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トロブ復興
23.呪われた土の正体
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「この前の嵐で土砂崩れが起きただろ?そこから真っ黒い土が流れ出してきたんだ。ありゃ呪いの土に違いねえ!」
ヨハンスの案内で俺たちは森へ向かった。
リンネ姫一行も付いてきている。
「ほらここだ。こんな真っ黒な土、俺あ見たことねえぞ」
確かにそこは土砂崩れと共に流れだしてきた真っ黒な土で覆われていた。
まず調べてみないことには何とも言えないな。
「待て」
そう思って一歩踏み出そうとした俺をリンネ姫が制した。
「本当に呪われた土であるなら触れるのは危険だ」
リンネ姫はそう言って呪文を唱えた。
呪文と共に真っ黒い土の上に輝く魔法陣が現れ、やがて消えていった。
「どうやら呪いの類ではないようだな」
リンネ姫が安堵の息を漏らした。
「凄いな。それで呪いかどうかわかるのか」
「私は聖属性を使うからの。呪いは闇属性であり聖属性と対となる属性だから私の魔法で探知できるのだ」
「あらあら~これは大変ですね~」
その時、上空から声が聞こえた。
見上げるとそこには箒に跨ったカーリンが浮かんでいた。
「カーリンさん?」
「先生!?」
俺とリンネ姫の声はほぼ同時だった。
「お主、先生のことを知っておるのか?」
「そっちこそ、なんでカーリンさんのことを?」
「当然じゃ、このお方は私にとって恩師じゃぞ」
俺の問いにリンネ姫が胸を張って答えた。
マジかよ。
凄い力を持った魔女だとは思っていたけどまさかリンネ姫の先生をしていたとは。
「知っていたか?」
「いや、姫様はたまに長期間ゴルドを離れる時があったらその際に師事していたのだろうな」
アマーリアも知らなかったらしい。
「あらあら、リンネさんお久しぶりですね~お元気にしてましたか?」
ふわりと舞い降りたカーリンがリンネ姫に挨拶をした。
「先生もお変わりないようで。ご連絡をいただいてからいつかお伺いしようと思っていたのですが、なかなか時間が取れずに申し訳ありません」
リンネ姫が恭しくカーリンにお辞儀をした。
本当に師として尊敬していることが態度からわかる。
「本当に凄い人だったんだな」
「当たり前だ!先生は本来なら国家魔導士として王城に迎え入れるべき存在なのだぞ!先生の教えがなければ今の私などないと言っていいくらいだ」
魔具を自分で作れるレベルの魔導士であるリンネ姫が師と仰ぐなんて本当に凄い魔女だったのか。
「それでカーリンさんは何故ここに?」
「村の人から連絡があって様子を見にきたんですよ~」
カーリンはそう言って黒い土に近づき、無造作に掴み上げた。
「…これは…!」
そして驚きの声を上げる。
「な、なんですか?」
「アスファルトですね~」
「は?アスファルト?」
予想外の答えに思わず呆気にとられてしまった。
「はい、どうやら土中のアスファルトが土砂崩れで露出しただみたいです」
俺も手に取ってみた。
(天然アスファルト、成分はアスファルテンとマルテン。融点は五十度)
なるほど、確かにアスファルトだ。
「アスファルトか、何度か見たことはあるがここまで多量にあるのは初めて見るな」
リンネ姫が感心したように呟いた。
アスファルトのことを知っているのか。
「当然だ。ベルトラン帝国では昔から接着剤代わりに使っておるしな。魔法薬の原料に使うこともあるぞ。まさか我が国から出てくるとは思わなんだがな」
「じゃあこれも売れるかな」
「うーむ、それは難しいかもしれんな。フィルド王国でのアスファルトの需要はそこまで多くないしアスファルトを産出するベルトラン帝国が買ってくれるわけもないしの」
「…そうか、上手くは行かないもんだな……って、いい方法があるぞ!」
俺の頭に一つのアイディアが閃いた。
「なんじゃ、また何か思いついたのか?」
「ああ、これはちょうどトロブに必要なものだったんだ!」
◆
「まさかこれで道を敷くとは、大したものだな」
リンネ姫が感心したように嘆息した。
「俺が行った地球ではあらゆる道がアスファルトで舗装されてたんだ。トロブの道は未舗装で水たまりだらけだったから丁度良かったって訳さ」
説明しながら俺はアスファルトを操作して加熱させ、砂や砂利と混ぜ合わせて道路に敷いていった。
「アスファルトは五十度くらいに加熱すると柔らかくなるから砂利と混ぜ合わせて敷けばいずれ冷えて固まるんだ。火属性の魔法が使えれば俺じゃなくてもできるよ」
「これは凄い!これなら雨の日でも泥で汚れずに済むぞ!」
「私の家の前にも敷いてほしいわ!」
「こんな道路、他の場所じゃお目に掛かれないぞ!」
「流石はテツヤ様だ!嵐の後の復旧だけじゃなく道路まで整備してくださるなんて!」
「テツヤ様が領主になってくれて本当に良かった!」
町のみんなも初めて見るアスファルト道路に驚きの声をあげている。
いや、流石にそこまで褒められると流石に照れ臭いぞ。
「しかしこれは本当に大したものですね」
カーリンも感心している。
「いろんな国に行きましたけどアスファルトを道路にしているのを見たのは初めてです。ベルトラン王国でも見ませんでしたよ」
「うむ、アスファルトにこのような利用方法があったとはな。これで国中の道路を敷設すれば暮らしが一変するぞ。これは国家事業にする価値があるだろうな。早速父上に進言せねばなるまい」
そ、そこまでなのか?
「当たり前だ。道路事業は国家にとって常に最優先事項よ。道路が国の趨勢を決めると言ってもよいくらいなのだぞ」
リンネの言葉に俺は少し背筋が寒くなった。
俺はひょっとしてとんでもないことをしてしまったのではないだろうか。
ヨハンスの案内で俺たちは森へ向かった。
リンネ姫一行も付いてきている。
「ほらここだ。こんな真っ黒な土、俺あ見たことねえぞ」
確かにそこは土砂崩れと共に流れだしてきた真っ黒な土で覆われていた。
まず調べてみないことには何とも言えないな。
「待て」
そう思って一歩踏み出そうとした俺をリンネ姫が制した。
「本当に呪われた土であるなら触れるのは危険だ」
リンネ姫はそう言って呪文を唱えた。
呪文と共に真っ黒い土の上に輝く魔法陣が現れ、やがて消えていった。
「どうやら呪いの類ではないようだな」
リンネ姫が安堵の息を漏らした。
「凄いな。それで呪いかどうかわかるのか」
「私は聖属性を使うからの。呪いは闇属性であり聖属性と対となる属性だから私の魔法で探知できるのだ」
「あらあら~これは大変ですね~」
その時、上空から声が聞こえた。
見上げるとそこには箒に跨ったカーリンが浮かんでいた。
「カーリンさん?」
「先生!?」
俺とリンネ姫の声はほぼ同時だった。
「お主、先生のことを知っておるのか?」
「そっちこそ、なんでカーリンさんのことを?」
「当然じゃ、このお方は私にとって恩師じゃぞ」
俺の問いにリンネ姫が胸を張って答えた。
マジかよ。
凄い力を持った魔女だとは思っていたけどまさかリンネ姫の先生をしていたとは。
「知っていたか?」
「いや、姫様はたまに長期間ゴルドを離れる時があったらその際に師事していたのだろうな」
アマーリアも知らなかったらしい。
「あらあら、リンネさんお久しぶりですね~お元気にしてましたか?」
ふわりと舞い降りたカーリンがリンネ姫に挨拶をした。
「先生もお変わりないようで。ご連絡をいただいてからいつかお伺いしようと思っていたのですが、なかなか時間が取れずに申し訳ありません」
リンネ姫が恭しくカーリンにお辞儀をした。
本当に師として尊敬していることが態度からわかる。
「本当に凄い人だったんだな」
「当たり前だ!先生は本来なら国家魔導士として王城に迎え入れるべき存在なのだぞ!先生の教えがなければ今の私などないと言っていいくらいだ」
魔具を自分で作れるレベルの魔導士であるリンネ姫が師と仰ぐなんて本当に凄い魔女だったのか。
「それでカーリンさんは何故ここに?」
「村の人から連絡があって様子を見にきたんですよ~」
カーリンはそう言って黒い土に近づき、無造作に掴み上げた。
「…これは…!」
そして驚きの声を上げる。
「な、なんですか?」
「アスファルトですね~」
「は?アスファルト?」
予想外の答えに思わず呆気にとられてしまった。
「はい、どうやら土中のアスファルトが土砂崩れで露出しただみたいです」
俺も手に取ってみた。
(天然アスファルト、成分はアスファルテンとマルテン。融点は五十度)
なるほど、確かにアスファルトだ。
「アスファルトか、何度か見たことはあるがここまで多量にあるのは初めて見るな」
リンネ姫が感心したように呟いた。
アスファルトのことを知っているのか。
「当然だ。ベルトラン帝国では昔から接着剤代わりに使っておるしな。魔法薬の原料に使うこともあるぞ。まさか我が国から出てくるとは思わなんだがな」
「じゃあこれも売れるかな」
「うーむ、それは難しいかもしれんな。フィルド王国でのアスファルトの需要はそこまで多くないしアスファルトを産出するベルトラン帝国が買ってくれるわけもないしの」
「…そうか、上手くは行かないもんだな……って、いい方法があるぞ!」
俺の頭に一つのアイディアが閃いた。
「なんじゃ、また何か思いついたのか?」
「ああ、これはちょうどトロブに必要なものだったんだ!」
◆
「まさかこれで道を敷くとは、大したものだな」
リンネ姫が感心したように嘆息した。
「俺が行った地球ではあらゆる道がアスファルトで舗装されてたんだ。トロブの道は未舗装で水たまりだらけだったから丁度良かったって訳さ」
説明しながら俺はアスファルトを操作して加熱させ、砂や砂利と混ぜ合わせて道路に敷いていった。
「アスファルトは五十度くらいに加熱すると柔らかくなるから砂利と混ぜ合わせて敷けばいずれ冷えて固まるんだ。火属性の魔法が使えれば俺じゃなくてもできるよ」
「これは凄い!これなら雨の日でも泥で汚れずに済むぞ!」
「私の家の前にも敷いてほしいわ!」
「こんな道路、他の場所じゃお目に掛かれないぞ!」
「流石はテツヤ様だ!嵐の後の復旧だけじゃなく道路まで整備してくださるなんて!」
「テツヤ様が領主になってくれて本当に良かった!」
町のみんなも初めて見るアスファルト道路に驚きの声をあげている。
いや、流石にそこまで褒められると流石に照れ臭いぞ。
「しかしこれは本当に大したものですね」
カーリンも感心している。
「いろんな国に行きましたけどアスファルトを道路にしているのを見たのは初めてです。ベルトラン王国でも見ませんでしたよ」
「うむ、アスファルトにこのような利用方法があったとはな。これで国中の道路を敷設すれば暮らしが一変するぞ。これは国家事業にする価値があるだろうな。早速父上に進言せねばなるまい」
そ、そこまでなのか?
「当たり前だ。道路事業は国家にとって常に最優先事項よ。道路が国の趨勢を決めると言ってもよいくらいなのだぞ」
リンネの言葉に俺は少し背筋が寒くなった。
俺はひょっとしてとんでもないことをしてしまったのではないだろうか。
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