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3章
逃亡2
しおりを挟む「アリス、あとで、あとで言うから…!」
雪の中を走るコウにアリスはおびえながらもおとなしくなった。
抵抗しても無駄だというのがわかっているのだろう。
その聡さの理由がわかった。
そして「ウサギ」という存在にも。
きっとアリスの故郷である隣国にいるのだろう。
何かしらの理由でアリスはウサギと離れ離れになり、今このユーバ要塞にいる。
きっとカイラスやアーサーの命令でコウを誑かせと言ったに違いない。
すべて全うできれば家に帰すとでも言って。
コウはまんまとだまされたのだ。
「くそ…!」
アリスの抱く力を無意識に強めた。
アリスのうめく声で気が付きコウは腕の力をゆるめた。
「ご、ごめんアリス…」
「…コウ」
アリスの表情は優れない。
当たり前だ。
アリスから出てはいけないと言われているのに、コウによってこうやって外に出され、あてもなく彷徨っている。
不安そうな顔に申し訳なくなりながらも、コウは道をすすむ。
このあたりの森を抜ければユーバ山脈の峠越えを安全にできるトンネルがある。
まさかそれが輸場山脈だったときに使用されていたトンネルの名残とは思いもよらなかったが。
「…あった」
見つけるのは時間はそうかからなかった。
中は貯蓄されている備品があるとのことだったが、本当はカイラスが秘密裏に交流をとっている隣国との密輸ルートだとしたら、出口はアリスの故郷である隣国のはずだ。
このままではアリスの身に危険がさらに及ぶ。
それならばアリスにとっていいのは故郷である隣国に返すことなのだ。
いまのところアリスの様子も、周りの様子も問題ない。
一気に走り、出口を目指すのだ。
そう思ってトンネルに入ろうとする時だった。
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