87 / 298
死者の国
37.リンネ姫を追え!
しおりを挟む
ノーセスの警告と同時に広間の扉が弾け飛ぶように破壊されて屍人が殺到してきた。
「クソ!こんなことに手間取ってる場合じゃないってのに!」
俺は床に手をついた。
ワンドが消えたからなのだろうか、俺の力も戻っていた。
「ぬああああああああっ!!!!」
意識を屋敷全体に広げてその構造を一気に変える!
まず門という門を全て閉じ、次に屋敷の石壁を操作して完全に入り口を塞いだ。
更に石壁や床の石畳を操作して屋敷を全く入り口のないドーム状に変える。
これなら外部の屍人は入ってこれないはずだ!
「外部は全て塞いだ!みんなは残りの屍人を対処してくれ!俺はリンネ姫を探す!」
「「「了解した!!!」」」
俺の言葉にみんなが一斉に戦闘態勢を取る。
「ノーセス!屋敷内の屍人は何体いる!?」
「二千…二千五百体くらいです!」
護衛隊長セレンの言葉にノーセスが答える。
くそ、こっちは二十人足らずだってのに。
今は広間の入り口を封鎖しているけど二千五百体のグールの圧力がかかればいずれ破られてしまうだろう。
いや、その前にリンネ姫を探さないと。
しかし何度屋敷をスキャンしてもリンネ姫の気配は追えない。
この屋敷に地下室はないみたいだから絶対に地上のどこかにいるはずなんだが……
…待て、なんでこの屋敷には地下室がないんだ?
どんなに地下をスキャンしても何も感じない。
というか、なんで地中の構造すら返ってこない?
「はい、どーーーーーーんっ!!!」
いきなり頭上から声がしたかと思うと俺のすぐそばに人影が降ってきた。
いや、人影だけじゃない、巨大なハンマーもだ。
ハンマーの一撃で足元の床が粉砕され、もうもうと土煙が舞った。
「あちゃー、外しちゃったよ」
立ち込める土煙の中から聞き覚えのある声がした。
「リュース!なんでこんなところにいるんだ!?」
「へろー。やっぱりテツヤに会いたいから来ちゃった♥」
リュースはそう言って舌を出した。
クソ、屍人ですら厄介なのにリュースの相手までしなくちゃいけないのか!
「あれ、ひょっとして壊しちゃったかな?」
リュースはそんな俺などお構いなしで床をトントンと蹴っている。
そこはさっきの一撃で床の石板が砕け散り、下に真っ黒な空間が覗いていた。
「下まで抜けちゃったかな?」
リュースはのんきにそんなことを言っているけど俺の意識は別のところにあった。
なんで地下に空間がある?この屋敷に地下室はなかったはずなんじゃ?
その瞬間、俺の頭の中に屋敷の地下室の構造が流れ込んできた。
いや、地下室なんてもんじゃない、これは…上下逆さまにしたこの屋敷の構造そのままだ。
改めて床を見ると巨大な魔法陣が描かれているのがわかった。
おそらく今まで魔術的に隠されていたのがリュースの一撃で床ごと破壊されたのだろう。
地下の存在を隠匿し、隠匿するための魔法陣すらも隠匿されていたのが今では完全に把握できるようになっていた。
この屋敷は逆になったもう一つの屋敷があったんだ!
そしてその逆屋敷の最奥、本来の屋敷の最上部にあたる場所に……リンネ姫がいる!
「リンネ姫が見つかったぞ!」
「本当か!」
俺の叫びにみんなが一斉に色めき立った。
まだ安心はできないけど少なくともこれでリンネ姫を追いかけられる!
しかしリュースの攻撃が無かったらこんなに早くわからなかったかもしれない。
……まさか、リュースはこのことを分かって…?
「いやいや、テツヤを攻撃しようとしたのに外しちゃったダケダヨ?」
リュースはとぼけた顔をしている。
相変わらず何を考えているのかはわからない、それでも俺が今すぐ行くべき場所はわかった。
その時、封印していた扉が破られた。
凄まじい数の屍人が堰を切ったように広間になだれ込んでくる。
クソ、早いところリンネ姫を追いかけなくちゃいけないのに!
焦る俺の目の前に一筋の光が閃き、目の前の屍人が軒並み切り倒された。
護衛隊長のセレンだ。
両手に持った双剣で屍人を片っ端から切り伏せていく。
黒い鎧で縦横無尽に戦うその姿はまるで黒い竜巻だ。
「行け!テツヤ!リンネ姫をお救いしてくれ!」
セレンが剣を振るいながら叫んだ。
「その通りだ!」
背後で声がした。
いつの間にか背中にはアマーリアがついていた。
「ここは私たちに任せておけ!」
アマーリアが龍牙刀を振う度に屍人が切り倒されていく。
「テツヤ、リンネ姫様を助けに行ってくれ!」
上空から声がしたかと思うと屍人たちに雷撃が落ちた。
「これしきの屍人など私たちだけで充分だ!」
弓から放たれた無数の矢が屍人たちの頭を貫いていく。
「行って、テツヤ」
フラムがかざした手から熱線が迸り、屍人たちを灰に変えていく。
護衛隊もグランの兵隊たちもみんな獅子奮迅の働きをしている。
「すまない、みんな!」
俺はリュースが開けた穴の中に飛び込んだ。
「リンネ姫は絶対に助ける!」
「クソ!こんなことに手間取ってる場合じゃないってのに!」
俺は床に手をついた。
ワンドが消えたからなのだろうか、俺の力も戻っていた。
「ぬああああああああっ!!!!」
意識を屋敷全体に広げてその構造を一気に変える!
まず門という門を全て閉じ、次に屋敷の石壁を操作して完全に入り口を塞いだ。
更に石壁や床の石畳を操作して屋敷を全く入り口のないドーム状に変える。
これなら外部の屍人は入ってこれないはずだ!
「外部は全て塞いだ!みんなは残りの屍人を対処してくれ!俺はリンネ姫を探す!」
「「「了解した!!!」」」
俺の言葉にみんなが一斉に戦闘態勢を取る。
「ノーセス!屋敷内の屍人は何体いる!?」
「二千…二千五百体くらいです!」
護衛隊長セレンの言葉にノーセスが答える。
くそ、こっちは二十人足らずだってのに。
今は広間の入り口を封鎖しているけど二千五百体のグールの圧力がかかればいずれ破られてしまうだろう。
いや、その前にリンネ姫を探さないと。
しかし何度屋敷をスキャンしてもリンネ姫の気配は追えない。
この屋敷に地下室はないみたいだから絶対に地上のどこかにいるはずなんだが……
…待て、なんでこの屋敷には地下室がないんだ?
どんなに地下をスキャンしても何も感じない。
というか、なんで地中の構造すら返ってこない?
「はい、どーーーーーーんっ!!!」
いきなり頭上から声がしたかと思うと俺のすぐそばに人影が降ってきた。
いや、人影だけじゃない、巨大なハンマーもだ。
ハンマーの一撃で足元の床が粉砕され、もうもうと土煙が舞った。
「あちゃー、外しちゃったよ」
立ち込める土煙の中から聞き覚えのある声がした。
「リュース!なんでこんなところにいるんだ!?」
「へろー。やっぱりテツヤに会いたいから来ちゃった♥」
リュースはそう言って舌を出した。
クソ、屍人ですら厄介なのにリュースの相手までしなくちゃいけないのか!
「あれ、ひょっとして壊しちゃったかな?」
リュースはそんな俺などお構いなしで床をトントンと蹴っている。
そこはさっきの一撃で床の石板が砕け散り、下に真っ黒な空間が覗いていた。
「下まで抜けちゃったかな?」
リュースはのんきにそんなことを言っているけど俺の意識は別のところにあった。
なんで地下に空間がある?この屋敷に地下室はなかったはずなんじゃ?
その瞬間、俺の頭の中に屋敷の地下室の構造が流れ込んできた。
いや、地下室なんてもんじゃない、これは…上下逆さまにしたこの屋敷の構造そのままだ。
改めて床を見ると巨大な魔法陣が描かれているのがわかった。
おそらく今まで魔術的に隠されていたのがリュースの一撃で床ごと破壊されたのだろう。
地下の存在を隠匿し、隠匿するための魔法陣すらも隠匿されていたのが今では完全に把握できるようになっていた。
この屋敷は逆になったもう一つの屋敷があったんだ!
そしてその逆屋敷の最奥、本来の屋敷の最上部にあたる場所に……リンネ姫がいる!
「リンネ姫が見つかったぞ!」
「本当か!」
俺の叫びにみんなが一斉に色めき立った。
まだ安心はできないけど少なくともこれでリンネ姫を追いかけられる!
しかしリュースの攻撃が無かったらこんなに早くわからなかったかもしれない。
……まさか、リュースはこのことを分かって…?
「いやいや、テツヤを攻撃しようとしたのに外しちゃったダケダヨ?」
リュースはとぼけた顔をしている。
相変わらず何を考えているのかはわからない、それでも俺が今すぐ行くべき場所はわかった。
その時、封印していた扉が破られた。
凄まじい数の屍人が堰を切ったように広間になだれ込んでくる。
クソ、早いところリンネ姫を追いかけなくちゃいけないのに!
焦る俺の目の前に一筋の光が閃き、目の前の屍人が軒並み切り倒された。
護衛隊長のセレンだ。
両手に持った双剣で屍人を片っ端から切り伏せていく。
黒い鎧で縦横無尽に戦うその姿はまるで黒い竜巻だ。
「行け!テツヤ!リンネ姫をお救いしてくれ!」
セレンが剣を振るいながら叫んだ。
「その通りだ!」
背後で声がした。
いつの間にか背中にはアマーリアがついていた。
「ここは私たちに任せておけ!」
アマーリアが龍牙刀を振う度に屍人が切り倒されていく。
「テツヤ、リンネ姫様を助けに行ってくれ!」
上空から声がしたかと思うと屍人たちに雷撃が落ちた。
「これしきの屍人など私たちだけで充分だ!」
弓から放たれた無数の矢が屍人たちの頭を貫いていく。
「行って、テツヤ」
フラムがかざした手から熱線が迸り、屍人たちを灰に変えていく。
護衛隊もグランの兵隊たちもみんな獅子奮迅の働きをしている。
「すまない、みんな!」
俺はリュースが開けた穴の中に飛び込んだ。
「リンネ姫は絶対に助ける!」
32
あなたにおすすめの小説
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる