネズミたちをアランに指示された部屋に置く。
シャオはくたびれた体を鞭打ち、厨房に向かうとその道中で明らかに食事の匂いがした。
案の定、厨房にいくとルカが我が物顔で厨房の占拠をしていゆ。
ルカは現れたシャオに気づくと頭を下げた。
「お疲れ様です」
「……なぜ、貴様が食事を作っている」
「アラン様がお腹が空いたとのことなので。シャオ様の分も用意しますから」
「……」
今更ルカを怒る気にも慣れず、シャオは厨房にある椅子にもたれ掛かるように座った。
さすがに、長時間の浮遊魔法には疲労感を覚える。
それに、本来ならば1度で済んだものがシャオのありえないミスによりもう1回することになったのだからその疲労感も倍増だ。
机に突っ伏すように項垂れているシャオの前になにかが置かれる。よく見るとそれはスープだった。湯気の蒸気とともに鼻腔をくすぐる匂い。
本来ならばすぐさま胃袋の中にいれていることだろうが、このスープがルカがつくったものと思うと素直に受け取る気にはなれない。
シャオはスープを置いたルカを睨むように睨みつける。
「……なんだこれは」
「シャオ様の分です」
「……要らない」
「心配しなくても毒なんて入ってませんよ。これ、アラン様も食べるものですし」
お前からの施しはいらないし、そもそも従者が主より先に食事をとることすら不敬であると言いたかったが、シャオにはそれをいう元気さもなかった。
これは主のための毒見だと自分に言い聞かせ、スプーンを握り、スープを口に入れる。
温かい湯がシャオの体に巡る。くたびれた体に活力が湧くような気さえもした。
「……」
「どうですか?」
「……悪くない」
いや、むしろ美味しいと言えるだろう。
野菜の甘みがよく出ていて、塩気がちょうどいいくらいに効いている。
だが、素直にそれを褒めるのはシャオのプライドが許さなかった。
しかし、ルカはその答えでも満足したようで嬉しそうに小さく笑っている。
「多めに作ったんでおかわりしたければいいですよ」
「……いい」
別にこのスープが気に入ったわけではない。ただ単に腹が空っぽだからうまく感じるのだと言い訳をし、シャオはスープの中身を飲み進める。
シャオのスープ皿が空になった時、ちょうどルカの食事の準備も全て終わり、アラン用の食事がトレーの上に並べられる。
立ち上がるシャオにルカが問いかける。
「アラン様のところに持ってゆきますか?」
「……ああ。薬も、準備せねば」
シャオは立ち上がり、棚に置かれた瓶の中のき入れてある薬草を取り出す。
それに湯瓶の中に入ったままの湯を入れ、茶の要領で煮出しカップに入れる様子をルカは興味深そうに見つめている。
「それがアラン様の薬、というわけですか」
「主の足のためのものだ」
アランの足は現在、足先に麻痺が残っている状態だ。薬草はその麻痺の悪化を抑える仕組みになっており、これを毎日アランは夕食後に飲むことになっている。
本当は足の麻痺を完全に消え去るものがあればいいのだが、そう上手い話は中々ない。
シャオの薬の準備をルカは魔法士らしく見るだけでは収まらないのか質問をしだす。
「この薬、王都にあるものですか?」
「この地域にしか生えていない薬草を使っている」
「アラン様が以前かかった病気に使用したものと同じものですか?」
「あれとは違う」
「……なるほど」
シャオの説明に納得をしたのか、ルカは難しい顔をしながら首を縦に振る。
「この地域に来たのは初めてだったんですよね? どうやって見つけたんですか?」
「見れば、わかるだろう」
「見ればって……」
シャオの言葉にルカは目を見開く。
ルカのこの表情、昨日も見たものだ。シャオがアランを閉じ込めていた結界を壊すのにかけた時間を聞いたのと同じ顔。
なぜ自分はルカにここまで喋ってしまったのだ。疲れのせいでシャオの頭はおかしくなっている。
「……もう行く」
シャオは話は終わりだという風にルカを背にアランの元へ向かう。
アランは変わらず執務室にいるはず。せめてアランの前では完璧な忠臣としてのシャオを見せなければとシャオは疲れた顔を引き締め笑顔を貼り付けた。
ネズミをアランに見せ、今回は全部死んでいないことを確認してもらい、そのネズミたちをアランに指示された部屋に置く。
シャオはくたびれた体を鞭打ち、厨房に向かうとその道中で明らかに食事の匂いがした。
案の定、厨房にいくとルカが我が物顔で厨房の占拠をしていゆ。
ルカは現れたシャオに気づくと頭を下げた。
「お疲れ様です」
「……なぜ、貴様が食事を作っている」
「アラン様がお腹が空いたとのことなので。シャオ様の分も用意しますから」
「……」
今更ルカを怒る気にも慣れず、シャオは厨房にある椅子にもたれ掛かるように座った。
さすがに、長時間の浮遊魔法には疲労感を覚える。
それに、本来ならば1度で済んだものがシャオのありえないミスによりもう1回することになったのだからその疲労感も倍増だ。
机に突っ伏すように項垂れているシャオの前になにかが置かれる。よく見るとそれはスープだった。湯気の蒸気とともに鼻腔をくすぐる匂い。
本来ならばすぐさま胃袋の中にいれていることだろうが、このスープがルカがつくったものと思うと素直に受け取る気にはなれない。
シャオはスープを置いたルカを睨むように睨みつける。
「……なんだこれは」
「シャオ様の分です」
「……要らない」
「心配しなくても毒なんて入ってませんよ。これ、アラン様も食べるものですし」
お前からの施しはいらないし、そもそも従者が主より先に食事をとることすら不敬であると言いたかったが、シャオにはそれをいう元気さもなかった。
これは主のための毒見だと自分に言い聞かせ、スプーンを握り、スープを口に入れる。
温かい湯がシャオの体に巡る。くたびれた体に活力が湧くような気さえもした。
「……」
「どうですか?」
「……悪くない」
いや、むしろ美味しいと言えるだろう。
野菜の甘みがよく出ていて、塩気がちょうどいいくらいに効いている。
だが、素直にそれを褒めるのはシャオのプライドが許さなかった。
しかし、ルカはその答えでも満足したようで嬉しそうに小さく笑っている。
「多めに作ったんでおかわりしたければいいですよ」
「……いい」
別にこのスープが気に入ったわけではない。ただ単に腹が空っぽだからうまく感じるのだと言い訳をし、シャオはスープの中身を飲み進める。
シャオのスープ皿が空になった時、ちょうどルカの食事の準備も全て終わり、アラン用の食事がトレーの上に並べられる。
立ち上がるシャオにルカが問いかける。
「アラン様のところに持ってゆきますか?」
「……ああ。薬も、準備せねば」
シャオは立ち上がり、棚に置かれた瓶の中のき入れてある薬草を取り出す。
それに湯瓶の中に入ったままの湯を入れ、茶の要領で煮出しカップに入れる様子をルカは興味深そうに見つめている。
「それがアラン様の薬、というわけですか」
「主の足のためのものだ」
アランの足は現在、足先に麻痺が残っている状態だ。薬草はその麻痺の悪化を抑える仕組みになっており、これを毎日アランは夕食後に飲むことになっている。
本当は足の麻痺を完全に消え去るものがあればいいのだが、そう上手い話は中々ない。
シャオの薬の準備をルカは魔法士らしく見るだけでは収まらないのか質問をしだす。
「この薬、王都にあるものですか?」
「この地域にしか生えていない薬草を使っている」
「アラン様が以前かかった病気に使用したものと同じものですか?」
「あれとは違う」
「……なるほど」
シャオの説明に納得をしたのか、ルカは難しい顔をしながら首を縦に振る。
「この地域に来たのは初めてだったんですよね? どうやって見つけたんですか?」
「見れば、わかるだろう」
「見ればって……」
シャオの言葉にルカは目を見開く。
ルカのこの表情、昨日も見たものだ。シャオがアランを閉じ込めていた結界を壊すのにかけた時間を聞いたのと同じ顔。
なぜ自分はルカにここまで喋ってしまったのだ。疲れのせいでシャオの頭はおかしくなっている。
「……もう行く」
シャオは話は終わりだという風にルカを背にアランの元へ向かう。
アランは変わらず執務室にいるはず。せめてアランの前では完璧な忠臣としてのシャオを見せなければとシャオは疲れた顔を引き締め笑顔を貼り付けた。
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