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第七部~砂漠の雨:夏の禍
9.高まる疑念
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それから一週間、俺はひたすら噴霧器を作っていた。
いや、俺だけじゃなくアマーリアたちにも手伝ってもらって総出で作っていた。
材料の鉄板がなくなるまで数にして二千台は作ったと思う。
ゴルドからはリンネ姫の助手として魔導士が数名、更には文官であるソラノの父親のアダムも加わって作業を手伝ってくれた。
アダムは俺が作った噴霧器の構造を逐一特許にするためで、これ一つだけで特許が幾つもできますよと苦笑いしていた。
そんなこんなで連日作り続け、ようやく作業が終わった時は流石に疲労困憊だった。
「つ、疲れた…」
俺は長椅子に身を投げ出した。
今回は事態が事態だけに他の職人に作り方を教えるよりも早いからと俺が全ての部品を作っていたのだ。
それ自体は大したことなかったんだけど、ひたすら同じ作業を続けるのは流石にうんざりしてくる。
「作り方をきちんと考えて誰でも作れるようにしないと駄目だな…」
そんなことを考えていると突然頭が持ち上がり、柔らかいものの上に置かれた。
見上げるとそれは俺の頭を膝枕するリンネ姫の姿が見えた。
「ご苦労だったな」
優しげな眼差して見下ろしてくる。
「そっちこそずっと除虫菊エキスを作りっぱなしだったんだろ?お疲れ様だよ」
「こっちは魔法を発動させてしまえばあらかた自動で行われるから大したことないさ。それよりも今回もお主に救われてしまったな」
リンネ姫はそう言いながらさらさらと俺の髪を弄んでいる。
頭に触れるリンネ姫の手が心地良くて俺はうっとりと目を閉じていた。
「既に今回の農薬と噴霧器の評判が届いているぞ。なんでも大した効果を上げているらしい」
「それは良かった。それもリンネ姫のおかげだよ。多分俺の方法で作っていたらここまで効果はなかったと思う」
「それでもお主のお陰だよ、テツヤ。お主が除虫菊と呼ぶ花の可能性を示してくれなんだら私には思いつくこともできなかった。お主は我が国の国民数万、数十万を救ってくれたのだよ」
「そんな大げさな…」
リンネ姫が俺の口を指で塞いだ。
「大げさなどではない。凶作を防ぐというのはそれだけ大事なことなのだ。お主の貢献に私は報いねばならない。何でも言ってくれ。私にできることなら何でもしよう」
「なんでも?」
「ああ、なんでもだ」
そう言いながらリンネ姫は立ち上がると俺の上に覆いかぶさってきた。
リンネ姫の柔らかな髪が俺の顔にかかる。
それを手で払いながらリンネ姫の唇が俺の唇に重なってきた。
柔らかな胸が艶めかしく形を歪める感触が服越しに伝わってくる。
「何でも良いぞ。初めてだから上手くできるが自信はないがお主の望むことなら何でも応えよう」
熱い吐息を漏らしながらリンネ姫が耳元で呟いた。
「失礼します」
その時ドアが開いてリンネ姫の護衛隊長であるセレンが入ってきた。
「お楽しみ中でしたか。では二時間後にまた出直してきます」
セレンは固まる俺たちの姿を目にしても全く動揺することなくそう告げると踵を返した。
「いや、いいんだ!そのまま話を聞かせてくれ」
「チッ」
横で身を起こしながらリンネ姫が舌打ちをしている。
いや舌打ちって…
「よろしいのですか?それでは…」
セレンは再びこちらを振り向くと手に持っていた羊皮紙に目を落とした。
「姫様に言われていた調査の結果が届きました。やはりワールフィアとベルトラン帝国でも同じ状況の様です」
「調査?」
「ああ、今回の大発生には違和感があってな。もちろん今までに害虫が大発生することは何度かあったがここまで全国的なのは初めてだ。ならば他の国の状況も気になるというものであろう?なので調べることにしたのだ」
ずっと除虫菊エキス作りをしていると思っていたらそんなこともしていたのか。
「ワールフィアの方は我が国よりも遥かに被害は軽微でした。しかしこれはドライアドの尽力があってのことらしく、後日姫様とテツヤに連絡を取りたいと仰っています」
セレンが話を続けた。
「しかしベルトラン帝国の方は我が国よりはるかに深刻なようです。こちらからは先日結んだ協定に基づいて我が国と協業で今回の事態にあたりたいと打診が入っています」
セレンの話を俺は呆気にとられながら聞いていた。
ワールフィアとベルトラン帝国も同じ状況だと?
まさかここまで規模の大きな話だったなんて想像もしていなかった。
「やはりそうだったか…」
リンネ姫の方はある程度想像していたのか先ほどまでとは打って変わって厳しい表情をしている。
「実のところベルトラン帝国に関しては予想はしていたのだ。二月ほど前からベルトラン帝国の作物価格が急激に高騰していたからな」
眉間にしわを寄せながらリンネ姫は話を続けた。
「しかしまさかベルトラン帝国の方からこちらに助けを求めてくる程とはな…」
あの己と帝国に対して絶対の自信を持っているゼファーが協力を仰ぐほどなのだ、よっぽどの事態なのだろう。
「ひとまずワールフィアのフェリエ殿と話をすることにしよう」
リンネ姫はそう言いながら立ち上がった。
いや、俺だけじゃなくアマーリアたちにも手伝ってもらって総出で作っていた。
材料の鉄板がなくなるまで数にして二千台は作ったと思う。
ゴルドからはリンネ姫の助手として魔導士が数名、更には文官であるソラノの父親のアダムも加わって作業を手伝ってくれた。
アダムは俺が作った噴霧器の構造を逐一特許にするためで、これ一つだけで特許が幾つもできますよと苦笑いしていた。
そんなこんなで連日作り続け、ようやく作業が終わった時は流石に疲労困憊だった。
「つ、疲れた…」
俺は長椅子に身を投げ出した。
今回は事態が事態だけに他の職人に作り方を教えるよりも早いからと俺が全ての部品を作っていたのだ。
それ自体は大したことなかったんだけど、ひたすら同じ作業を続けるのは流石にうんざりしてくる。
「作り方をきちんと考えて誰でも作れるようにしないと駄目だな…」
そんなことを考えていると突然頭が持ち上がり、柔らかいものの上に置かれた。
見上げるとそれは俺の頭を膝枕するリンネ姫の姿が見えた。
「ご苦労だったな」
優しげな眼差して見下ろしてくる。
「そっちこそずっと除虫菊エキスを作りっぱなしだったんだろ?お疲れ様だよ」
「こっちは魔法を発動させてしまえばあらかた自動で行われるから大したことないさ。それよりも今回もお主に救われてしまったな」
リンネ姫はそう言いながらさらさらと俺の髪を弄んでいる。
頭に触れるリンネ姫の手が心地良くて俺はうっとりと目を閉じていた。
「既に今回の農薬と噴霧器の評判が届いているぞ。なんでも大した効果を上げているらしい」
「それは良かった。それもリンネ姫のおかげだよ。多分俺の方法で作っていたらここまで効果はなかったと思う」
「それでもお主のお陰だよ、テツヤ。お主が除虫菊と呼ぶ花の可能性を示してくれなんだら私には思いつくこともできなかった。お主は我が国の国民数万、数十万を救ってくれたのだよ」
「そんな大げさな…」
リンネ姫が俺の口を指で塞いだ。
「大げさなどではない。凶作を防ぐというのはそれだけ大事なことなのだ。お主の貢献に私は報いねばならない。何でも言ってくれ。私にできることなら何でもしよう」
「なんでも?」
「ああ、なんでもだ」
そう言いながらリンネ姫は立ち上がると俺の上に覆いかぶさってきた。
リンネ姫の柔らかな髪が俺の顔にかかる。
それを手で払いながらリンネ姫の唇が俺の唇に重なってきた。
柔らかな胸が艶めかしく形を歪める感触が服越しに伝わってくる。
「何でも良いぞ。初めてだから上手くできるが自信はないがお主の望むことなら何でも応えよう」
熱い吐息を漏らしながらリンネ姫が耳元で呟いた。
「失礼します」
その時ドアが開いてリンネ姫の護衛隊長であるセレンが入ってきた。
「お楽しみ中でしたか。では二時間後にまた出直してきます」
セレンは固まる俺たちの姿を目にしても全く動揺することなくそう告げると踵を返した。
「いや、いいんだ!そのまま話を聞かせてくれ」
「チッ」
横で身を起こしながらリンネ姫が舌打ちをしている。
いや舌打ちって…
「よろしいのですか?それでは…」
セレンは再びこちらを振り向くと手に持っていた羊皮紙に目を落とした。
「姫様に言われていた調査の結果が届きました。やはりワールフィアとベルトラン帝国でも同じ状況の様です」
「調査?」
「ああ、今回の大発生には違和感があってな。もちろん今までに害虫が大発生することは何度かあったがここまで全国的なのは初めてだ。ならば他の国の状況も気になるというものであろう?なので調べることにしたのだ」
ずっと除虫菊エキス作りをしていると思っていたらそんなこともしていたのか。
「ワールフィアの方は我が国よりも遥かに被害は軽微でした。しかしこれはドライアドの尽力があってのことらしく、後日姫様とテツヤに連絡を取りたいと仰っています」
セレンが話を続けた。
「しかしベルトラン帝国の方は我が国よりはるかに深刻なようです。こちらからは先日結んだ協定に基づいて我が国と協業で今回の事態にあたりたいと打診が入っています」
セレンの話を俺は呆気にとられながら聞いていた。
ワールフィアとベルトラン帝国も同じ状況だと?
まさかここまで規模の大きな話だったなんて想像もしていなかった。
「やはりそうだったか…」
リンネ姫の方はある程度想像していたのか先ほどまでとは打って変わって厳しい表情をしている。
「実のところベルトラン帝国に関しては予想はしていたのだ。二月ほど前からベルトラン帝国の作物価格が急激に高騰していたからな」
眉間にしわを寄せながらリンネ姫は話を続けた。
「しかしまさかベルトラン帝国の方からこちらに助けを求めてくる程とはな…」
あの己と帝国に対して絶対の自信を持っているゼファーが協力を仰ぐほどなのだ、よっぽどの事態なのだろう。
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リンネ姫はそう言いながら立ち上がった。
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