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悪夢の続き
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とても悪い夢を見ていたような気がした。
つらい悪夢にうなされながらそこから逃れるように目を開く。
目覚めた時、変わらない部屋の天井が見え安心したように息を吐いた。
「目が覚めましたか?」
反射的に首を声がした方に向けた。
目の前には、自分の世話係ー-、コルドがいた。
短く切り揃えられた青みがかかった髪に菜花のような黄色の瞳。背丈もあり、顔立ちも整っている。
そのコルドの瞳を見た時、私はあの悪夢が現実だと知り、昨日の悪夢の記憶が一気に蘇った。
「ー-!」
思い出したない記憶が一気に頭の中をめぐり、私は恐怖のあまりベッドから飛び起きた。
どうにかコルドから逃れようとベッドの隅に寄ろうとしたとき、私の体は様々なところで悲鳴を上げた。
「ー-っ!」
全身の体の軋むような痛みと喉の腫れ。
昨日の出来事を現実だと否が応でも私自身にわからせてくる。
手が震えた。体温が急激に冷える。嫌な汗がどっとでる感覚は久しぶりだ。
「ー-はっ、ぁ」
自分の心臓が内側からたたく。
その自分の様子をコルドは舐めるように見ていた。
まるで自分がこれからコルドに捕食されるか弱い動物だ。
声を満足に出すことが出来ず、歩くことのできない自分は弱い。
コルドに生殺与奪を握られているのだ。
久しく感じることのなかった恐怖という感情に自分が完全に支配されている。
それがなによりも恐ろしかった。
コルドは私に手を伸ばした。
「恐ろしいですか? 俺が」
「――っ」
コルドはおびえる自分の頬を触り、笑った。
口元は笑っている。だが、瞳は違う。
黄金のような黄色いコルドの瞳が自分を映す。
そのコルドの瞳の中は、普段は隠されたコルドの怒りがそこにあった。
深い怒りの感情を察し、背中がさらに震える。
自分のおびえた姿を満足げにみたコルドはさらに口を開く。
「昨日の事、覚えておりますか?」
思い出したくもない悪夢の記憶がよみがえる。
息がうまくできない。その様子の私をコルドは見つめた後、伸ばしっぱなしの私の髪をつかみ、グラグラと揺さぶる。
「カ、ハぁ……」
激しく揺さぶられたせいで意識が遠のく。
視界が点滅し、痛みと恐怖から逃れるように意識が遠のく。
それを、コルドは許そうとしない。
「逃がしませんよ」
「アッ……!」
勢いよくベッドに叩きつけられる。
多少柔らかいものが敷いてあるとはいえ、それでも痛いものは痛い。
痛みにうめいている自分をコルドは薄笑いを浮かべながら言った。
「許さない、許さない」
「……」
自分が知っているはずのコルドは何事も黙々とこなすまじめな人間だった。
自分の傷を治し、自分の喉を完全ではないながらも治したことからきっと心優しい青年だと思っていた。
だが、その中にこんな怒りの感情を宿していたとは、わからなかった。
つらい悪夢にうなされながらそこから逃れるように目を開く。
目覚めた時、変わらない部屋の天井が見え安心したように息を吐いた。
「目が覚めましたか?」
反射的に首を声がした方に向けた。
目の前には、自分の世話係ー-、コルドがいた。
短く切り揃えられた青みがかかった髪に菜花のような黄色の瞳。背丈もあり、顔立ちも整っている。
そのコルドの瞳を見た時、私はあの悪夢が現実だと知り、昨日の悪夢の記憶が一気に蘇った。
「ー-!」
思い出したない記憶が一気に頭の中をめぐり、私は恐怖のあまりベッドから飛び起きた。
どうにかコルドから逃れようとベッドの隅に寄ろうとしたとき、私の体は様々なところで悲鳴を上げた。
「ー-っ!」
全身の体の軋むような痛みと喉の腫れ。
昨日の出来事を現実だと否が応でも私自身にわからせてくる。
手が震えた。体温が急激に冷える。嫌な汗がどっとでる感覚は久しぶりだ。
「ー-はっ、ぁ」
自分の心臓が内側からたたく。
その自分の様子をコルドは舐めるように見ていた。
まるで自分がこれからコルドに捕食されるか弱い動物だ。
声を満足に出すことが出来ず、歩くことのできない自分は弱い。
コルドに生殺与奪を握られているのだ。
久しく感じることのなかった恐怖という感情に自分が完全に支配されている。
それがなによりも恐ろしかった。
コルドは私に手を伸ばした。
「恐ろしいですか? 俺が」
「――っ」
コルドはおびえる自分の頬を触り、笑った。
口元は笑っている。だが、瞳は違う。
黄金のような黄色いコルドの瞳が自分を映す。
そのコルドの瞳の中は、普段は隠されたコルドの怒りがそこにあった。
深い怒りの感情を察し、背中がさらに震える。
自分のおびえた姿を満足げにみたコルドはさらに口を開く。
「昨日の事、覚えておりますか?」
思い出したくもない悪夢の記憶がよみがえる。
息がうまくできない。その様子の私をコルドは見つめた後、伸ばしっぱなしの私の髪をつかみ、グラグラと揺さぶる。
「カ、ハぁ……」
激しく揺さぶられたせいで意識が遠のく。
視界が点滅し、痛みと恐怖から逃れるように意識が遠のく。
それを、コルドは許そうとしない。
「逃がしませんよ」
「アッ……!」
勢いよくベッドに叩きつけられる。
多少柔らかいものが敷いてあるとはいえ、それでも痛いものは痛い。
痛みにうめいている自分をコルドは薄笑いを浮かべながら言った。
「許さない、許さない」
「……」
自分が知っているはずのコルドは何事も黙々とこなすまじめな人間だった。
自分の傷を治し、自分の喉を完全ではないながらも治したことからきっと心優しい青年だと思っていた。
だが、その中にこんな怒りの感情を宿していたとは、わからなかった。
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