外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

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トロブ防衛戦

27.混沌の果てに

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 そこにはリュースが立っていた。

「久しぶり♥元気そうじゃん」

 まるでちょっと寄ってみたとでも言うような口調で話しかけてきた。

「てめ…何しに来やがった!」

「何って……遊びに?」

 何か変なこと言った?とでも言わんばかりにきょとんと首をかしげている。

「ふざけんな!この状況を見てわかんねえのか!」

「ん~~~、ダンスパーティ…をしてるわけじゃないよね。わかった!この辺で年に一回行われる伝統行事だ!どう?当たった?」

「ふざけんじゃねえ!」

 クソ、今はリュースに構っている暇はない!

 俺は大急ぎで崩れた鉄条網を復活させた。

「ちょっとちょっと~無視するなんてつれないな~」

 リュースが手をかざすなり上空から巨大な木材が何本も降ってきた。

 鉄条網の最大の弱点は面の攻撃に弱いことだ。

 俺が復活させた鉄条網はリュースの降らせた木材によって次々に潰されていく。


「バルバルザ様、これは…」

「おう、なんだが知らねえが今のうちに逃げるぞ!」

 クソ、ケンタウロスがこの隙に乗じて逃げようとしている!

「手前ら、一匹たりとも逃がすんじゃねえぞ!」

「「「おう!!!!」」」

 グランの掛け声でトロブの兵たちが突っ込んでいく。

 今や戦況は乱戦の様相を呈してきた。

「リュース!一体何の真似だ!」

 俺はリュースに突っ込んでいった。

「何って、テツヤと遊びに来ただけだよ?」

「ふざけんじゃねえ、だったらこんなことする必要ねえだろうが!」

 俺の放つ攻撃をリュースはひらりひらりと交わしていく。

「だって~、私ってば混沌が好きなんだもん♪いや、むしろ私自身が混沌と言っていいかも?」

 クソ、こいつは何が目的なんだ。

 その時、舞うように攻撃をかわしていたリュースの喉に一本の矢が突き立った。

「!?」

 振り返るとはるか先に弓を構えたソラノが立っていた。

 ソラノがやったのか!

「はら?」

 膝をついたリュースの胴が真っ二つに寸断される。

 リュースの背後にはアマーリアが龍牙刀を構えて仁王立ちしていた。


「テツヤ!バルバルザたちを追うぞ!」

「お、おうっ…」

 アマーリアの檄に俺は踵を返した。

 ちらりと振り返ったリュースは上半身と下半身が離れ離れになりピクリとも動かない。

 怖え……

 あの二人は怒らせちゃ駄目だなと俺は深く心に刻み込んだ。



 リュースの出現により状況が大きく変わったとはいえ、依然として戦況は圧倒的にこちらが優勢だった。

 ケンタウロスの残党兵は十体足らずでそれも既に敗走をしようと虚しい試みをしているに過ぎない。

 そしてその中に敵の首魁バルバルザがいた。

「バルバルザ!逃げるな!」

 フラムが怒号と共に襲い掛かる。

「クソ、ちょこまかとうぜえんだよ!」

 バルバルザが馬上槍を振り回したが焦りと疲れで鈍くなった攻撃がフラムに当たるわけもなかった。

 フラムは素早く攻撃をかいくぐりながら鎧の隙間にナイフの刃を突き立てていく。

「ぐおおっ」

 遂にバルバルザが膝をついた。

「死ね!」

 殺意に目を光らせたフラムが飛び掛かる。


 しかし腐ってもバルバルザはケンタウロスを率いる頭領だ。

「おらぁっ!」

 地面に転がっていた鉄条網を掴むと力任せに引っ張った。

 怒りにかられて視野が狭くなっていたフラムに真横から鉄条網の束が襲い掛かる。

「危ねえっ!」

 すんでのところで俺はフラムに覆いかぶさった。

 背中や肩に鉄条網の棘がつき刺さる。

「ぐううっ!!」

 文字通り全身を引き裂かれる痛みが襲ってくる。

「!?」

 驚いたフラムが俺を振り返るが挨拶をしてる暇はない!

 俺は即座に地面から壁を作り出した。

「くたばりやがれっ!」

 バルバルザがその丸太のような後ろ脚で俺たちを蹴り上げたのはほぼ同時だった。

 急造の土壁が一瞬で破壊され、蹄が俺の腕と脇腹と食い込む。

 体の中で骨の折れる音が聞こえた。

 俺たちは真横に数メートル吹っ飛び、鉄条網の中に突っ込んでいった。


「あばよ!手前らはいずれゆっくり殺してやらあ!」

 捨て台詞を吐いてバルバルザが走り去っていく。


「テツヤ!」

 遠くなりそうな意識の中でフラムの呼ぶ声が聞こえた。

 良かった、上手く庇えたみたいだ。

 右手は折れているようで全く使えない。

 なんとか立ち上がろうと四つん這いになったところで口の中に血が溢れてきた。

 どうやらさっきの攻撃で内臓を傷つけてしまったみたいだ。


「テツヤ!テツヤ!ご免なさい!私のせいで!」

 フラムが涙をこぼしながら謝っている。

 俺はその肩を掴んだ。

「ま、まだだ!あいつを逃がすんじゃない!」

「で、でも、もうあんなに遠くに。あの距離だと私の魔法じゃ」

「大丈夫だ。あいつへの怒りをこいつにぶつけるんだ」

 俺はそう言って地面を指差した。
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