49 / 298
動乱
49.戦い終わって
しおりを挟む
「「テツヤ!」」
俺を呼ぶ声が聞こえる。
目を開くと目の前にアマーリアとソラノがいた。
気が付くと俺は床に倒れ込んでいた。
ランメルスを倒した後で魔力を使い果たして気絶していたみたいだ。
「テツヤ!無事なのか!?」
ソラノが心配そうに聞いてきた。
何故か二人とも鎧を脱いでシャツのボタンを大きく開けている。
「あ、ああ、悪い、なんか力が抜けたみたいだ」
「全く、無茶をして」
アマーリアが呆れたように言いながら俺を担ぎ上げた。
「決着は……付いたのだな」
床に転がる物言わぬランメルスを見てソラノが呟いた。
「ああ、もう終わったよ」
「そうか……こちらも王立騎士隊と合流して既に掃討戦を開始しているところだ。おそらく今日中にあらかた片が付くだろうな」
「助かったよ。王様を無事に逃がしてくれたんだな」
「礼を言うのはこちらだ。テツヤがいなければ今頃どうなっていたか」
ソラノがアマーリアの反対側で俺に肩を貸しながら言ってきた。
「ところで二人はなんでそんな恰好を?」
二人の大きくはだけた胸元を見たいという欲求に抗いながらなんてことないという風を装いつつ聞いてみる。
「こ、これは……」
ソラノが顔を紅くしながら反対側の腕で胸元を隠した。
「テツヤが気絶したからさっきみたいに私たちの力を分けようとしてたんだよ」
アマーリアが答えた。
「そ、そういえばそんなこともあったっけ。あ、ありがとな」
地下牢から二人を助け出した後に意識を回復した時のことを思い出すと顔が赤くなってくる。
激しい戦いをしたせいなのかもう何日も前のようだ。
「い、言っておくがあれは人命救助であってそれ以外でもそれ以下でもないからな!」
ソラノが顔を真っ赤にしながら釈明してきた。
「あ、あれは人工呼吸だ!断じてキスなのではないからな!」
え、そんなことまでしてたの?
全く覚えてないんだが、それはそれで凄く惜しい気がするぞ。
「ふむ、言われてみればあの時テツヤは気を失っていたし、キスにカウントするわけにはいかないか。テツヤ、ちょっとこっちを向いてくれ」
アマーリアの言葉に何の気なしに振り返ると口が柔らかいものに塞がれた。
俺の口を塞いでいたのはアマーリアの唇だった。
唇を割るようにアマーリアの舌が口の中に侵入してくる。
「ア、アマーリア様、な、何をっ!??」
ソラノが仰天しているがアマーリアはそのまま唇を重ね続けてきた。
俺はというと何が起こったのか全く頭で理解できないまま気付けばアマーリアを抱き寄せて無心にその唇を貪っていた。
「これが私のファーストキスだ。テツヤ、よく覚えておいておくれよ」
たっぷり十秒は経ってからようやく唇と唇が離れ、頬を朱に染めながらアマーリアが微笑んだ。
「な、な、な……」
砂浜に打ち上げられた魚みたいにソラノが口をパクパクさせている。
「いや、ソラノの言う通り確かに片方が意識のない時にキスをしたところでそれはキスとは呼べないと思ってな。だから改めてしたまでだよ」
「そ、そういうことではなくて!キ、キスというのはお互いの合意があってこそ……」
「テツヤは私とキスをするのは嫌だったか?」
アマーリアが上目遣いに聞いてきた。
いや、アマーリアにそんな目で聞かれたら否定できる訳ないじゃないですか。
「い、いや、俺は……別に…」
「ならば良いということだな!ほら、次はソラノの番だぞ」
アマーリアがそう言って俺の顎を掴み、ソラノの方へ向けた。
え?そういうものなの?
「ソラノが言うにはあれはキスではないということだからな。改めてしておいた方が良いだろう?」
「だ、だから!キスとはそういうものではないんです!」
ソラノが絶叫した。
顔が熾した炭みたいに真っ赤になっている。
「ん?テツヤとキスをするのは嫌なのか?」
「そ、それは……」
「ならば良いではないか。それとも恥ずかしいのか?好いた相手とキスをすることなど別に恥ずかしいことではないだろう。もう一度私が手本を見せてやろうか?」
そう言うなりアマーリアが俺の顎を捻って自分の方へ向けた。
どうでもいいがさっきから頭をあっちこっちに捻られて脳震盪を起こしそうだ。
「だ、駄目えっ!」
ソラノが叫んで俺の頭を抱え、唇を重ねてきた。
ガキン、と歯と歯がぶつかり合う。
ソラノの熱い吐息を口の中に感じる。
頭がくらくらしてきた。
ソラノは真っ赤になって固く目を閉じている。
俺はゆっくりと、それでもしっかりとソラノを抱き寄せた。
ソラノの体から力が抜けていく。
どの位時間がたっただろうか、俺たちが唇を離した時にはソラノの目は潤み、目じりに涙が滲んでいた。
「あの…これは……」
「う、うるさい!聞くな!わ、私にもよくわからないんだ!」
泣きそうな声でソラノがそう叫ぶ。
「しょ、衝動だ!な、なんかお前とキスしたくなったんだ!それだけだ!言っておくが私だってこれが初めてなんだからな!」
顔を背けているが耳まで真っ赤になっている。
俺は改めてソラノに肩を預けた。
柔らかな髪からほんのりとソラノの香りがする。
「そう思ってくれるだけで嬉しいよ」
「……う、うるさい」
小声でソラノが呟く。
「さて、一段落したことだし上に戻るとするか」
晴れやかな顔でアマーリアが言った。
俺を呼ぶ声が聞こえる。
目を開くと目の前にアマーリアとソラノがいた。
気が付くと俺は床に倒れ込んでいた。
ランメルスを倒した後で魔力を使い果たして気絶していたみたいだ。
「テツヤ!無事なのか!?」
ソラノが心配そうに聞いてきた。
何故か二人とも鎧を脱いでシャツのボタンを大きく開けている。
「あ、ああ、悪い、なんか力が抜けたみたいだ」
「全く、無茶をして」
アマーリアが呆れたように言いながら俺を担ぎ上げた。
「決着は……付いたのだな」
床に転がる物言わぬランメルスを見てソラノが呟いた。
「ああ、もう終わったよ」
「そうか……こちらも王立騎士隊と合流して既に掃討戦を開始しているところだ。おそらく今日中にあらかた片が付くだろうな」
「助かったよ。王様を無事に逃がしてくれたんだな」
「礼を言うのはこちらだ。テツヤがいなければ今頃どうなっていたか」
ソラノがアマーリアの反対側で俺に肩を貸しながら言ってきた。
「ところで二人はなんでそんな恰好を?」
二人の大きくはだけた胸元を見たいという欲求に抗いながらなんてことないという風を装いつつ聞いてみる。
「こ、これは……」
ソラノが顔を紅くしながら反対側の腕で胸元を隠した。
「テツヤが気絶したからさっきみたいに私たちの力を分けようとしてたんだよ」
アマーリアが答えた。
「そ、そういえばそんなこともあったっけ。あ、ありがとな」
地下牢から二人を助け出した後に意識を回復した時のことを思い出すと顔が赤くなってくる。
激しい戦いをしたせいなのかもう何日も前のようだ。
「い、言っておくがあれは人命救助であってそれ以外でもそれ以下でもないからな!」
ソラノが顔を真っ赤にしながら釈明してきた。
「あ、あれは人工呼吸だ!断じてキスなのではないからな!」
え、そんなことまでしてたの?
全く覚えてないんだが、それはそれで凄く惜しい気がするぞ。
「ふむ、言われてみればあの時テツヤは気を失っていたし、キスにカウントするわけにはいかないか。テツヤ、ちょっとこっちを向いてくれ」
アマーリアの言葉に何の気なしに振り返ると口が柔らかいものに塞がれた。
俺の口を塞いでいたのはアマーリアの唇だった。
唇を割るようにアマーリアの舌が口の中に侵入してくる。
「ア、アマーリア様、な、何をっ!??」
ソラノが仰天しているがアマーリアはそのまま唇を重ね続けてきた。
俺はというと何が起こったのか全く頭で理解できないまま気付けばアマーリアを抱き寄せて無心にその唇を貪っていた。
「これが私のファーストキスだ。テツヤ、よく覚えておいておくれよ」
たっぷり十秒は経ってからようやく唇と唇が離れ、頬を朱に染めながらアマーリアが微笑んだ。
「な、な、な……」
砂浜に打ち上げられた魚みたいにソラノが口をパクパクさせている。
「いや、ソラノの言う通り確かに片方が意識のない時にキスをしたところでそれはキスとは呼べないと思ってな。だから改めてしたまでだよ」
「そ、そういうことではなくて!キ、キスというのはお互いの合意があってこそ……」
「テツヤは私とキスをするのは嫌だったか?」
アマーリアが上目遣いに聞いてきた。
いや、アマーリアにそんな目で聞かれたら否定できる訳ないじゃないですか。
「い、いや、俺は……別に…」
「ならば良いということだな!ほら、次はソラノの番だぞ」
アマーリアがそう言って俺の顎を掴み、ソラノの方へ向けた。
え?そういうものなの?
「ソラノが言うにはあれはキスではないということだからな。改めてしておいた方が良いだろう?」
「だ、だから!キスとはそういうものではないんです!」
ソラノが絶叫した。
顔が熾した炭みたいに真っ赤になっている。
「ん?テツヤとキスをするのは嫌なのか?」
「そ、それは……」
「ならば良いではないか。それとも恥ずかしいのか?好いた相手とキスをすることなど別に恥ずかしいことではないだろう。もう一度私が手本を見せてやろうか?」
そう言うなりアマーリアが俺の顎を捻って自分の方へ向けた。
どうでもいいがさっきから頭をあっちこっちに捻られて脳震盪を起こしそうだ。
「だ、駄目えっ!」
ソラノが叫んで俺の頭を抱え、唇を重ねてきた。
ガキン、と歯と歯がぶつかり合う。
ソラノの熱い吐息を口の中に感じる。
頭がくらくらしてきた。
ソラノは真っ赤になって固く目を閉じている。
俺はゆっくりと、それでもしっかりとソラノを抱き寄せた。
ソラノの体から力が抜けていく。
どの位時間がたっただろうか、俺たちが唇を離した時にはソラノの目は潤み、目じりに涙が滲んでいた。
「あの…これは……」
「う、うるさい!聞くな!わ、私にもよくわからないんだ!」
泣きそうな声でソラノがそう叫ぶ。
「しょ、衝動だ!な、なんかお前とキスしたくなったんだ!それだけだ!言っておくが私だってこれが初めてなんだからな!」
顔を背けているが耳まで真っ赤になっている。
俺は改めてソラノに肩を預けた。
柔らかな髪からほんのりとソラノの香りがする。
「そう思ってくれるだけで嬉しいよ」
「……う、うるさい」
小声でソラノが呟く。
「さて、一段落したことだし上に戻るとするか」
晴れやかな顔でアマーリアが言った。
53
あなたにおすすめの小説
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる