7 / 29
3
豚の鳴き声
しおりを挟む
会議室には独特な空気が漂っていた。
怒りで顔を赤く染める王と顔が青く縮こまる側近たち。
どんな喜劇でもここまで愉快なものはそうそうあるまい。
「まだ見つからないのか!」
怒声が会議室の中を走った。
肩を縮める重臣たちを王は血走った目で睨みつけた。
「一刻も早く、あの恩知らずを俺の元に連れてこい! 何としてもだ! この際生死は問わん!」
「し、しかし、どこを探してもおらぬのです」
「そんなはずはない! 探すのだ!」
「探しております! 寝る間を惜しんで捜索にあたっているのですが、未だ痕跡1つ見つからないのです!」
叫ぶように答えた側近は王はギラり睨みつけた。
その気迫にやられた側近はさらに身を縮こませる。
焦ってる。
カイラスを神格化する民衆の声はついに王の耳にも届いている。
せっかく築いた基盤がほんの数ヶ月で格下だったはずのカイラスに覆られそうなことにどうも我慢できぬようだった。
「いいか! 何としてでもカイラスを見つけ出せ! もう一度ユーバ要塞を隅から隅まで痕跡を探すのだ」
「何度もしております! それでも、見つからぬのです」
「うるさい!!」
癇癪をおこした子供のように王は机を何度も叩いた。
醜い。
醜い豚である。
餌を強請るように鳴き続けるこの豚はカイラスという餌を与えなければ満足しないようだった。
「…もしくは」
バグダスは静かに言った。
会議室が、シン、と静まり返るのを感じた。
「――何だ、申してみよ。バグダス」
王がこめかみに血管を浮き上がらせながらいった。
それだけでも王の側近たちは震えあがるほどだろう。
しかし、バグダスはにこやかに言った。
「不躾ながら申し上げます。ここまで見つけられなければカイラスの行方はもうこの国にはないのかもしれません」
「…なん、だと 」
王の口元は震えた。
1番王が恐れていること、分かっていてあえて無視をしていたことをバグダスは発言した。
「隣国に、カイラスは渡っているのかもしれません」
「し、証拠はあるのか?」
「ない、というのも1つの証拠かもしれません。カイラスが司令官だったユーバ要塞にカイラスの痕跡が何一つないのも、腹心のハクギンの姿が見えないのも、隣国と繋がっていたから。そう考えられませんか?」
「しかし、隣国と我が国は休戦をしてすでに30年経っている。それは不可能ではないか?」
「この世には不可能なんてものはありません」
王の席に近い重臣の1人が口をだした理想論をバグダスは一蹴した。
青白くなる重臣たちを愉快に思いながらバグダスは口を開く。
「もしそうなると…、カイラスは隣国を伴って王都を征服するに違いありません。いや、隣国だけならまだよいでしょう。他の隣国と友好関係を結んでいる他国も一気に征服しに――」
「とにかく!!」
机を叩いた王がバクダスの喋りを邪魔をした。
赤くなった顔はまさに道化師のそれである。
血走った目でバクダスたちを見渡し、大声で叫んだ。
「一刻も早くカイラスを見つけ出せ! そしてやつの死体を城門に飾らせるのだ!」
…醜い豚が鳴き喚く姿がこれほど愉快なものとは思いも寄らなかった。
怒りで顔を赤く染める王と顔が青く縮こまる側近たち。
どんな喜劇でもここまで愉快なものはそうそうあるまい。
「まだ見つからないのか!」
怒声が会議室の中を走った。
肩を縮める重臣たちを王は血走った目で睨みつけた。
「一刻も早く、あの恩知らずを俺の元に連れてこい! 何としてもだ! この際生死は問わん!」
「し、しかし、どこを探してもおらぬのです」
「そんなはずはない! 探すのだ!」
「探しております! 寝る間を惜しんで捜索にあたっているのですが、未だ痕跡1つ見つからないのです!」
叫ぶように答えた側近は王はギラり睨みつけた。
その気迫にやられた側近はさらに身を縮こませる。
焦ってる。
カイラスを神格化する民衆の声はついに王の耳にも届いている。
せっかく築いた基盤がほんの数ヶ月で格下だったはずのカイラスに覆られそうなことにどうも我慢できぬようだった。
「いいか! 何としてでもカイラスを見つけ出せ! もう一度ユーバ要塞を隅から隅まで痕跡を探すのだ」
「何度もしております! それでも、見つからぬのです」
「うるさい!!」
癇癪をおこした子供のように王は机を何度も叩いた。
醜い。
醜い豚である。
餌を強請るように鳴き続けるこの豚はカイラスという餌を与えなければ満足しないようだった。
「…もしくは」
バグダスは静かに言った。
会議室が、シン、と静まり返るのを感じた。
「――何だ、申してみよ。バグダス」
王がこめかみに血管を浮き上がらせながらいった。
それだけでも王の側近たちは震えあがるほどだろう。
しかし、バグダスはにこやかに言った。
「不躾ながら申し上げます。ここまで見つけられなければカイラスの行方はもうこの国にはないのかもしれません」
「…なん、だと 」
王の口元は震えた。
1番王が恐れていること、分かっていてあえて無視をしていたことをバグダスは発言した。
「隣国に、カイラスは渡っているのかもしれません」
「し、証拠はあるのか?」
「ない、というのも1つの証拠かもしれません。カイラスが司令官だったユーバ要塞にカイラスの痕跡が何一つないのも、腹心のハクギンの姿が見えないのも、隣国と繋がっていたから。そう考えられませんか?」
「しかし、隣国と我が国は休戦をしてすでに30年経っている。それは不可能ではないか?」
「この世には不可能なんてものはありません」
王の席に近い重臣の1人が口をだした理想論をバグダスは一蹴した。
青白くなる重臣たちを愉快に思いながらバグダスは口を開く。
「もしそうなると…、カイラスは隣国を伴って王都を征服するに違いありません。いや、隣国だけならまだよいでしょう。他の隣国と友好関係を結んでいる他国も一気に征服しに――」
「とにかく!!」
机を叩いた王がバクダスの喋りを邪魔をした。
赤くなった顔はまさに道化師のそれである。
血走った目でバクダスたちを見渡し、大声で叫んだ。
「一刻も早くカイラスを見つけ出せ! そしてやつの死体を城門に飾らせるのだ!」
…醜い豚が鳴き喚く姿がこれほど愉快なものとは思いも寄らなかった。
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる