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魔界へ
22.龍人国との交渉
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翌日、俺たちは再びラングの前に集まった
「早速本題に入るがドライアドの国を作りたいのであったな?そのために隣国である我ら龍人族に話を通したいと」
ラングの言葉にフェリエが緊張した面持ちで頷いた。
「既に知っていらっしゃると思いますがヒト族のベルトラン帝国が侵攻する計画があります。かの国の侵攻を止めるためにも我々は国として団結する必要があるのです」
「ふむ」
ラングは顎髭をさすって唸った。
その表情は昨晩アマーリアをからかっていた気のいい叔父さんではなく一族を束ねる長のそれだった。
「我が姪、アマーリアが直々に来たということはその話に間違いはないのだろうな。対抗するために国を作りたいという考えも理解できる。我々龍人族としてもドライアドが国を作るということに異を唱えるつもりはない」
「では!」
破顔するフェリエをラングは手で制し、こちらに振り返った。
「その前にテツヤ殿、お主に聞きたいことがある」
な、なんだ?何を聞くつもりなんだ?
「何故お主はそこまで加担するのだ?確かに我々魔族とベルトラン帝国が戦争になればフィルドにもその禍は及ぶだろう。縁あったドライアドたちを救いたいという気持ちもわかる。だがお主個人としてここまで動く理由は何だ?何がお主をそこまで駆り立てる?」
そう言って俺を見つめるラングの眼は澄み渡った湖面のように何の表情も見せていない。
しかしその眼はほんのおためごかしも許さないと物語っていた。
今、俺は試されている。肌でそう理解した。
「もちろんフィルド王国のためという気持ちはあります」
沈黙の後で俺は口を開いた。
「ここにいるアマーリア…さんを含め俺はフィルド王国の多くの人たちに助けられてきた。その人達が苦しむことになるのを見過ごすわけにはいかない。それにドライアドたちもです。ひょんなことで知り合っただけとはいえ、差し出した手を途中で引っ込めるようなことはしたくない」
ラングは何も言わず俺の言葉を聞いている。
俺は唾を呑み込んだ。
「……でも、俺個人としては…」
意を決して言葉を続ける。
「ベルトラン帝国に一泡吹かせてやりたいって気持ちもあります」
「はっ!」
ラングが破顔した。
「一泡吹かせるか!この大陸でもっとも強大なベルトラン帝国に!」
「だってそうでしょう?相手は勝手に攻め込んでくるっていうんだ。こっちの都合なんてお構いなしだ。そんな連中の機嫌を伺いながらこそこそ生きるなんて御免だし、やれるもんならその面に一発かましてやりたい、それだって俺の本心だ」
「お主、自分の言った意味が分かっているのか?お主は今自分の都合でドライアドたちをベルトラン帝国に立ち向かわせようとしているのだぞ?その結果、ドライアドたちに何が起こるのか分かっているのか?」
「確かにベルトラン帝国に一泡吹かせたいというのは俺の勝手な願いに過ぎない。でもフェリエやドライアドにとってこれは死活問題なんだ」
俺は言葉を続けた。
「彼女たちはベルトラン帝国にずっと苦しめられてきた。今何もしなければそれはこれからも続く。だから彼女たちは立ち上がったんだ。何かをしたことで起こることよりも何もしなかったことで起こることの方が耐え難いと分かっているからだ。俺は俺のわがままを通すために彼女たちをそそのかしたわけじゃない!」
フェリエが前に出た。
「私もテツヤさんと同意見です。私たちは今まで何もしなかったことでベルトラン帝国の横暴を許してきました。今立ち向かわなければ私たちはずっと足蹴にされたままです!」
そう言ったフェリエの眼差しに今までの気弱な光はなかった。
「わかったわかった」
ラングが両手を振った。
「別にお主らを説教したいわけではないのだ。むしろその逆だ」
そう言って俺の方を見てにやりと笑った。
「テツヤよ、お主のベルトラン帝国に目にもの見せてやりたいという意見は気に入ったぞ。というかそうでなくてはならん!」
「そう…ですか」
「おうよ!国を興すってのは元々強大な隣国に対する対抗心から来てるものよ。どれだけ美辞麗句を並べたところでそれは変わらん。俺たちに手を出すと痛い目を見るぞってな警告が国というモノの本質よ」
ラングが身を乗り出した。
「だからな、国を作るにはその気概がなきゃならん。民を従え平和に過ごす、それも結構だ。だがその奥には常に刃を潜ませていなきゃならんのだ」
「じゃ、じゃあ……」
「ああ、龍人族の長ラング・ペンドラゴンがここに宣言する。我が龍人族はドライアドの国を作ることを支持しよう」
「ありがとうございます!」
俺とフェリエは揃って頭を下げた。
「喜ぶのはまだ早いぞ。お主たちが国を興すにはまだあと二国の許可を得ねばならん。この二国は我々のようにはいかんぞ。特に吸血族、この国をどうにかせんことには始まらんだろう」
「吸血族に何かあるんですか?」
「あの国は王の暴虐から目下内乱状態にある。まずは国をまとめ上げねば話を付けることもできぬだろう」
そ、そうだったのか…まさかそんな面倒なことになっているとは。
「悪いが我々がそれに力を貸すことはできない。不干渉の協定を結んでいるのでな」
「わかりました。そちらは俺たちでなんとかします。教えていただきありがとうございます」
「なんのなんの、無事に国を作れることを祈っているぞ。できた暁にはまたあの唐辛子とやらを持ってきてくれ。あれがなくてはもう料理の味気が無くてな。まったくとんでもない物を持ってきてくれたものだな」
ラングはそう言って高笑いした。
結局土産として持ってきた唐辛子は宴会の席で大好評で瞬く間になくなってしまったのだ。
「わかりました。国を興した時は真っ先に龍人国との優先契約を結ぶことをお約束します!」
「おお、よろしく頼んだぞ!」
フェリエとラングが固い握手を交わした。
これで一つクリアだ。
「早速本題に入るがドライアドの国を作りたいのであったな?そのために隣国である我ら龍人族に話を通したいと」
ラングの言葉にフェリエが緊張した面持ちで頷いた。
「既に知っていらっしゃると思いますがヒト族のベルトラン帝国が侵攻する計画があります。かの国の侵攻を止めるためにも我々は国として団結する必要があるのです」
「ふむ」
ラングは顎髭をさすって唸った。
その表情は昨晩アマーリアをからかっていた気のいい叔父さんではなく一族を束ねる長のそれだった。
「我が姪、アマーリアが直々に来たということはその話に間違いはないのだろうな。対抗するために国を作りたいという考えも理解できる。我々龍人族としてもドライアドが国を作るということに異を唱えるつもりはない」
「では!」
破顔するフェリエをラングは手で制し、こちらに振り返った。
「その前にテツヤ殿、お主に聞きたいことがある」
な、なんだ?何を聞くつもりなんだ?
「何故お主はそこまで加担するのだ?確かに我々魔族とベルトラン帝国が戦争になればフィルドにもその禍は及ぶだろう。縁あったドライアドたちを救いたいという気持ちもわかる。だがお主個人としてここまで動く理由は何だ?何がお主をそこまで駆り立てる?」
そう言って俺を見つめるラングの眼は澄み渡った湖面のように何の表情も見せていない。
しかしその眼はほんのおためごかしも許さないと物語っていた。
今、俺は試されている。肌でそう理解した。
「もちろんフィルド王国のためという気持ちはあります」
沈黙の後で俺は口を開いた。
「ここにいるアマーリア…さんを含め俺はフィルド王国の多くの人たちに助けられてきた。その人達が苦しむことになるのを見過ごすわけにはいかない。それにドライアドたちもです。ひょんなことで知り合っただけとはいえ、差し出した手を途中で引っ込めるようなことはしたくない」
ラングは何も言わず俺の言葉を聞いている。
俺は唾を呑み込んだ。
「……でも、俺個人としては…」
意を決して言葉を続ける。
「ベルトラン帝国に一泡吹かせてやりたいって気持ちもあります」
「はっ!」
ラングが破顔した。
「一泡吹かせるか!この大陸でもっとも強大なベルトラン帝国に!」
「だってそうでしょう?相手は勝手に攻め込んでくるっていうんだ。こっちの都合なんてお構いなしだ。そんな連中の機嫌を伺いながらこそこそ生きるなんて御免だし、やれるもんならその面に一発かましてやりたい、それだって俺の本心だ」
「お主、自分の言った意味が分かっているのか?お主は今自分の都合でドライアドたちをベルトラン帝国に立ち向かわせようとしているのだぞ?その結果、ドライアドたちに何が起こるのか分かっているのか?」
「確かにベルトラン帝国に一泡吹かせたいというのは俺の勝手な願いに過ぎない。でもフェリエやドライアドにとってこれは死活問題なんだ」
俺は言葉を続けた。
「彼女たちはベルトラン帝国にずっと苦しめられてきた。今何もしなければそれはこれからも続く。だから彼女たちは立ち上がったんだ。何かをしたことで起こることよりも何もしなかったことで起こることの方が耐え難いと分かっているからだ。俺は俺のわがままを通すために彼女たちをそそのかしたわけじゃない!」
フェリエが前に出た。
「私もテツヤさんと同意見です。私たちは今まで何もしなかったことでベルトラン帝国の横暴を許してきました。今立ち向かわなければ私たちはずっと足蹴にされたままです!」
そう言ったフェリエの眼差しに今までの気弱な光はなかった。
「わかったわかった」
ラングが両手を振った。
「別にお主らを説教したいわけではないのだ。むしろその逆だ」
そう言って俺の方を見てにやりと笑った。
「テツヤよ、お主のベルトラン帝国に目にもの見せてやりたいという意見は気に入ったぞ。というかそうでなくてはならん!」
「そう…ですか」
「おうよ!国を興すってのは元々強大な隣国に対する対抗心から来てるものよ。どれだけ美辞麗句を並べたところでそれは変わらん。俺たちに手を出すと痛い目を見るぞってな警告が国というモノの本質よ」
ラングが身を乗り出した。
「だからな、国を作るにはその気概がなきゃならん。民を従え平和に過ごす、それも結構だ。だがその奥には常に刃を潜ませていなきゃならんのだ」
「じゃ、じゃあ……」
「ああ、龍人族の長ラング・ペンドラゴンがここに宣言する。我が龍人族はドライアドの国を作ることを支持しよう」
「ありがとうございます!」
俺とフェリエは揃って頭を下げた。
「喜ぶのはまだ早いぞ。お主たちが国を興すにはまだあと二国の許可を得ねばならん。この二国は我々のようにはいかんぞ。特に吸血族、この国をどうにかせんことには始まらんだろう」
「吸血族に何かあるんですか?」
「あの国は王の暴虐から目下内乱状態にある。まずは国をまとめ上げねば話を付けることもできぬだろう」
そ、そうだったのか…まさかそんな面倒なことになっているとは。
「悪いが我々がそれに力を貸すことはできない。不干渉の協定を結んでいるのでな」
「わかりました。そちらは俺たちでなんとかします。教えていただきありがとうございます」
「なんのなんの、無事に国を作れることを祈っているぞ。できた暁にはまたあの唐辛子とやらを持ってきてくれ。あれがなくてはもう料理の味気が無くてな。まったくとんでもない物を持ってきてくれたものだな」
ラングはそう言って高笑いした。
結局土産として持ってきた唐辛子は宴会の席で大好評で瞬く間になくなってしまったのだ。
「わかりました。国を興した時は真っ先に龍人国との優先契約を結ぶことをお約束します!」
「おお、よろしく頼んだぞ!」
フェリエとラングが固い握手を交わした。
これで一つクリアだ。
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