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無くし物2
しおりを挟む結局首飾りを見つけることは出来なかった。
コルドは城内の開門の鐘が鳴るとすぐに城内に入り、城内の中を探し回った。
だが、広大な城内にたった一つの首飾りを見つけるのは難しく、城外の外には見つからなかった。
ろくに眠っていない頭でコルドは塔の階段を登って行く。
もしかすれば、この塔のどこかにあるのでは、とファルの食事を持ちながらコルドはくまなく塔の中を見た。
だが、特徴的な青い宝石は見当たらず、コルドは意気消沈しながらファルがいる部屋の扉を開けた。
変わらず部屋のベッドの上で外を見ながら物思いに更けているファルの近くに食事を置く。
「食事になります」
簡単にファルの前に食事を置き、軽い掃除をしながら首飾りがないか探る。そのコルドの様子をファルは口がきけないながらも不思議そうに見つめた。
「……」
明らかに掃除だけではないコルドの行動をファルは見つめた。
その視線に気が付かないほどコルドは鈍くなかった。
もしや、という思いも込めてコルドはファルに静かに答えた。
「……あなたは、私の首に青い宝石の首飾りがあるのを知っていますか?」
「……」
ファルは少し悩んだそぶりを見せた後、小さくうなずく。
コルドは言葉を続けた。
「あれは、父の形見で、とても、大事なものです」
ファルの目が大きく開いた。
その反応にコルドは少し驚いたが、平然を保つ。
「紐が切れかけていたので、腰にくくっておりましたが、昨日その首飾りが無くなっていたのです。どこにやったのかわかりませんか?」
「…………」
ファルは首を横に振った。
想像していた答えにコルドは深い息をはいた。
「……さすがに、ここにはないようですね。あったら私が掃除の時に気が付くでしょうから」
「…………」
「……そんな目で、見ないでください」
ファルの顔が静かに翳る。
まるでそれはコルドの首飾りを無くしたことで生まれた悲しみを感じ取っているようにも見えた。
「……ぁ、お」
ファルはかすれた声と共にコルドの頬を触った。
ひんやりとした手の温度をコルドはただ感じる。
「……」
あの日、コルドの力でファルの声が少し戻ったあとからファルとコルドの関係は少し変わった。
今までファルが行ってきたことは嘘のようにコルドに対し優しさを見せるようになったのだ。
ファルなりの感謝の気持ちなのかはよく分からない。そこまで流暢に喋れるほど、ファルの喉は治っていないのだ。
頬を触り続けるファルの手をやんわりと拒み、コルドは静かに言った。
「もし、見つけたら、お願いします」
ファルはゆっくりと頷いた。
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