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第3章:南海の決闘
第174話:目覚めるもう1つの神獣
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「もう一体だと!?ふざけたことを言うな!」
ゲイルの怒号が地鳴りにかき消される。
しかしルークは不思議と確信があった。
かつてキールに聞かされた言葉が頭をよぎる。
― 島に封印された神獣が目覚める時、もう1体も目覚める ― と。
「やはりそうなのか……?」
ルークたちが見守る中、島を襲う揺れはますます激しくなっていく。
「何か出てくるぞ!」
ガストンの言葉に振り返ると、島の反対側にある山が崩落する様子が目に飛び込んできた。
山の頂から巨大な何かが姿を現そうとしている。
「あれが……リヴァイアサンなのか……?」
ルークは固唾を飲んでその何かを見守っていた。
それは魚ともトカゲともつかない不思議な形状をしていた。
造形としては肺魚に近いだろうか。
魚に酷似してはいるが胸鰭が爬虫類の肢のように変化している。
そして恐ろしく巨大だった。
その巨大な口はドラゴンすら一口で飲みこむと言われている。
世界を飲み込む海獣、とも伝えられるその神獣は体のサイズだけならクラーケンをも上回っていた。
リヴァイアサンと比べたらベヒーモスですら仔犬程度のサイズしかない。
「ふざけるなよ……クラーケンですら手に余るってのに、あんなのまで出てきやがるのか」
流石のゲイルも顔を引きつらせている。
覚醒したリヴァイアサンは山頂にまたがって辺りを見渡していた。
虚ろなその眼からはなんの意思も感じられない。
「何かを探している……?」
リヴァイアサンが巨大な口を開いた。
ボエエエエエエッ!!
おぞましい咆哮が島を揺らす。
音の衝撃波だけでタイラが昏倒した。
「な、なんだ、この声は!」
リヴァイアサンの咆哮は果てることなく続いている。
そしてその声に呼応するかのようにひと際大きく島が揺れた。
「うおっ!」
いきなりゲイルが吹き飛ばされる。
「なにっ!?」
ルークが振り返ると目の前に巨大な腕が迫っていた。
「うわあっ!」
横っ飛びに逃げてなんとか腕をかわす。
「もう復活したのか!」
慌てて防戦体制を取るルーク。
しかし何か様子がおかしかった。
クラーケンは巨体を蠢かしながらルークたちの前を通り過ぎていく。
「なんじゃあ?あ奴、儂らには目もくれとらんぞ」
「まさか、リヴァイアサンの方へ……?」
木々を踏み倒しながら進むクラーケンの進行方向にはリヴァイアサンがいる。
「今の咆哮は威嚇だったのか?」
リヴァイアサンの咆哮は尚も続いている。
クラーケンが近づくにつれそれは明らかに警戒の響きを持つようになっていた。
「ハ、ちょうどいいじゃないか。化け物同士潰し合ってくれればこちらの手が省けるというものだ」
「それは駄目!」
ゲイルの言葉を大きく否定したのはキールだった。
「あの神獣たちが戦うことになればこの島は滅んでしまう!」
「僕も同感です。あの2体が争えばどれだけの規模の二次被害が起こるのか想像もできない。そうなる前に止めないと」
誰にも言っていないがルークの危惧は他にもあった。
先ほどから地震が収まっていないのだ。
どうやら神獣たちの魔力で島の地下に眠る魔石の鉱脈が反応しているらしい。
神獣たちが戦えば反応は更に激しくなるだろう。
そうなれば島が岩盤ごと崩壊してもおかしくない。
これだけの大きさの島が丸ごと崩落すればその被害はアロガス王国のある本土にも及ぶ。
大災害を防ぐためにもここで止めるしかなかった。
「でもよう、あんな化け物をどうやって止めんだよ?1体だけでも手こずっていたんだぜ?」
ガストンの言葉はもっともだった。
クラーケンだけでも厄介なのに今はリヴァイアサンまでいる。
「幸い今はクラーケンとリヴァイアサンの注意が逸れている。その間にもう一度根源魔法を唱えてみるよ」
ルークは再び詠唱を開始した。
しかし仮に根源魔法が効いたとしても効果があるのはおそらく1体のみ、残る1体をどうしたらいいのかはルークにもわからなかった。
再びルークの周りに魔力が集まっていく。
同時に地面のそこかしこから光が溢れてきた。
「何これ?」
「おそらく魔石の光じゃな。神獣の魔力とこのルークの魔力に反応しとるのじゃろう」
驚くアルマにサイフォスが答える。
「だ、大丈夫なのかしら?」
詠唱を唱えるルークも驚いていた。
二体の神獣が目覚めたことで島全体が活性化しているようだ。
(でもおかげで今まで以上に上手く魔法を展開できている。これなら……いけるかも!)
渦を巻いてルークの元に集まる魔力はさながら光の竜巻のように天を貫いていく。
「おい、ちょっとやり過ぎなんじゃないのか!これは流石に気付かれるぞ」
ゲイルの焦りは現実のものとなりつつあった。
クラーケンが進行を止めてこちらを振り向く。
リヴァイアサンも威嚇の声を止めてこちらを見ている。
ガストンの顔が青ざめる。
「や、やべえぜ。あいつらこっちを向きやがった」
(もう少し、もう少しで詠唱が完成するんだ)
必死になって詠唱を続けるルークだったが、わずかに遅かった。
クラーケンが腕を振り上げる。
リヴァイアサンが巨大尾びれを大地に叩きつけ、その巨躯を宙に舞い上がらせる。
「うおおおおおおおっ!!!」
頭上から降ってくる二体の神獣を前に誰もが死を覚悟していた。
「はいドーーーーーン!」
突然飛んできた何かがリヴァイアサンに突き刺さった。
リヴァイアサンの巨体が吹き飛び、クラーケンを巻き込んで海へと落ちていく。
衝撃で巨大な波しぶきが天まで立ち上った。
「な、なんだ?何が起きたんだ?」
ルークは唖然として空を見上げた。
降りしきる飛沫の中、空中に浮かぶ人影が見える。
「はぁい、ルーク。助けに来たよん」
その声にルークは耳を疑った。
なんでここに?いるはずがないのに!
しかし妙に緊張感のないその声を聞き間違えるはずはなかった。
「師匠!?」
そこにいたのは山奥に封印されていたはずのイリスだった。
ゲイルの怒号が地鳴りにかき消される。
しかしルークは不思議と確信があった。
かつてキールに聞かされた言葉が頭をよぎる。
― 島に封印された神獣が目覚める時、もう1体も目覚める ― と。
「やはりそうなのか……?」
ルークたちが見守る中、島を襲う揺れはますます激しくなっていく。
「何か出てくるぞ!」
ガストンの言葉に振り返ると、島の反対側にある山が崩落する様子が目に飛び込んできた。
山の頂から巨大な何かが姿を現そうとしている。
「あれが……リヴァイアサンなのか……?」
ルークは固唾を飲んでその何かを見守っていた。
それは魚ともトカゲともつかない不思議な形状をしていた。
造形としては肺魚に近いだろうか。
魚に酷似してはいるが胸鰭が爬虫類の肢のように変化している。
そして恐ろしく巨大だった。
その巨大な口はドラゴンすら一口で飲みこむと言われている。
世界を飲み込む海獣、とも伝えられるその神獣は体のサイズだけならクラーケンをも上回っていた。
リヴァイアサンと比べたらベヒーモスですら仔犬程度のサイズしかない。
「ふざけるなよ……クラーケンですら手に余るってのに、あんなのまで出てきやがるのか」
流石のゲイルも顔を引きつらせている。
覚醒したリヴァイアサンは山頂にまたがって辺りを見渡していた。
虚ろなその眼からはなんの意思も感じられない。
「何かを探している……?」
リヴァイアサンが巨大な口を開いた。
ボエエエエエエッ!!
おぞましい咆哮が島を揺らす。
音の衝撃波だけでタイラが昏倒した。
「な、なんだ、この声は!」
リヴァイアサンの咆哮は果てることなく続いている。
そしてその声に呼応するかのようにひと際大きく島が揺れた。
「うおっ!」
いきなりゲイルが吹き飛ばされる。
「なにっ!?」
ルークが振り返ると目の前に巨大な腕が迫っていた。
「うわあっ!」
横っ飛びに逃げてなんとか腕をかわす。
「もう復活したのか!」
慌てて防戦体制を取るルーク。
しかし何か様子がおかしかった。
クラーケンは巨体を蠢かしながらルークたちの前を通り過ぎていく。
「なんじゃあ?あ奴、儂らには目もくれとらんぞ」
「まさか、リヴァイアサンの方へ……?」
木々を踏み倒しながら進むクラーケンの進行方向にはリヴァイアサンがいる。
「今の咆哮は威嚇だったのか?」
リヴァイアサンの咆哮は尚も続いている。
クラーケンが近づくにつれそれは明らかに警戒の響きを持つようになっていた。
「ハ、ちょうどいいじゃないか。化け物同士潰し合ってくれればこちらの手が省けるというものだ」
「それは駄目!」
ゲイルの言葉を大きく否定したのはキールだった。
「あの神獣たちが戦うことになればこの島は滅んでしまう!」
「僕も同感です。あの2体が争えばどれだけの規模の二次被害が起こるのか想像もできない。そうなる前に止めないと」
誰にも言っていないがルークの危惧は他にもあった。
先ほどから地震が収まっていないのだ。
どうやら神獣たちの魔力で島の地下に眠る魔石の鉱脈が反応しているらしい。
神獣たちが戦えば反応は更に激しくなるだろう。
そうなれば島が岩盤ごと崩壊してもおかしくない。
これだけの大きさの島が丸ごと崩落すればその被害はアロガス王国のある本土にも及ぶ。
大災害を防ぐためにもここで止めるしかなかった。
「でもよう、あんな化け物をどうやって止めんだよ?1体だけでも手こずっていたんだぜ?」
ガストンの言葉はもっともだった。
クラーケンだけでも厄介なのに今はリヴァイアサンまでいる。
「幸い今はクラーケンとリヴァイアサンの注意が逸れている。その間にもう一度根源魔法を唱えてみるよ」
ルークは再び詠唱を開始した。
しかし仮に根源魔法が効いたとしても効果があるのはおそらく1体のみ、残る1体をどうしたらいいのかはルークにもわからなかった。
再びルークの周りに魔力が集まっていく。
同時に地面のそこかしこから光が溢れてきた。
「何これ?」
「おそらく魔石の光じゃな。神獣の魔力とこのルークの魔力に反応しとるのじゃろう」
驚くアルマにサイフォスが答える。
「だ、大丈夫なのかしら?」
詠唱を唱えるルークも驚いていた。
二体の神獣が目覚めたことで島全体が活性化しているようだ。
(でもおかげで今まで以上に上手く魔法を展開できている。これなら……いけるかも!)
渦を巻いてルークの元に集まる魔力はさながら光の竜巻のように天を貫いていく。
「おい、ちょっとやり過ぎなんじゃないのか!これは流石に気付かれるぞ」
ゲイルの焦りは現実のものとなりつつあった。
クラーケンが進行を止めてこちらを振り向く。
リヴァイアサンも威嚇の声を止めてこちらを見ている。
ガストンの顔が青ざめる。
「や、やべえぜ。あいつらこっちを向きやがった」
(もう少し、もう少しで詠唱が完成するんだ)
必死になって詠唱を続けるルークだったが、わずかに遅かった。
クラーケンが腕を振り上げる。
リヴァイアサンが巨大尾びれを大地に叩きつけ、その巨躯を宙に舞い上がらせる。
「うおおおおおおおっ!!!」
頭上から降ってくる二体の神獣を前に誰もが死を覚悟していた。
「はいドーーーーーン!」
突然飛んできた何かがリヴァイアサンに突き刺さった。
リヴァイアサンの巨体が吹き飛び、クラーケンを巻き込んで海へと落ちていく。
衝撃で巨大な波しぶきが天まで立ち上った。
「な、なんだ?何が起きたんだ?」
ルークは唖然として空を見上げた。
降りしきる飛沫の中、空中に浮かぶ人影が見える。
「はぁい、ルーク。助けに来たよん」
その声にルークは耳を疑った。
なんでここに?いるはずがないのに!
しかし妙に緊張感のないその声を聞き間違えるはずはなかった。
「師匠!?」
そこにいたのは山奥に封印されていたはずのイリスだった。
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